第8話 ランクアップ
「ゆりあさーん、依頼達成しましたよ〜」
ゆりあさんとは最近担当してもらっている受付嬢の名前だ。
そこに並んでるだけなのだが。
「おい、あいつ誰だよ」
「おめー知らねえのか、最近草刈りばっかりしてるFランだよ」
「なんだよそれ、たかがFランで出しゃばりやがって、気にくわねぇな」
「これは、お灸をすえてやらないといけんなぁ。げへへ」
「やりすぎるなよ〜ガイル」
「分かった分かった任せとけって。」
なんやらきな臭くなってきたが勘違いであって欲しいなぁ。
「おいガキ、ちょっとつらかせや」
はぁ、折角るんるんで来たというのに、どこの時代にもこう言う輩はいるらしい。
反抗してもいい事がないので、しおらしくしておく。
「すいません、依頼報告だけしたてすぐ行きます。」
「あぁ、Dランク冒険者のガイル様に口答えしてんじゃねぇよ」
とその時風が吹いて、ガイルがふらついた。
もちろん風魔法だが、知らないふりをする。
「大丈夫ですか?」
肩に手をかけ笑顔で圧をかける。
いちいちこんなやつに構ってもいられないからな。
ふう、やっと受付に着いた。
「ローグさん今回たまたま風が吹いて良かったですが、いろんな冒険者の方がいるので気をつけてくださいね。」
「ええ、ほんと風に助けられましたよ。ラッキーでした。
そうおす、これで私もランクアップですね」
「ええ!もちろんです。ローグさん、ランクアップおめでとうございます。」
ドヤ顔でポーズまで決めてくれた。
「Eランクになったので。受けられる幅も広がりますよ。
早速北の森の奥にあるエリアの実の採取依頼とかどうですか?エリアの実って美味しいんですよね〜」
自分のことのように喜んでくれるのは嬉しい。
ゆりあさんのためにも、エリアの実をしばらく取りに行くのもいいなぁ。
なんせ、ゆりあさんって可愛いんだよ。
ゆりあさんの笑顔が見れるなら、、にまにま。
大人の色気溢れる女性である。黒髪で真っ黒い目、サラッと長い髪は後ろで束ねられ、シルバーバンスクリップで無造作に留め、あぁ眼福。
私は大人の色気でイチコロであった、
こんな綺麗なお姉さんに使われるなら本望。
妄想を膨らませながらギルドを後にしたのだった。
「なんだこのガキ」
ガイルは愕然としていた。肩に手をかけられた時の圧は、高ランクの魔物を前にした時のようなプレッシャーがあった。あいつには手を出さないほうがい、と直感が伝えてくる。
「風魔法をあんな繊細に使いこなすとは、、、」
「ってか冒険者ばっかのところで魔法使ってバレないと思っている辺り、まだガキだろ」
「でもゆりあさんは気づいてなかったみたいだぞ」
「なら小僧の思惑通りじゃねぇか、ガイル完敗だな。ふふふ。」
「ガキの名前知ってるやつおらんのか?」
「知らねえよ、Fランクのガキなんか。」
「さっき風魔法が本物ならこれから名前を聞くこともあるだろう。」
「そうだな、これからが楽しみだぜ」
そして、ギルドはまたいつもの喧騒を取り戻していった。
ガイルだけは、1人少年ローグのことが頭を離れなかった。