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第6話 side 執事@受付嬢

 side 執事


 門衛に呼ばれて行くと、まだ子どもの冒険者がそこにいた。


 聞く話によると1人らしい。こんな子どもに何ができるのか、と思うがギルドから派遣されてきた以上案内する。


 説明するだけならそれほど時間がかかるわけでもないから。

 

 途中お嬢様が庭でお茶をされていたので会釈をする。しると後ろの少年も頭を下げている。


 多少は礼儀を知っているらしい。よく見るといい服を着ている。どこかの貴族の坊ちゃんかもしれないな。仕事さえしてくれたらなんでもいいのだが。


 貴族の坊ちゃんなら魔法で焼き払ってくれるかもしれない。少し期待しつつもあまりの広さに途中で諦めるだろうな、とため息を吐く。


 冒険者ギルドから派遣されてきたのはこれで7回目だからだ。誰もが伸びに伸びきった草とあまりの広さに始める前にキャンセルしていったのだ。


 簡単に説明して去ろうとすると、なんと細かい条件を聞いてくる。意外とマメだなと思う。


 元冒険者の俺はそんなことはしなかったし、全部パーティーメンバーに任せていたからだ。

 執事として雇われたが、旦那様のは護衛第一にして、執事の仕事はできる範囲ででいいと聞いている。冒険者の案内や説明ぐらいはするが。


 元冒険者としていうと、この広さはDランク6名で3日ぐらいの仕事量だと指定している。


 もし1人でしようと思ったらCランクかBランクは必要だろう。こんな坊主にできるはずがないのだ。


 せいぜい冒険者の厳しさを学ぶといい。









 なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!

 声にならない声が口から出てくる。


「あ、、あ、、あ、、」


 言葉にしようとしても空いた口が塞がらない。


 夕方坊主の様子を見にくると全ての草刈りが終わっているではないか。


 それも地面はきれいに整地されており、なぜか壁までできている。

 確かにものすごく優秀なら1人でできなくはないが、それはあくまで草刈りの話だ。そこから地面を整備して壁を作るとなるとそれこそ1日ずつかかるだろう。


 この坊主、いや少年は何者なんだ。


 知らないだけでもしかしたらAかSランク冒険者なのだろうか。

 しかし、元Aランク冒険者としてそこそこ活動していたのだ。こんな凄い奴がいたら必ず知っていただろう。


 「すいません、勝手なことをして、すぐ壁を壊しますね。」


ただただ呆然と壁を見つめていた俺を見て、まずいと思ったのだろう。違うのだが。。


 なので、そのまま置いておくように伝える。追加で報酬を求められるかと思ったがそんなこともなく、サインをするとさっさと帰っていった。


 少年の後ろ姿が見えなくなると、全身から汗が噴き出していることに気がついた。


 あの少年、何かがやばい。

 何がやばいのかは分からないが。






side 受付嬢


 昼過ぎに冒険者登録をしに、まだまだ大人になれていない、綺麗な少年がやってきた。


 兄は登録後すぐに帰り、少年だけが残った。


 少年はそばらく掲示板を見ていたので私の興味もなくなり自分の仕事に戻った。


 しばらくして依頼書を持って来た。見ると貴族の家の草刈りだ。よくある依頼なので、すぐに受領証を渡す。

 よく聞くと風魔法も使えるようだし。


 「あれって前Dランクのパーティーがキャンセルしたから、ランク指定しようって言ってたやつじゃないの?」


 「そんなー私受理しちゃったよ、どうしよう」


 「もしキャンセルして来ても、受理自体なかったことにすればいいんじゃない?

 ランク分けできてなかったこちらの落ち度でもあるんだし。」


 「そうよね、なんか悪いことしちゃったなぁ」


 


夕方、少年が帰ってきた。服装は綺麗なままなのでキャンセルしたのだろう。


 キャンセルの用意をしながら一応質問する。


 「おかえりなさい。初依頼いかがでしたか」


 「無事終了しましたよ。こちら受領書です。確認お願いします。」


 「そうですよね、大変でしたね。でも落ち込まなくてもだいじょ…

  へ?今なんと? 無事終了??」


 頭がついていかない。Dランクのパーティーでもできなかったのだ。いくら風魔法が使えても新人には難易度が高いはず。


 だから落ち込んでいても励ましてあげられるようにと考えていたのに、この少年いきなりとんでもないことをしでかした。


「うぎゃぁぁぁぁ」

 柄にもなく叫んでしまい、めちゃめちゃ注目される。


「んん、なんでもありません。

 では、これで依頼達成ですね。こちら、報酬の100万トロンでございます。」


 「ありがとうございました。」


 少年はさっと立ち去るが、1人放心してしまった。


 この時受付嬢は、「この少年、只者ではないと」確信したのであった。


「すいません」


 つぎの冒険者に声をかけられ、日常の業務戻る。

 しかし、ずっと少年のことが頭からはなれなかった。

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