折り紙館の夜
折り紙館警備員の朝は早い。日の出の一時間前には起きて展示室に降り、照明をつけずに部屋を一回りする。
人の気配を感じた猿がわさわさと動き出そうとしていたので、静かにおし、と声をかけて落ち着かせた。丁寧に折り重ねられた樹上の鳥たちは、昨日とは違う場所に止まっている。
先週、納品されたばかりの体長二十cmほどの番の狼と目が合った。
この道四十年、みずから折ることはできないが、作品たちの信頼は厚い。
満月の夜、遠吠えを聞いて飛び起きた。展示室に駆け込むと動物たちは慌ててそれぞれの持ち場へと戻る。
十倍以上の大きさを得た狼は再び咆哮を上げると、連れ立ち展示室の窓をすり抜け、静かな山へと駆け去っていった。
第6回 毎月300字小説企画、お題は「折る」でした。