表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

インスタントフィクション 風が吹く

作者: 宇山一博

 哀愁を漂わせているのは、スナックのママの夕凪だ。秘蔵していた二十年物だというウィスキーを空を見遣ってはグラスを回し、氷をカランコロンと鳴らしている。夕凪がこんなにも落ち込む事は珍しい。客商売という事もあり、いつも朗らかに徹している。しかし、今日に限っては少し違っていた。常連客が詐欺の容疑がかけられたからだ。

 他の客は終電を機に帰り、今は男と夕凪の二人きりで居る。

「今日は私の話を聞いてちょうだい」

 夕凪はウィスキーを注いでくれた。男は氷を回し、ウィスキーと馴染ませる。

 それから、夕凪は馴れ初めを語り始めた。店主と客、女と男。どこにでも落ちてるような話。そんな事を夕凪は楽しそうに話した。

「ここは日常の辛いことを忘れられる、騙してくれるお店。みんなの特別な居場所なの」

 そう言った彼女の目は少し潤んでいた。

 お代を置いて席を立つ。

「またいらっしゃい」

 外へ出ると風が吹き、男が進む方角へと導いてくれた。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ