私の想いは……
❖ ❖ ❖ ❖
次の日、私は周に無断で朝早く一人登校した。
朝鏡を見たらちょっと目の周りが凄い気がする……こんな顔して周に会えない、と咄嗟に家を飛び出してしまった。歩きながら周に「ちょっと同好会の報告書を書くから先に行くね」とメッセージを送る。
すると、すぐに電話がかかってきた。
《箏羽、それって放課後でも――》
「放課後はちょっと早く帰りたいから朝してしまおうと思って」
周の言葉を遮るように言い訳をしてしまう。
《……何かあったのか?》
しばしの沈黙の後、周がそう尋ねた。
「ううん、大丈夫」
私はできる限り明るく返事をする。「それじゃあ、また学校で」と云うと足早に電話を切ってしまった。
学校は朝練をしている生徒以外はまだ登校していない。
私はカバンを持ったまま、同好会の部室へ直行した。一応記録を書いて提出をすることで、同好会は存続しこの部屋を割り当てられている。週末のキャンプの報告書を書くことで「逃げ」に走ろうと部室の部屋の扉を開けた。
部屋には大翔がいた。
「うぃーす、早いじゃん箏羽」
笑顔で声を掛けてくれた大翔が、私を見て動きを止めた。
「どうした? ……如月とケンカでもしたのか?」
やっぱり私の顔……凄い感じなのかなぁ。自分自身がちょっと心配になる。
「やっぱ凄い? 昨日さぁーめっちゃ『泣ける映画』観てさぁ、号泣しちゃった」
出来る限りの笑顔で、そう答える。
大翔は何も言わず私の傍に歩み寄り、私の前まで来るとフワァと優しく抱きしめた。余りに優しいハグにびっくりしちゃって……そんなつもりじゃないのに涙が溢れ落ちる。
私はそのまま感情に任せて泣いていた。
「今まで通りオレと一緒でいいじゃん。バカやって……笑って……オレはお前を泣かせない」
泣いている私を抱きしめてくれていた大翔が優しく囁く。
そして顔を上げた私を見つめる。
そのまま大翔は私にキスをした。
私は思考が停止していた。
周の解放を考えて、私は大翔に抱きしめられた時に「ズルい女」になろうと思った。
それが……
キスした瞬間、どう考えていいのか分らなくなった。
そしてその後に私の脳裏には周の姿があった。
周が好き。