知らなかった一面
心配しながら私自身は準備はできているので、大翔にメッセージを送る。「今回のキャンプに周も参加するって」と打った。
直ぐに返事が返ってくる。「まじ? 如月に愛されてんなぁw」というメッセージを見て赤くなる。「そんなんじゃないない!」と咄嗟に送ったが……ちょっと嬉しかった。
(これが付き合うって感じなのかな)
と思いながら、いつもと違う楽しみが湧いてきた。でも直ぐにその嬉しさはかき消される。
「これは『瞞し』に過ぎない」と心が告げている。辛い自分が居る。
その時携帯の着信音で、我に返った。大翔から着信である。
「おい、如月ってどうやって行くんだよ?」
第一声、大翔の質問はご尤もであった。
「そうだよね……私たちいつも原付で行くの知ってるはずなのにねぇ」
私も不思議をぶつける。
「とりあえず聞いてからまた連絡するよ」
「えっ、あ! ちょっと!」
何か言いかけていた大翔との通話を切ってしまった。私も周のことで焦っていたのかな? その時ちょうど玄関のドアが開いた。
「箏羽、行くぞー」
周が呼んでいる。
「あの……周、キャンプってギアないと……ギアって言うのは用品のことなんだけど……その前に私たちいつも原付で行くの知ってるよね……」
「キャンプ用品? あ、それもう乗せた。早く乗れ」
「乗れ!?」
はい? 何言ってんの? 私は理解できていない。
周が私の手を引っ張り玄関の外から眼下を見下ろすように顎で促した。私はなになに? と下を覗き込む。
ピピッと音と光で下のSUV車の開錠する。
ん? と周を見ると、周は車のキーを持っていた。
「え? それなに? どーいうこと?」
確かに周は18歳になっている。自動車免許取っているの! 乗れるの!
「実は免許取ったし、たまにドライブするんだよ」
ちょっとドヤ顔な気がする……。でもキャンプ女子の私からして飛びついて喜んだ。
「ホントに! 嬉しい! やったぁーっ!」
抱き着いて、はっ! と我に返る。ドサクサ紛れに私抱き着いているし。恥ずかしくて周の顔を見ることができない……。
普段なら突いてくるところを、周は何も言わず私の頭をポンッと撫でた。
「行くぞ」
私は撫でてもらった頭を触りながら嬉しくて、ついついにやけながら、家に荷物を取りに家に入った。
「如月、マジかよ……」
大翔もびっくりして時が止まっていた。やっぱりそうだよね。私も同じだったよ、うん。
「お前もいいから乗れ」
ため息交じりに周が大翔に声を掛けた。
「いや、如月どーするんだろーなぁ、て話してたらこれだもんな。なんだよ、その登場」
ボソっと大翔が呟く。
「ホントだよねー、私たちにはクルマなんて夢だと思ってたけど――免許取れる歳になったんだよね」
私も正直な感想を述べる。
「私も免許取りに行こうかなぁ」
私は後部座席で荷物と席を半分こしながら座り、そう呟く。助手席に座っいてた大翔が後ろを振り向き「俺も行く行く!」と話に参戦してくる。
「免許取ったらどこ行こう~」
私はもう免許取れたことを想定して妄想を膨らましていた。
「そりゃあー海も山もどこでも行けるじゃん!」
大翔もノリノリである。私たちってキャンプの話題尽きないよね~と思いながら嬉しくなる。
「別に箏羽は俺が連れて行くから免許要らないじゃん」
周が話に割って入ってきた。「なに!」って顔して、大翔が周を見る。
「なんだよーそれ、オレと葉月は『キャンプ同好会』同士なんだぞ! オレもセットだろうー!」
大翔が周に「だから俺も連れて行って~」と懇願していた。「ええいっ、ウザい」と足蹴な態度で言い返す。
私はその二人のやり取りが面白くて、こんなに笑ったの久しぶりな気がするぐらい笑っていた。