俺たちの今、そして先へ(終)
それから程無くして、朝霧が保健室へ入って来た。
この無神経さに腹が立つ。
俺はこいつが箏羽にしたことを忘れてはいない。できれば一発殴りたい心境だったのをぐっと抑えていた。
「箏羽大丈夫か?」
俺のことはガン無視で、箏羽の傍に立つ。
「見ての通り元気ですから」
代わりに俺が返事をしてやった。もう箏羽に遠慮する必要はない。
俺は自分の気持ちに正直になれる権利を有したのだ。
朝霧は一瞬俺たちを見ながら無言だった。
しかし、開口一番「今週もキャンプな、二人で」と笑顔で箏羽に提案してる。
俺は本気でこいつに殺意が湧いた。
咄嗟に箏羽を抱き寄せる。
「箏羽は俺のだ」
と念押ししてやった。真っ赤になっている箏羽は本当に可愛い。
可愛いを通り越して俺の癒し以上だと思っている。
「別にいいじゃん~同好会なんだしー」
朝霧はベーっと舌を出し言葉に追い打ちをかける。
俺のイライラは頂点に達していた。
こいつ絶対許さん!
「お前の脳はサル以下のようだな」
俺は満面の笑みで朝霧に対して返答する。「どうやら言葉では分からないようだな」という言葉も付け加え説明したつもりだった。
クスクスクスッ……。
箏羽が笑っていた。
それを見て朝霧は嬉しそうに笑っている。
二人が笑っているのを見ながら、俺は余裕がない自分に気づき苦笑してしまった。
今までのポーカーフェイスの俺のイメージが崩れてしまっている。
それほど俺はこの結末が嬉しかったんだと思っていた。
やれやれ、という顔をしながら「キャンプは俺同伴」と付け加えるのを忘れなかった。絶対朝霧の良いようにはしない。
朝霧からの挑戦状に対して、俺は宣戦布告をしたのである。
箏羽は……笑っていた。
それは嬉しそうな、明るい笑顔だった。
その後のことは……また機会があれば、俺から報告するとしよう。
「箏羽、行くぞー」
箏羽が嬉しそうに駆け寄ってくる。
今日も箏羽の笑顔が見れて……こうして一緒に居られることが何より俺は嬉しかった。
【了】




