同好会の部室にて
昼休みに入り、俺は廊下を歩きながら朝霧のことを考えていた。
確かにキャンプの時から言動が明確になっていたのは、俺自身も実感している。
今までどうしたかったのかわからない。何を望んでいたのかもわからない。
しかし、状況に甘んじていたのは朝霧の失態であり、俺には関係ない。
今頃になって朝霧が箏羽に何かしたのか……。
俺はすべてを確かめるべく、昼休みに入り、キャンプ同好会の扉を開けた。
そこには朝霧が報告書を作成していた。
チラッと俺を見るが、何も言葉を発しない。
俺は部屋の中に入り扉を閉めると、その扉にもたれかかり腕組みをした。
「お前が知っていることすべて話せ」
別に仲良しこよしな関係でもない。俺は苛ついていたのもあって口調はきつかった。
普段は、ポーカーフェイスを自負している。しかし、今は流石に余裕がなかった。
「珍しいな、そんな如月見んの」
パソコンを打つ手が止まる。朝霧はかけていた眼鏡をはずした。
こいつ目が悪かったという印象はない。その前に今必要な情報に「朝霧の眼鏡」は関係ない。
「あ、今お前『こいつ眼鏡似合わなねー』とか否定しただろう」
とクスッと笑う朝霧にムッとしてしまう。
「これブルーライトカットだよ」
俺は何も聞いていないのに一人で説明を始める。
「パソコンのライトなんかしんどいんだよねー、これだけは外せないんだよ。もう歳かも」
その一人でしゃべり続けている朝霧に対して、俺はかなり違和感を感じていた。
「何を隠しているんだ」
俺は再度朝霧に質問する。
「オレ今朝箏羽にキスしたら……振られただけだよ」
気が付くと俺は朝霧を殴っていた。
殴って……抵抗しない朝霧を睨みつける。
「お前が出てこなければ……オレたちはこのままずっとバカやりながら『一番近い人間』だったんだよ」
声を殺すかのように力を込めて朝霧は呟く。
「なんでお前が急に出てきやがった! 今まで何もない関係だったじゃないか! なんで今更箏羽の心を焚きつけたんだよ」
そう叫ぶと、朝霧は俺の掴んでいた襟元の腕を振り払った。




