真実を
「ごめん……」
俺は箏羽に真実を告げる事を決意した。
よくよく考えると、箏羽は俺のこと好きって言ってくれた。
いつからなんだろうか……それは「俺が助けたから」とか、「いろいろと恩がある」とか、そこからの感情ではないのだろうか。
俺はその「好き」と言ってくれたた箏羽の想いに応えているのであろうか。
俺は最初から間違っていたのだ。
後悔してももう遅い。今度こそ本当に箏羽を失ってしまう。
嫌だ! 俺は箏羽を抱きしめる腕に自然と思いを込めた。
箏羽……ごめんな。今までありがとう……。
「あの時は『何もなかった』んだ。箏羽は綺麗なままだ……」
俺は気持ちをできるだけ落ち着かせる。
これは俺が招いた結末……。夢のような箏羽との生活も全て消える瞬間。
「俺は咄嗟に『チャンス』だと思ってしまった。箏羽を掴むことができるこの機会を逃したくなかった。だから『嘘』をついた」
せめて……最後に俺の心を……箏羽へ。
「俺も昔から好きだったんだ。箏羽――お前のことが好きだ」
抱きしめていた箏羽の重みを一挙に受ける。
「箏羽!?」
俺は倒れ込む箏羽を慌てて支え抱き上げた。
箏羽は俺の腕の中、意識を失っていた。
俺は再度箏羽を抱きしめる。ここまでしてしまった自分に対する罰は受ける。
もう箏羽は何も考えないで、笑って過ごして欲しい。
俺は箏羽を抱きかかえたまま、静かに廊下を歩き出した。
その日の記憶は自分には無かった。
箏羽が心配だったが、保健室へ運ぶと、保健室には養護教諭が出勤していた。
「どうしたの!?」
抱きかかえた箏羽をベッドに寝かせるよう促され、俺は静かに箏羽を寝かせた。
「体調が優れない様子だったのですが……」
俺は言葉を濁す。
言えなかった、事の次第を。
たぶん箏羽はショック過ぎたんだと思う。
箏羽は意識を失うほどの衝撃だったことに……俺はどうしていいのか動揺していた。
「葉月さんは何か病気とかあったかしら」
箏羽の状態を観察しながら、養護教諭は俺に質問する。
「いえ、特に何か持病とか聞いたことないです」
確かに箏羽が何か病気を患っているとか聞いたことなかった。
「そぉ、とりあえず状態は安定しているし、少し様子を見るから……如月くんは教室戻りなさい」
俺は箏羽のことを頼むと、静かに教室を出た。




