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箏羽の違和感

 箏羽の様子が少しおかしい。


 キャンプから帰ってからだ。食事まではテンションそのままだったのは記憶している。

 食後の片づけをしようと思っていたら、箏羽の携帯が鳴った。

 どうやらあの親友という涼風美咲か……。

 俺は無言で「部屋戻っていいぞ」とジェスチャーを送った。箏羽は「ごめんね」って小さく謝ると部屋に戻ったまでは記憶している。


 俺は洗い物を済ませ、ついでに明日の弁当の用意と朝食の用意も済ませた。

 これはもう箏羽が、未来で何一つ心配しなくていい計算である。我ながら「大抵のものはなんとかなるな」と自負していた。


 俺が自分の部屋に戻る頃になっても、箏羽は部屋から出てこなかった。

(まぁ、いいか)

 程度で俺は自分の家へ戻った。


 次の日、俺はいつものように箏羽の部屋の玄関を開けた。

 咄嗟に気が付く違和感。

 あれ、箏羽の靴が無い……。俺は箏羽の部屋に向かった。

「箏羽? 起きてる?」

 ノックをするが返事が無い。いや、気配が無かった。

 嫌な予感がして、扉を荒っぽく開ける。

 箏羽の部屋はもぬけの殻だった。無意識だが瞬時に部屋の状態から情報を集める。

 制服が無い……玄関にいつも学校へ履いていく靴も無かったことから「学校へ行った」と考えた。

 しかし、本当に学校へ行ったのか!?

 俺は焦って箏羽の携帯を呼び出す。しかし電波が切られている状態で繋がらない。


 ますます分からない。昨日何があった!

 俺は軽く動揺しパニックを起こしていた。

 箏羽が部屋へ行くまでは……普段と変わらなかった。それならその後何かあったのか!?

 そう色々不安になっている時に携帯にメッセージが入る。


〝ちょっと同好会の報告書を書くから先に行くね〟それは箏羽からのメッセージだった。


「報告書……」

 俺はとりあえず頭を抱えて安堵していた。

 直ぐに俺は箏羽に電話をかける。

 2回目は電源が切れていることもなく、スムーズに繋がった。

《もしもし……》

「箏羽、それって放課後でも……」

 俺は第一声思っていたことを口にしてしまった。

《放課後はちょっと早く帰りたいから朝してしまおうと思って》

 箏羽が咄嗟に喋ったのがすぐにわかった。

 俺を遮るかのように発した箏羽の言葉に、俺は何かを感じてしまった。


 昨日部屋に帰ってから何かあったのか……?

 箏羽の無事が分かると、今度は不安になった。

「……何かあったのか?」

 俺は少し考え、箏羽に尋ねる。涼風に何か言われたのか!? と苛立ちもあったのを抑えての発言だった。

 少し間が空いたのを俺は見逃さなかった。

《ううん、大丈夫》

 箏羽の声は明るかったが……普段の箏羽と違うことは歴然である。

《それじゃあ、また学校で》

 箏羽がそう畳みかけるように話し、通話を切った。


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