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後方にて

 朝霧はこうやって箏羽その距離を縮めて、一番近いポジションに居座っているのだ。

 俺が努力を怠った結果、気づいたら自分は蚊帳の外となり、違う男が底に居座っている構図。


 本当に自分の馬鹿さ加減に嫌気が差す。


 箏羽に悟られるのは回避したい。

 俺は朝霧のノリに合わせい「ええいっ、ウザい」と言い返す。


 箏羽は本当に楽しそうに笑っていた。

 この笑顔は誰に向けているのだろう、と不安になってくる。

 俺であって欲しい……。

 俺はこの先この笑顔を守れるのだろうか。箏羽は今後もずっとこうやって「笑って」くれるのだろうか。


 今までの俺たちの関係からはあり得ない「笑顔」だったからだろうか。無性に不安が襲ってきた。

 朝霧は……楽しそうに箏羽と話をしている。時折俺の方をチラッと見ているのは知っていた。何か思いがあるのだろう。そんなことは、今に始まったことではないことぐらい、理解していた。


 今は朝霧に分がある。


 俺は少しずつでも、箏羽との溝の修復を行うしかなかった。

 箏羽のためなら……俺はどのような努力も惜しむ気はなかった。



 ❖ ❖ ❖ ❖

 キャンプ場は俺の知っている場所でもある。

 箏羽に関する情報網は完璧である。


 そしてこのキャンプ場は、何回もキャンプ仲間と利用していた。特に勝手知らない場所ではない。


 一度駐車場にクルマを停めた。

「意外にクルマだと近いんだな」

 朝霧が感心したかのように、背伸びをしながら箏羽言うと、箏羽も「ホントだね、びっくりかも」とクルマの凄さを実感しているようだった。


 いくら荷物満載と言っても、箏羽は後ろで窮屈だっだであろう。俺は体調が心配だった。

「箏羽、しんどくないか?」

 俺は箏羽と朝霧に缶ジュースを買って、手渡す。

 箏羽だけに買ったら、箏羽も気にするだろう。そんな小さなことで箏羽を煩わせたくはない。

 朝霧は最初ちょっと驚いていたが、素直に「サンキュー」と言い受け取った。


 3人でジュースを飲みながら辺りを見回す。

 穴場なのは知っていたが、もう何組かは設営していた。

 ここは、湖に併設している湖畔のキャンプ場である。

 区画を切っていないので、どこでも好きなところで設営してよいというスタイルを取っていた。


「クルマって入っても大丈夫なのかなぁ」

 箏羽がふっとそんな疑問をぶつけてきた。

「クルマ侵入可能のフリー区画だろ?」

 そう言いながら、俺は辺りを指さす。


 今設営している数組も、クルマを乗り入れて荷物を運び出している。

 俺的なおすすめスポットはあるのだが……ここは二人の行動に合わせることにした。


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