朝霧の態度には
「如月、マジかよ……」
朝霧がびっくりしている。いや、苦笑している。
俺は正直「勝った」と思っていた。いや、この勝負に負ける気はない。
大差をつけて勝ちに出る! そう意気込んでいた。
箏羽が後ろに座ることは、俺にとっては「頷けない」ことだ……ほんと朝霧は「気を遣う」ことを知らない奴だ! と思いつつ、笑顔で助手席に朝霧を座らせて、俺はクルマを発進させた。
「いや、如月どーするんだろーなぁ、て話してたらこれだもんな。なんだよ、その登場」
朝霧がボソッと呟く。やはり敵もこれは想像していなかったらしい。
俺は運転しながらほくそ笑む。
「ホントだよねー、私たちにはクルマなんて夢だと思ってたけど――免許取れる歳になったんだよね」
箏羽も感心しながら後ろの席から話しかけてきた。
箏羽は別に免許なくても、俺がいるじゃん。今度からは「二人で」キャンプへ行けばいい。と俺は思っていた。いや、そうするつもりだった。
案の定、後ろから「私も免許取りに行こうかなぁ」と箏羽が呟く。助手席に座っいてた朝霧が後ろを振り向き「俺も行く行く!」と話に割って入ってきた。
いや、お前は免許取らなくていい。
というかなんで箏羽の話に乗って、あわよくば一緒に行こう! とか思っていないか!?
俺は咄嗟に朝霧を横目で睨む。
朝霧は俺に気づいているのかいないのか……。
「免許取ったらどこ行こう~」
箏羽は嬉しそうに話している。いや、既に妄想していそうな勢いだと思った。その仕草が微笑ましい。
「そりゃあー海も山もどこでも行けるじゃん!」
朝霧が箏羽の妄想に乗りかかっている。
ヤバい!
絶対これはヤバい流れだ!
「別に箏羽は俺が連れて行くから免許要らないじゃん」
咄嗟に俺は思っていたことを口から出してしまった。でもまぁ俺と箏羽は「付き合っている」訳だし、別に朝霧に勘違いされても痛くも痒くもない。
それどころか大いに「勘違い」して諦めてもらいたい。
そこは心の叫びでも俺は出さなかった。
そこまでギラギラしていたら、箏羽にドン引かれてしまう。それだけは絶対ダメだ。
朝霧と目が合った。
その目には……焦りの色が伺える。
(やはりそうなんだろ? 朝霧)
俺は朝霧に「微笑んで」みせた。朝霧は直ぐに「いつもの」朝霧に戻る。
「なんだよーそれ、オレと葉月は『キャンプ同好会』同士なんだぞ! オレもセットだろうー」
朝霧が悔しそうに叫んでいた。
箏羽がクスクス笑っている。
「だから俺も連れて行って~」と俺に懇願してきた。
そういうことだったのか……。
俺は今までの自分に対して苦笑してしまった。




