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邪魔な搭乗者

 俺は一瞬何のことだが分らず、面食らう。

 直ぐに、それは箏羽が余りの嬉しさのために「ついつい」取ってしまった行動だということを理解した。

 ちょっと俯き赤くなっている。


 ――可愛すぎる。


 俺は直ぐにでも箏羽を抱きしめたかったが、朝の駐車場でそれをするのは、ご近所の手前もある。


 でも可愛い箏羽は俺を狂わす。


 俺は、箏羽の頭を優しく撫でる。

 オレの箏羽は本当に可愛い。


 まぁ、箏羽が嬉しそうにしているキャンプなんだから、多少の事は目を瞑って行きますか……。

 と自分を切り替えることにした。

 そして、箏羽の玄関にあったキャンプ用品の積み込みを手伝った。


 途中で朝霧を乗せないといけない。

 あいつのスペースなんて一ミリも用意したくはなかった。

 しかし、箏羽が悲しむのはもっと嫌だ。


 合流地点までは、箏羽は助手席にちょこんと座って、嬉しそうに現地に着いたら何しようとか、夕飯のキャンプ飯は何にしようとか……取り止めもなく俺に話してくれていた。

 俺は箏羽が作るものなら別に何でもよかった。


 大抵のものは俺には作れる。バリエーションもそこそこあるし、困ることは無い。

 後は箏羽の「食べたいもの」なだけである。


 箏羽は「大翔は何が食べたいんだろう」とアイツのことも入れながら悩んでいる感じだった。

 アイツは……カップラーメンでいいだろう。お湯ぐらい提供してやる。


 でもそれを口に出して言うことは、KYなことぐらい理解していた。

 ただ、嬉しそうな箏羽の構想につきあっていた。


 荷物のこともあったので、朝霧の家に寄って拾うことになった。

 朝霧の家は住宅街の一軒家で、落ち着いた佇まいであった。

 俺もコイツの家は知らなかったが、箏羽は勝手知っている感じで、朝霧を呼び出している。


 俺は不安になっていた。

 今まで箏羽に対して自由にし過ぎていたのではないのか、と。

 俺たち気が付いたら高校生だったよな……こいつらの関係に不信と疑問が渦巻く。


 俺は今まで諦めてやってこなかった、箏羽との溝の修復を怠っていたことを、今更ながら猛省した。


 箏羽……俺は何であれ、箏羽が傍にいてくれればいい。

 朝霧との過去なんて、そんなことは気にする必要はない。



 いや、俺が言えるセリフではないかも。

 やはり俺には猛省しかなかった。


 玄関から出てきた朝霧は、俺たちを見て目が点になっていた。

 やはり想定外だったのか、と俺はついついほくそ笑む。


「如月、マジかよ……」

 それが開口一番、朝霧から発せられた言葉だった。

 とりあえず、開けておいてスペースに朝霧のキャンプ用品も乗せる。


「お前もいいから乗れ」

 俺は箏羽と朝霧を仲良く座らせる気は一ミリもない。

 箏羽は気を使って後ろに乗り込んだので、俺は無言の笑みで朝霧に助手席を促した。

 箏羽と仲良くされるぐらいなら、俺の隣で監視されてろ! というのが、俺からの無言の圧力である。


 朝霧もそれを察したのか、苦笑しながら助手席に乗り込んだ。


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