キャンプからの二択
俺は一晩考えた。
結論は二択しかない。
・絶対箏羽をキャンプへ行かせない。
・オレもキャンプへ同行する。
それしかない。
その結論は次の日に持ち越された。
「やっぱり俺も行くよ」
俺は箏羽にキャンプを行くことを中止して欲しかった。
しかし、嬉しそうに朝食を食べている箏羽にそんなことは言えない……。
それて導き出された結果が、先ほどの言葉だった。
「それでも」
俺は箏羽が心配だった。
「大丈夫だよ、久しぶりにキャンプ行くだけだし。大翔も一緒だから」
箏羽の頭はキャンプのことで埋め尽くされている様子である。
これを覆すことはやはり酷だと感じた。
「インドア派の周がアウトドアなんて無謀だよ。大丈夫だって」
そう笑って告げる箏羽には、俺は「インドア派でインテリで、アウトドアとは無関係な周」と映っているのであろう。
今まで俺がしていた態度が導き出した結果であるが、我ながら苦笑してしまった。ほんと自分で自分の首をどれだけ絞めたら気が済むのやら。
もうそんな自分は打破しよう。
「やっぱり俺も行く。それに……」
俺は箏羽に微笑みながら付け加える。
「箏羽が思うようなインドア派でもないけどな」
さぁ、俺の「箏羽とアウトドアデビュー」の開始だ!
決まると夢にまで見た箏羽とのキャンプである。
嬉しくないはずがない。
俺は「何持っていこうかなぁ」と気が付いたら鼻歌交じりのテンションマックスで、自室へ戻っていた。
選択肢が決まったら、することは一つだ。
いつも箏羽たちがキャンプへ行く同行は把握している。
二人は原付スクーターの免許を取得していたので、原付スクーターに荷物満載で目的地へ向かっていた。
俺は玄関に置いていたクルマのキーを手に取ると上機嫌で下に降りる。
そこで待っていたのは、SUV車だった。
親は俺が免許を取ったということで、中古だがこれを買ってくれた。箏羽とのデートに何が良いのか一晩悩み、選んだ結果だ。
アウトドア好きの箏羽の希望を叶えられる! とコレを即決した。
それが今役に立とうとは……嬉しくて、心の中ではガッツポーズしている自分がいる。
クルマの後部シートを調節すると、荷物が置けるスペースを十分確保した。
本当は朝霧なんて乗せたくない。
俺は箏羽と二人で、デートしたかったんだ。しかし、今や朝霧は箏羽とセットのキャンプ仲間だ。それに朝霧がいるから、キャンプ場で悪い虫が付かない心配も回避されているところがある。
俺はしぶしぶ朝霧のスペースも確保することにした。
マンションの下には、各部屋用に物置が用意されている。
オレのキャンプギアはその中に収納させていた。
「たぶん、手入れしているから大丈夫だとは思うが……」
そう言いながら、必要品をクルマに積み込んでいった。




