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キャンプという障害

 とうとうこの日が来てしまった。


 箏羽が「キャンプに行く」と言い始めた。

 発端は放課後の朝霧の発言だ。

「箏羽明日キャンプ行かねー? 久しぶりに」


 最初俺は耳を疑った。

 コイツ何考えてやがる! と。俺と一緒でなんとか外へ出かけている箏羽に、そんなハードな障害物競走させるわけにはいかない。



 絶対だ!!



 俺は咄嗟に割って入り断ろうとした。

 しかし箏羽は、キャンプという単語を聞いた時、チラッとこっちを向いたんだ。

 俺にお伺いを立てている様子だった。


 箏羽……キャンプ行きたいのか?

 俺よりもキャンプを取るのか……。


 あぁぁぁぁぁぁぁっ!!

 俺って女々しい!


 自己嫌悪に陥ってしまい、「無理しないなら」と口走ってしまった。


 一瞬、朝霧の目が勝ち誇った気がした。

「ヤバい……やはりアイツはダメだ!」


 俺は必死にキャンプを諦める方法を考えていた。

 帰り際、箏羽は嬉しそうに「キャンプ何持っていこう」と俺の隣でチェックリストを頭の中で作り始めている。


 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい……


 俺の中で勝ち誇った朝霧の顔が浮かぶ。

 俺が「付き合った」宣言した頃からだ。


 朝霧の箏羽を見る目つきが変わったのは。

 それは些細なことかもしれない。

 それでもオレには十分過ぎるほどの変化であった。


 朝霧は焦っている……。


 俺はそれも想定内として処理する予定だった。だから、今回のキャンプについては、箏羽一人で行かせる予定は微塵もなかった。


「箏羽、一人じゃ心配だから俺も行くよ」

 箏羽はビックリした表情で俺を見ていた。


「周……キャンプとか大丈夫なの?」

 それは心配そうな表情も含んでいた。


 いや、俺はたぶんお前よりキャンプできる奴だ。

 朝霧なんて必要ないぐらい役には立つ!


 断言ずる!!


 俺が今までどれだけアウトドアを修行してきたと思っているんだ。アメリカ横断だってできるぞ!


 いや……言い切り過ぎた。



 それでも、箏羽と楽しくキャンプはできることは保証できる。

 しかし、箏羽は優しい笑顔で、「私一人でも大丈夫だよ。いつものように大翔も一緒だし」と俺を機にかけてくれている。

 優しい……それは「俺が邪魔なんですけど」って裏の意味じゃないよな。


 ――問題はその大翔くんですけど。


 俺の眉間に青筋が浮かんだことは直ぐに隠し……。


 箏羽はキャンプ自体については楽しみでいるようだ。

 こんなうれしそうな顔久しぶりに見た気がする。


 今までは緊張の糸が張り詰めていたというか……どこか寂しそうな辛そうな、そんな表情がよく読み取れて辛かった。


 とりあえず、笑顔でリストアップする箏羽の話を「うんうん」と頷きながら俺は聞きつつ……。


 どうやってキャンプを止めさせようかと、考えに没頭していた。


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