表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/44

変化

 箏羽は俺の元へ駆けてきた。

「周! その……こんな学校で言わなくても……」

 その真っ赤になって恥ずかしがっている顔が、とても可愛くてついつい笑ってしまう。

 その裏には朝霧に対して()()()()()という思いもあった。


 俺は箏羽の最近の状態をずっと看病していた。

 だから「元気になった」ことの方が嬉しかったのかな。

 こうやって喜怒哀楽を出してくれる。ちょっと前の箏羽にはなかった表情だった。それと同時にちょっと寂しくなる。学校やクラスメイトなどの環境って凄いんだな、と俺の至らない部分を認識する結論となった。


「それだけ元気になったのなら安心だな」

 俺は素直な感想を述べる。

 そんな箏羽を見て……嬉しくてついつい笑顔になってしまった。



 表情がコロコロと変わっていた箏羽の表情が急に暗くなる。

 俺はその変化を見逃さなかった。


「それは……周の責任じゃない」

 箏羽が辛そうにそう呟く。

 俺は時が止まるほどの衝撃だった。箏羽はそんなことを思っているのか。

 俺の方が箏羽を()()()()()()()のに、お前は……自分を責めているのか。


 俺は自分自身に嫌気が走る。

 でも、それでも箏羽のことが好きで、大切で……どうしても今の関係は壊せない「ズルい自分」を押し殺す。


「俺が決めたことだからいいんだよ」

 俺は贖罪を込めて箏羽に微笑む。


 ごめん……箏羽。

 許してくれとは言わない……ただ、傍にいる権利だけは俺に許してくれ。


「箏羽は何も気負わなくていい」

 箏羽の頭を優しく撫でる。


 箏羽……そんな顔しないで。

 箏羽……いつも笑っていてくれ。

 箏羽……俺の傍にいておくれ。


 それが俺の唯一の望みだった。

 箏羽の全てをオレが守るから……。


 小さく頷く箏羽を今すぐ抱きしめたかった。

 優しく優しく……包み込んで俺だけのものにしたかった。



 あれ?

 俺はふっと視線に気づいた。どうやら箏羽は気づいていないらしい。

 教室扉にもたれ掛かり、腕を組みながら朝霧がこっちを見ている。


 お前……()()()()()()()()()


 俺と朝霧は目が合ったが、逸らすことはしなかった。

 俺を見ていた朝霧が教室へ入る。


 お前も動くのか……


 俺は不安が拭えない。

 この関係なら大丈夫だということが、過信だと再認識する。


 俺も変わらなければ、箏羽の傍に居続けることはできないことを、その時実感した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ