学校
担任の教師はとにかく騒がしかった。
いや、担任だから心配しているのか?
まぁ俺にとってはどっちでもいいけど。
俺は担任を送り出して、箏羽の元へ戻った……あれ? 箏羽が居ない。
「箏羽?」
俺は部屋部屋を呼びながら歩き回った。
洗面所で停止している箏羽を発見。
「どうした?」
俺は箏羽に問いかける。鏡を見て時が止まっていることで咄嗟に嫌な不安に襲われた。
「私……かなりゲッソリしてる」
へ? ゲッソリ?
俺はきょとんとしてしまった。
箏羽は確かに……痩せたよ?
でも前と変わらず可愛い! 俺にとってはかけがえのない箏羽だ。
「何か先生に言われたのか?」
クッソ! あの担任、箏羽に何言いやがったんだ!
俺はイラッとしてつい舌打ちしてしまった。
「これはヤバい、食べたほうがいい……」
箏羽は真面目な顔して鏡に向かって話しかけているというか……呟いているというか。
その顔が間抜け……いやとても愛おしくてついつい顔が緩んでしまった。
「まぁ瘦せたけど、病気だったんだし、問題ないよ」
俺は箏羽がどんなだって気にならない。
こうして生きててくれて、傍に居られるだけで嬉しい。
こうやって一緒に居れる時間が愛おしい。
箏羽はちょっと不信がっていたが、俺はそんな箏羽も大好きで、ついつい笑顔になってしまった。
❖ ❖ ❖ ❖
「周……私そろそろ学校へ行く」
夕食時、箏羽がそう呟いた。
毎日の買い物などの外出も順調だし、体力も戻ってきている。
登校するには問題ないが……ないが。
「箏羽、まだ学校は……」
俺は不安を隠せないでいた。
「あまり休んでいると不自然だよ」
箏羽がほほ笑む。
俺は最初強がりだと思っていた。
でも……
最初の死んだ魚のような生気のない目から見れば、見違えるほど瞳は前を向いていた。
学校……
俺は別な心配もしていたんだ。
朝霧大翔
箏羽と同じ「キャンプ同好会」にして、箏羽と大の仲良し。一緒にほぼ毎週キャンプにも行っている。
俺はコイツが死ぬほど嫌いだ。
俺の箏羽を奪っていったやつ。
……まぁ逆恨みだとは思うが。
それでも箏羽の隣はコイツで占領されていたのだ。
俺だって箏羽のキャンプに付き合うべく、アウトドア勉強したさ!
アウトドアサークルとか仲間も作って、こっそりキャンプへも行ってたさ!
気が付いたらメンバーに「周ってキャンプの達人級じゃん」とか言われるほどに成長したさ!
でも……箏羽からキャンプの誘いはなかった。
だからついついこっちも辛辣な言葉になってしまったことも多々あった!
それは……そうですよ、俺の心が狭いからです。
他の女にならいくらだって甘い言葉を囁くことはできる。
でも箏羽には……実際に顔を前にしたら心臓止まりそうなほど動悸がして、顔が赤くなっている自分を見られたくなくて……。
――今となっては後悔だった。