『噓』
私はどうしても周にその想いを伝えたい自分に気が付いた。
周に背負わせた罪悪感とかそんなもの置いて、私は自分の心を「伝えていない」ことに気が付く。
「大翔、ごめん」
私は俯きながらそれだけ言うのがやっとだった。
大翔の腕から離れると、部室から駆け出る。
駆け出して……
気が付いたら校舎の別館で腕を掴まれて立ち止まった。
「あま……ね?」
息を切らして私の腕を掴んでいるのは、周だ。
「どうした! 箏羽、何があった!」
焦っている口調で周が私に問いかける。
「周……私、周のことが好き。ずっと前から好きなの」
私は気が付いたら自然と告白していた。
周の動きが止まっている。
その眼差しに私は目を逸らすことができなかった。
怖い……
周に拒絶されることが。
「罪悪感」からの関係を再度伝えられることが。
気が付くと周は私を強く抱きしめていた。
私は状況が把握できない。
「ごめん……」
その言葉が周から出た時、私は「終わり」を決意した。
決意して、周から離れようと力を入れた時……
周は私を放すことなく、さらに強く抱きしめる。
「あの時は『何もなかった』んだ。箏羽は綺麗なままだ……」
そう絞り出すような、小さな呟きを囁いた。
「俺は咄嗟に『チャンス』だと思ってしまった。箏羽を掴むことができるこの機会を逃したくなかった。だから『嘘』をついた」
私の思考が止まる。
何を言っているの?
コレハ、ドウイウコト?
「俺も昔から好きだったんだ。箏羽――お前のことが好きだ」
私は……無事だったの?
私は……
ワタシハ……
そこから私の記憶は無い。