六話
「食事は終わったな。ついてこい」
ミレイユの後に続いて歩いていくと薬品の匂いがする独特な部屋についた。
「患者だ。手当を頼むぞ」
「はぁ・・・。いつも言っているだろう。訓練で手当てが必要な状況にするなと」
白衣をまとった女性が文句を言うように苦言を言っている。
「私は私の役目を果たしているにすぎないさ」
「少年、怪我を見せてみろ」
友和は軍服を脱ぎ背中を見せる。
「これはまた派手にやられたな」
そういって軍医と思われる女性は消毒薬を全体に塗っていく。
「いっつ・・・」
「少年我慢だ。しっかり手当しないと後で酷い目にあうぞ」
友和は滲みるのを我慢して手当を受けていた。
「これでよし。よく我慢したな。褒めてやろう」
「子供扱いは心外です」
「私は軍医のフランだ」
「木龍友和です」
「ミレイユの奴の訓練は厳しいがお前のことを思ってのことでもある」
「あれが俺のことを思ってですか」
「機操士は戦術機を操っていればいいという考えの奴もいるが戦場では何が起こるかわからない。戦術機を失うことだって当然ある。そうなったとき頼りになるのは鍛え上げたお前の肉体だけだ」
「余計なことは言わなくていいんだ。治療が終わったなら部屋に戻れ」
「ありがとうございました」
「これが仕事だからな。少年頑張れよ」
友和は軍服を着なおし自分の部屋に向かった。
「おいおい。ルーキー。お前もこの部屋かよ」
「よろしく頼む」
「エドワルド。食堂では見逃したが新人に突っかかるのはやめろ。連帯責任でミレイユ教官の説教を受けるのはごめんだぞ」
「っち。わかったよ。お前は下の段で寝ろ」
それだけ言うとエドワルドと呼ばれた奴は二段ベッドの上に寝転がった。
「助けてくれてありがとう」
「お礼を言われるようなことじゃない。僕はズススだ」
「木龍友和だ」
「予想はしていたけど君、この国の人間じゃないよね」
「気がついたらこの国にいたんだ。召喚がどうのって言ってたけど」
「召喚の儀式か。噂には聞いたことがある。聖地があって選ばれたブラフミンのみが行える神聖な儀式だって」
「そうなのか」
「君は英雄として招かれたんだね」
「英雄とかガラじゃないけどな」
「おい。うるせぇぞ。明日も早いんだ。とっとと寝ろ」
「話はまた今度にしよう。起床時間に起きられないと罰があるから気をつけてね」
「わかった」
友和は指定されたベッドに横になるが鞭で打たれた部分が痛み中々眠りにつくことが出来なかった。
眠れない頭でこれからのことを考える。
英雄として招かれたはずが蓋をあければ体罰ありの訓練。
俺は無事に生活することが出来るのだろうか。




