三話
「私はブラフミンのアイシャと申します」
「俺は木龍友和だ」
「木龍様。どうぞこちらへ」
案内されるままに続くとここは山の中であることがわかる。
しばらく歩くと建物が見えてくる。
「ここはインドシア王国の隠れ里です」
「隠れ里・・・」
「ここには召喚の儀式を行えるブラフミンとその護衛の者達しか入ることが許されていない聖地なのです」
ゲームにしてはリアルだなと感じつつ案内された建物に入る。
「ささやかではありますが歓迎の宴を用意しております」
彼女に案内された部屋には美味しそうな料理に果物などが並んでいた。
ゲームとはいえGを体験するということで大会前は軽く食事をしただけであり空腹感に襲われていた。
俺は恐る恐る料理に手を伸ばし食べてみる。
フルダイブ技術が発達しているとはいえ料理の匂いに味が再現されており驚く。
「お口にあいましたでしょうか」
「凄く美味しい」
「それを聞けば作った料理人も喜ぶことでしょう」
俺は満腹になるまで料理を食べ続けた。
「今後のお話をしてもよろしいでしょうか」
「正直何をしたらわからなくて混乱していたところだ」
「貴方には軍の養成所に入っていただき体を鍛えながらこの世界について知っていただく予定です」
「軍の養成所か。右も左もわからないんだ。よろしく頼む」
「今日はこのままお部屋でお休みいただき、明日迎えの者がやってきますのでその者と移動していただくこととなります」
「わかった。あんたは来ないのか」
「私には大事な役目があるのでこの地から離れることが出来ないのです」
丁寧に相手をしてくれるアイシャという少女に親しみを感じはじめていたというのに残念な話である。
「わかった。何をさせられるのかはわからないが頑張ってみるよ」
「そういって頂けて安心しました。それではお部屋にご案内しますね」
アイシャに続いて部屋に移動する。
かなり大きな部屋にベッドが一つ設置されている。
「それではお休みなさいませ」
「お休み」
アイシャが去りすることもないのでベッドに横になる。
ベッドは柔らかく寝心地は悪くない。
これからどうなるかわからないがアイシャの人となりを見る限り悪いことにはならないような気がした。
「木龍様。起きてください」
「アイシャか。おはよう」
「おはようございます。朝食の用意が出来ていますよ」
「ありがとう」
昨日も訪れた部屋には軽めの食事が用意されておりそれを食べる。
「移動を考えて軽めの食事ですがご満足いただけたでしょうか」
「気を使ってくれてありがとう」
丁度食事を終えた頃、廊下からカツカツとした靴音が聞こえてきたのだった。