二話
現在の状況を説明するならクシャトリアという戦術機に囲まれているということだ。
何故囲まれているのかわからず混乱してしまう。
そこにオープン回線で通信が入る。
「我々に攻撃の意思はありません。どうか機体から降りてきてください」
機体から降りるとは何のことだかさっぱりわからない。
これはゲームなのだから機体から降りれるわけないじゃないか。
「降りるってなんだ。それにこの状況はどういったことなんだ」
「混乱しているようですね。ここは貴方のいた世界とは別世界です。我々は優秀な機操士を求めて召喚の儀式を行い貴方をこの世界に招きました」
「別世界だって。人を馬鹿にするのも大概にしろ」
俺は付き合ってられないとウィンドウを開こうとするがウィンドウが開かない。
なんだ、バグか。
今までこんなことはなかったというのに世界大会優勝の直後にこんなことに巻き込まれて気分が台無しだ。
「落ち着いてください。我々は嘘は何も言っていません」
「仮に真実だとして俺には関係ない。元の場所へ帰してくれ」
「すみませんがそれは出来ません。我々の召喚の儀式では呼び出すことは出来ても送り返すことは出来ないのです」
「一方通行なんて冗談じゃない」
「我々は今、国難に遭遇しているのです。どうか我々に力を貸してください」
ここで冷静に考える。
これは何かのイベントなのではないかと。
「具体的に俺に何をさせたいんだ」
「戦術機を操り我々の国敵と戦っていただきます」
「国敵だって。そんなの今までと変わらないじゃないか」
「では我々に協力していただけるのですね」
この時はまだゲームの中だと思い込んでいた。
バグか何かでウィンドウは開かないが新しいストーリーを楽しんでいるのだと心のどこかでは軽く捉えていたのだ。
「それではまずは機体から降りてきてください」
「どうすれば降りられる」
「見たこともない機体ですが基本の構造は同じはずです。主動力電源装置の近くにレバーのようなものはありませんか」
今までは使うことのなかったレバーであるがそれを動かしてみる。
するとコックピットが開いたではないか。
「無事にコックピットを開くことが出来ましたね。それでは機体から降りてきてください」
俺は慎重にコックピットから身を乗り出し機体から降りていく。
地面に降り立ったとき声をかけてきていた相手も近寄ってきていた。
「突然お招きしてしまったことは謝罪します。ですがどうか貴方様の力をお貸しください」
相手は頭を下げて懇願してくる。
「わかった。俺に出来ることならなんでもしてやる」
「これからよろしくお願いいたします」