十四話
友和はエドワルドに担がれる形で医務室に運ばれていた。
「すまん」
「ここまでするとは予想していなかった。目を離した俺の責任だ」
エドワルドはこう言ってくれるが常に一緒にいるなど不可能だ。
「これは、また酷くやられたね」
「お世話になります」
「喋るのもしんどいだろ。お前さんは悪いがミレイユを呼んできてくれ」
「わかりました」
エドワルドは急いで去っていき残された友和は服を脱がされ全身を確認されていく。
「骨折に打ち身に打撲。この様子だとしばらく訓練は無理だね」
「そうは言っても訓練をサボったら何を言われるか」
「ドクターストップだ。他の奴らが何を言おうと医者として認めるわけにはいかないね」
そんなことを言いつつフランは治療を続けていく。
そこに息を乱したミレイユがやってくる。
「怪我の具合はどうだ」
「この子にもいったけどしばらく訓練は無理だね」
「そうか。私の監督責任だ。それに丁度良いかもしれないな」
「丁度よいとは」
「お前の機体はオーバーホールすることになった。数日は動かせん」
「機体も本人も大怪我か。問題しかないじゃないか」
「フラン。こいつのことは任せたぞ」
「お前さんはどうするんだい」
「やった奴らにお説教だ」
そういってミレイユは去ってゆく。
「教官殿の許しも出たし養生することだ。体を治すことも仕事のうちだと思っておきな」
ミレイユは激怒していた。
訓練で怪我をすることは仕方ないがこれは違う。
即座に訓練生を招集し事態の把握に努める。
「暴力による怪我人が出た。やった者は名乗り出ろ」
しかし、誰も名乗り出ない。
「こういうやり方は好きではないが仕方ない。エドワルドやったのは誰だ」
「はっ。ジャクソンとマイケルです」
「お前たちは模擬戦で友和にぼこぼこにされていたな。自分の不甲斐なさを棚に上げて暴力に走るとはそれでも栄光ある機操士の卵か。恥を知れ」
機操士に求められるのは操縦技術だけではない。
軍人としての規範も求められるのだ。
「お前達には独房に入ってもらうぞ。連れていけ」
騒ぎを聞きつけた憲兵もやってきておりミレイユの命令に従い二人を独房へと連れていく。
これで事態が解決すればいいが二人の不満顔を見れば再発する可能性もある。
機操士の育成にはお金と何より貴重な時間がかかる。
場合によっては二人は別の訓練所に送る必要があるだろう。
「こんな時間にご苦労だった。解散だ」
消灯時間はもう過ぎている。
明日も訓練があるため寝かせることを優先し一先ず怒りを納めるのだった。