十二話
友和達は朝食を済ませてグラウンドに整列していた。
「昨日、軍医のフランから暴行があったと報告があった。生死を共にする仲間にそのようなことをする者がいて、非常に残念に思っている。今、正直に名乗り出るなら特別に許そう」
そう言ってミレイユは友和達の前をカツカツと靴音を鳴らしながら歩いていく。
しかし、名乗り出る者は誰もいない。
「そうか。名乗り出る気はないか。この際だ。被害者からの申告でも構わん」
ここで告発しても事態は解決しないだろう。
それよりも被害が増す可能性すらある。
「はぁ・・・。素晴らしい仲間意識に思わずため息が出る思いだ。よろしい。それでは全員にグラウンド10週を命じる。駆け足」
ミレイユの命令により全員駆けだしていく。
いつものことではあるが友和は少しずつ遅れていく。
以前よりはマシになったがそれでも鍛錬の差が出てしまうのは悲しいことだ。
しかし、今回はミレイユから鞭を打たれることはなかった。
走り終わり体はしんどいがびしっと整列してミレイユの話を聞く。
ここで姿勢が悪いとまた罰で何をやらされるかわかったものではない。
「全員戻ってきたな。今後はこのようなことがないように。それでは本日の教練内容を伝える。戦術機での射撃訓練だ。わかっているとは思うがくれぐれも慎重に扱うように」
「イエッサー」
グラウンドから走って戦術機の格納庫に向かい戦術機に乗り込む。
各部を確認して問題がないことを確認してキャノピーを閉鎖する。
起動シークエンスを実行させて戦術機を待機姿勢から立ち上がらせる。
そして、ハンガーにかけられている戦術機用の銃を手に取り格納庫から出る。
ミレイユの先導に従い戦術機用の射撃訓練場に向かう。
部隊内回線からミレイユの声が聞こえる。
「それでは来た順番で射撃訓練を開始せよ」
友和は他の訓練生が手間取る間に一早く格納庫を出たので一番最初の組である。
照準器を合わせて的を狙う。
連射はせず一発一発確実に的にヒットさせる。
「そこまで。全弾命中だ。次の者と交代せよ」
全弾打ち終わったところで声ががかり場所を空けて最後尾に並ぶ。
その後も順番で射撃訓練は続き銃や戦術機の癖をつかみ良い成績を収めることが出来た。
訓練も終わり夕食を取っているとこちらを睨んでいる奴がいることに気が付いた。
エドワルドが苛立ったように睨み返すと散っていく。
「っち。弱い者虐めしかできない奴らめ。お前ら俺からなるべく離れないようにしろ」
最初にちょっかいをかけられた時は付き合いにくそうな印象を受けたエドワルドであるが実は面倒見の良い奴であることはこの短い付き合いの中で感じ取れていた。