十一話
厳しい肉体鍛錬に不得手の勉強。
最初の頃はミレイユも友和がへばっても他の者に連帯責任を押し付けるようなことはなかったのだが訓練に慣れてくると友和が出来ないと全体に厳しい追加訓練が課せられるようになっていった。
その結果、同室以外からの訓練生からの嫌がらせがはじまった。
エドワルドやズススが庇ってくれるがそれでもいないときは容赦ない罵倒と暴力が友和を襲ったのである。
友和の精神はダンダンと病んできていた。
そんな中、待ちに待った戦術機での訓練である。
これで周囲を見返すことが出来ると喜んだ友和だったが基本的な歩行からはじまり陣形の組み方など技能を発揮できないような訓練ばかりだった。
「とりあえず戦術機の扱い方は問題ないみたいだね」
ズススはそう言って安堵していた。
「それだけが取り柄だからね」
ここまでの訓練や講義で熟々、自分には戦術機しかないのだと思い知らされた。
エドワルドも態度は悪いが真剣にサポートしてくれているがそれに応えることは出来ていなかった。
「まぁ、僕らは基本戦術機が動かせれば問題ないからね。ミレイユ教官も安堵しているんじゃないかな」
「そうだといいんだけど」
医務室にお世話になるたびに軍医のフランからは愚痴のようなものを聞かされていた。
どうにもミレイユからヤケ酒に付き合わされる付き合いが増えたそうで回数が増えたのは友和が来てかららしい。
フランはこの時期、不出来な訓練生が出るといつものことだと言っていたが案に友和のことだと言われているような居心地の悪さを覚えたものである。
肉体鍛錬の時間は相変わらずだが戦術機の訓練がはじまり講義の回数はそれに比例するように減っていった。
必要なことは全て教え終わったということなのだろう。
しかし、友和は理解できていない部分が多く相変わらず消灯までの短い自由時間に教本を読み漁る日々を送っていた。
「付き合わせてすまない」
「そう思うなら早く覚えてほしいな」
「すまん」
ズススは相変わらず根気よく勉強に付き合ってくれている。
二段ベッドの上で寝転がっていたエドワルドがトイレに行っているときに事件は起こった。
別室の訓練仲間で特にガタイの良い奴らが部屋に入ってくる。
「お前。戦術機の操縦が出来るからって調子に乗ってるんじゃないか」
「他の科目で活躍できないからって浮かれやがって」
「やめないか。自分達が苦労してるからって友和に当たるなんて間違っている」
「うるせぇ。ズスス。お前もお前だ。何でも器用にこなしやがって」
そこからは殴る蹴るの暴行だった。
ズススも巻き込まれる形で被害にあう。
エドワルドが戻ってくるまで暴行は続き二人揃って医務室のお世話になることになるのだった。