十話
友和達は訓練所に設けられた開けた場所にやってきていた。
「本日の訓練は射撃訓練である」
友和はFPSなども嗜んでいたが実銃を撃ったことなど当然ない。
渡された銃はどっしりと重くその存在を主張していた。
「おい。ルーキー。お前の番だぞ」
エドワルドがそう言って促してくる。
見様見真似で構えてみるがしっくりこない。
「なんだ。銃を撃つのははじめてか」
「はじめてです」
「いきなり立ち撃ちは難しいだろう。伏せて構えてみろ」
友和は言われたとおりに伏せて構えなおす。
「はぁ・・・。全然違う。仕方ないな」
ミレイユはそういってダメな個所を一つ一つ訂正していく。
訂正するときに体と体が密着して違う意味でドキドキしてくる。
名残惜しいと思いつつも訂正は終わりミレイユは離れていった。
「それでは撃ってみろ」
友和は深呼吸して心を落ち着けて的を狙いトリガーを引く。
弾は見当違いの場所に飛んでいったようで的は真新しいままだった。
「ここまでセンスのない奴は久しぶりに見たな。補習決定だ」
そこから射撃場の1か所を占領して徹底的な射撃訓練がはじまった。
最初は見当違いな場所に飛んでいったようだが訓練を続けるうちに的に近づいていく。
ようやっと的に命中させることが出来た時、ミレイユが褒めてくれる。
「よし、やればできるじゃないか」
ミレイユは褒めてくれるが周囲を見れば的に命中させるのは当然のことのようで喜んでばかりもいられない。
「周囲を見れば全然ダメじゃないですか」
「あいつらはお前より早く訓練を積んでいるんだ。差が出来るのは当然のことだろう」
落ち込んでいると思っているのかそう言って励ましてくれる。
「とにかく、今日の訓練はここまでにしよう。実戦への配備を考えれば悠長にはしていられないがまだ時間はある」
友和は銃を片付け他の訓練生の元へと戻る。
訓練生の中にはミレイユ教官と二人っきりで羨ましいなど言っている者もいるがそんないいものではなかった。
「友和。お疲れ様」
「ズススはどうだったんだ」
「僕はまぁまぁだったかな。最低限周りに迷惑をかけないぐらいには使えるつもりだよ」
「俺は散々だったよ」
「はじめから命中させられる奴もいるけど僕らもはじめて撃った時は酷くてね。教官達に厳しく指導されたものさ」
ズススはそういって笑っている。
経験したことのない非日常に触れて友和はうまくやっていけるのだろうかと不安を覚えていたがそれでも順応していくしかないのだと自分自身に言い聞かせるのだった。