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はじめてのお買い物3

冒険者の雑貨屋。流石に冒険者の~というだけあって想像の斜め上を行くお店だった。イメージしてたのがお洒落な小物や装飾品、冒険者向けのちょっとした雑貨が置いてある感じなのに、実際はこうだ。

先ず店の外観は雑貨屋冒険野郎と、書道家この世界にいるの?と突っ込みたいぐらい達筆かつ筆遣いの荒々しい木製の板に書かれた看板が掲げられており、入り口脇に鮭?を咥えた熊がたっているデカイ像と、反対側には大小様々な籠が山のように積まれている。中にはいると吊り下げ紐のついた瓢箪やら野営キットから調理道具や木皿、どこかで見覚えのある腰蓑や見ているだけで呪われそうな人形など多種多様かつ異様なものまで取り揃えられていた。

ちょっと一人ではいるのはいろんな意味で躊躇したい。店に入った時から人形とやたら目が合う気がするし、異様だ。やっぱりこの寵愛スキル…呪いの間違いなんじゃ、と思わずジト目になってしまう。


「何か欲しいものはあったか?」


「んー…野営とかはまだちょっとアレなんで、いずれ野営でも使えるような水筒とか、食器、調理器具ですかね…」


「あー…そう、だな…万が一にも使う日がくるかもだし」


「ちょっ!」


「テント張って頭ぶつけて瀕死な未来しか見えないしな…」


「否定できないのがつらい」


がっくりと肩を落とす。HPも防御力もないし、なんか他のスキルもどことなくポンコツ感が出てる。

試せてない調理スキルにきっと強化能力あったりするんじゃ…と淡い期待は抱いているが桃色神が『はぁい!』と頭を過る度嫌な予感と殺意しかしない。

お金もあと銀貨一枚、小銀貨三枚…無駄な買い物はできないし、出来れば市場も見に行きたいことを考えると買えるものはだいぶ限られてくる。


(んー…一万三千円で食費込みなら何を買うか…)


お店のなかをもう一度よく見渡してみる。


テント…これを買うと安いのでもお金がほぼなくなる。また、当分テントに泊まる余裕も体力もなし。優先度は低め。


羊の胃袋で作られた水筒or皮の水筒…日本の水筒に慣れた身からするとちょっと色々衛生的に思うところがあるけれど水持ち運ぶには必須。これが小銀貨三枚ぐらいからある。瓢箪はドロップ品らしく銀貨一枚~と高いから却下。とりあえず水筒は買い。


鍋…とりあえず米を炊きたい。そろそろ米が恋しい。朝はパン派という方も多いとは思うが、私は元々3食米派。アイラブ米!大きめな鍋は勿論高い。蓋付きの鉄製片手鍋が安いので小銀貨六枚。……痛いけど、買い。あと木製のお皿が大銅貨一枚だからそれも二枚。


他は見ると欲しくなるから、皮の水筒と、片手鍋と皿を手に店長さんのもとでお会計。

残金小銀貨三枚。とっても心許ない。


「鍋…?」


「あ、あはは…」


数あるものの中で何故それを、といわんばかりに訝しげな顔でみられても笑うしかない。わかってる。拠点が宿屋なら他に優先するべきものもあるはずなのぐらいは…わかっているのだ。ただ、米への渇望に負けただけで。たまに食べるなら黒パンでもいいが、毎食黒パンは…!

炊きたてホカホカのご飯が食べたい。今の手持ちだと、おかずがないから焼おにぎりぐらいしか作れない気もするけど、それだってご馳走だ。NO MORE 黒パン!


「まぁいい。で、…他に行きたいところはあるか?」

  

「あ、出来たら食料品を扱ってる店を教えていただけると…」


「干し肉や携行食料品か?」


「あ、いえ…!普段使いのでお願いします。アレもありますし」


「あー…わかった。ついてこい」


雑貨屋を抜けて、大通りから一本小脇に入ったところに様々なお店が並ぶ。ダンジョンが町の中心になっているせいか、生活必需品の店は少し奥まったところにあるようだ。八百屋らしき店にはキャロッツをはじめ、見たことの無い不思議食材や果物が売られているし、肉屋は最安のコボルト肉からはじまり一角兎やオーク肉などのファンタジー食材。あとはちょっとお高いが牛、豚、鳥などもある。他にはバターやチーズなどの乳製品を扱ってる店などがあったが、…肝心の調味料を扱う店が見当たらない。


「クロードさん、…調味料とかってどうしてるんですか?」


「塩は肉屋で買える。香草類は冒険者ギルドの窓口…胡椒は高いから王都とかいかなきゃないぞ」


「砂糖や蜂蜜は?」


「砂糖も高い。…蜂蜜もそこそこ高いが一応冒険者ギルドで買える。ドロップ品だからな。…まぁ、財布が厳しいならリュードを代用するらしいが…俺は遠慮したい」


調味料事情は中々にハードそう。

こればかりはスキルに感謝しよう…ランダムだけど!


「リュード?」


「簡単に言うとドデカイ芋虫のモンスターだな。体液が甘い」


「イモムシ」


虫、ダメ、絶対!!!


イナゴの佃煮やミドリムシのなんちゃらっての日本でもあったけど、美味しいのだろうか?まぁ、何となく敬遠してた身としては、異世界デビューで虫食デビューなんて無理にもほどがある。


とりあえず塩と鶏肉、豚肉と食用油を買っとこう。お金は銅貨五枚(250円相当)しか残らなかったけど宿屋はまだあと2日は大丈夫だしなんとかなる…はず?


「……買い物終わったなら解散だな。明日は午前中は、用があるが…午後でいいならダンジョン付き合うぞ」


「……ありがと、お世話になりまーす!」


「絶対に一人で入るなよ?」


念を押すクロードさんに、大きく頷いて解散。入るなよと言われて入るほど芸人魂は磨いていない。死にたくないし。


宿屋に戻って今日もチャレンジ!調味料しょーうかーんっ!


てでーん!


『ニンニクチューブ(大)』


…本当に、どうなってるのこのスキルッ!チューブだよっ!急に漂うスーパー感。


気を取り直して


で、デイリーボーナスっ!


再び現れたキラキラ輝く宝箱に思わずごくりと喉をならす。もしや、武器とか調理器具とか来ちゃう?


DADAN!


『キュウリと茄子の糠漬け(特売品)』


(…ぶっ殺す!いや、好きだよ?好きだけどね…!!なんで宝箱に糠漬け!?しかも特売品って…)


どっと疲れに襲われ、アイテムボックスに食料品をしまうとシャワーを済ませそのままベッドに沈没。









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