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ランダムにも程がある

ダンジョンの一階部分は過ごしやすい町の中とは違い、THE洞窟といった感じのゴツゴツした石の壁に囲まれ、じめじめとした薄暗い空間だった。壁に松明みたいなのがついてて驚いたがこれもダンジョンに最初から存在していたらしい魔導具みたいなものらしく一年中燃え続けてるし、屋内で燃え続けても一酸化炭素中毒にならないそうで羨ましい。頼れる兄さんクロードさんが一緒だから観光気分で歩いているが横湧き一発デッドオアアライブなことは変わっていない。一階で死にかける奴はそうそういないらしいが、私は既に三回は死にかけている。

一回目は入った瞬間足下にいた蛍光緑色のスライムによって。二回目は小石の罠で、三回目はついさっき。

『キョホホホホーイ!』

ご機嫌にスキップしていく手足の生えた人参によって。

意味がわからない。4~50センチぐらいの大きな人参には顔があるし、手足らしきものがあって、スキップをし、小石を投げたり跳び蹴りをしてくる。キャロッツと呼ばれる魔物らしい。


『キョホホホホーイ!きょほ!キョホホホホーイ!ホイホイ!』

死にかけた私にクロードさんがポーションをぶっかけている隙に(飲ませるより即効果がでるらしいけど何か悲しい)爆笑しているのか涙目になっているキャロッツが憎たらしい。


「こんのっ…!」


悲しいことに武器がないから足下に落ちていた小石を投げる。

空振り。

キャロッツ再び大爆笑、

また投げる。

空振り。

……死にたい。


「お前、遊んでるのか?」

「大真面目です…!」

若い頃はもう少しうまく出来たのにっと思わず顔をしかめると、クロードさんは剣ではなくおもむろに石をつかんで投げた。

一撃死である。……コントロールだけの差じゃないのが一目瞭然なのが辛い。

死んで残ったのは顔のない人参と、なぜかクズ鉱石。ドロップアイテムが落ち魔物の死体は残らないらしいが…あの人参の魔物みたあとにこれ落ちても食べたい気はしない。鑑定によると食べられるらしいが。

鑑定

キャロッツ

種族:魔物

食べられる。採れたて(倒したて)は鮮度抜群。

耕してダンジョンに植えるとガロ芋の苗になる。



人参?を耕して植えると芋の苗になるってなんたる不思議生物。笑い声が腹立たしいから正直あまり戦いたくない。

一階にいるのはスライム、キャロッツ、ゴブリンだけらしく、スライムはスライムゼリーと、ポーションづくりに必要な薬草類、キャロッツは人参?と鉱石類(ただし鉛やら銅やら鉄のクズ鉱石)、ゴブリンは使用感のある腰蓑と、こん棒を落とすらしい。なんか嫌だ。

クロードさんからお借りした袋にドロップ品を片っ端からいれていく。通りすがりの冒険者いわくクロードさんはとても有名な冒険者らしく、通る人が驚いた顔をして彼を見たあと、別な意味で驚いた顔をして私を見て去っていく。

あれか、常に瀕死だからか。


「腰蓑は装備してもいいがあんま売れないから捨てていい。…重くてもてないようならキャロッツか薬草類を優先しとけよ?」


重さでふらふらしているのを見かねてか、片手間でモンスターを倒しながら声をかけてくれる。優しすぎて泣きそうだが、拾う前にいってほしい…ゴブリンがはいていた腰蓑触りたくなかったというのは贅沢なのだろうが。


「はーい…」


とりあえず棄てる。ポイポイ棄てる。あたりが

腰蓑だらけになった頃には私のレベルもあがり、

HP:2(20)

MP:65

STR:10

DEF:1(10)

INT:55

LUK:38

「HPが2に、DEFが1に…!0.5から1って凄く強くなった気がする…!」

「安心しろ、誤差だ」

「ガーン」

スパーンと切り捨てられメンタルに多大なダメージ。レベル5になってこのステータス酷くない?一階でもまだ死ぬよ…泣きたい。

いや、泣くより桃色神を殴りたい。

1日何回言ってるかもはやわからないけど殴りたいものは殴りたい。

クロードさんにポーション使わせまくってるけど先立つものがないから恩返しもできない。

「はぁ…辛い…」

せめて防御スキルや攻撃魔法使えたら…と思っても、無いものはない。

流れ作業のようにクロードさんに倒された敵のドロップアイテムを拾い続けてクズ鉱石を手にとった時にふと手が止まる。

(鍛冶スキルって、どうやればいいんだろ?)

刑事ドラマとか、朝ドラ昼ドラしかみなかったから、ファンタジーな鍛冶なんてドワーフのおじさんが炉の前でトンカントンカンやってるぐらいのアバウト極まりないイメージしか浮かばないし、どんな機材が必要でどこで買えるのかもわからない。小さくて使い物になるかわらないクズ鉱石はたくさん集まってきたが、これをインゴットとかに加工とかするんだろうか?

「鍛冶…」

ねぇ…と呟くつもりだった。そう、ただ呟いただけだったはず…なのに掌に持っていたものと袋に詰め込まれたクズ鉱石の半分ぐらいから眩しい閃光が辺りを包み…眩しさに伏せた瞳を開くと、手の中には何故か、おたまとお米の計量カップが堂々と鎮座していた。


「シオン、今のは一体…!?」


そんなの私が聞きたい。


切実に聞きたい。


「え、えーっと鍛冶スキルですかね?」


鍛冶って口にしたらこうなったんだからきっとそう。たぶんそう。武器でも防具でもなく、お玉と計量カップってとこに作為的なものを感じるけど……!!


「はぁ?鍛冶なんて工房で溶鉱炉や器具がないと出来ないだろ……」


(ですよねー!)

ちょ、ちょっと鑑定。


鑑定

職人のおたま

食べられない。数多の汁物をよそってきた猛者。クズ鉱石でつくられたとは思えない出来。職人技が光る。

そこそこ強い。

装備すれば攻撃力+20

*鍛冶道具が一切ない状態で作ったため、ランダム生成


鑑定

職人の米計量カップ

食べられない。米1合がはかれる。

この世界で米食文化はあまり発達していない。

*鍛冶道具が~

投擲すれば30の固定ダメージ。ただし一回で壊れる。

(ランダム生成でおたまとカップってどういうことよっ!!)


「……鑑定しても、やっぱり鍛冶…みたいです。ちょっとどうしてこうなったのかはわからないですけど。」


「……不思議だらけだな。まだ鉱石残ってるんだろ?もう一度やってみろ」


ふむ、とどこか楽しそうに腕を組んで私に向き直るクロードさん。まわりをキョロキョロ見渡して他に誰もいないのを確認してから今度は袋の中に手を突っ込んで鍛冶!と叫ぶ。カッ!!と強く光り輝く袋。

おそるおそる手を引きぬけば、そこから姿を現したのは…

笠をかぶり丸々とした腹の、酒瓶持った愛嬌ある狸の置物!もはや鍛冶ではないと断言しよう。これは信○焼…!陶芸品だよ!鉛やら銅やら鉄どこいった…!ランダムにも程があるよ!!どうすんのこれ!?

クロードさんが瞳を皿のように見開いて固まっているけど、私だってパニックだ。

「なんだその…まるっこい生き物?は?」

「狸って知ってます?」

「聞いたことがない…魔物か?」

「動物…ですかね…はは…」

見慣れぬ置物に興味をそそられたのか手に取り様々な角度から眺め始める銀髪碧眼のイケメンて絵面も字面も凄い。たっぷり眺めて満足したのか、割れないように戻ると言われて、本日のダンジョンは終了。冒険者ギルドにおたまと計量カップ以外は買い取りにだして素材が小銀貨七枚。そして意外や意外…!狸の置物が小金貨一枚になりました。

小金貨を銀貨にかえてもらって、銀貨三枚をなにも要らないと言い張るクロードさんに渡して、現在私の持ち金は銀貨二枚小銀貨七枚大銅貨一枚。野宿は当分避けられそうです。ありがとうございます。明日はクロードさんと買い出しに出る約束をし、今日は解散。


因みに本日の調味料召喚は醤油(1リットル)。

デイリーボーナスは、村娘ワンピースでした。お洋服ゲットォ!!




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