表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

無理ゲー過ぎて泣きたい

私の名前は朝比奈詩音(あさひな しおん)。58歳、子供は二人。二年前に夫を亡くし年に数度帰ってくる子供たちに会うことを楽しみに日々趣味に没頭していた平凡な日々。


そう。平凡だったんです。


……つい、さっき台所で調理中に突然足下に魔方陣みたいなのが浮かんで光に包まれる迄は。





『パンパカパーン!やっほー、僕はラウミア!神様だよー!』

真っ白な空間に突如現れた桃色の柔らかそうなショートヘアーに青目の美少年に思わず顔が能面のようになる。

「あ、そういうの間に合ってますんで」

『ひっど!?神様に対してひっど!?なんて神々しい神様だーとかイケメンすぎて困っちゃうーとかそういうの期待してたんだけど』


桃色髪ならぬ桃色神、頭の中まで桃色に違いない。

自称神だしヤバすぎる。


「……頭が軽そう」

『ひっど!?』

突然現れた不審者が神様とか言われて信じるはずがない。

精々奇妙な夢みてるんだなぁ、ぐらい。そもそも台所にいたはずなのにこの真っ白な空間は一体…?

『まぁ、いいや!朝比奈 愁君。君は選ばれし者なんだ』


「それ、多分うちの次男ですけど。」


『へ!?』

私の切り捨てるような即答にどこから出したか七色に耀く怪しい紙を両手で握りしめ私と紙を交互にみやり真っ青な顔で絶叫をあげる自称神様。


『あぁああああ!!?男じゃないし、おばさんじゃん!?ど、どうしよう?』

この自称神様、一発殴ってもいいかな?よし、殴ろう。後ろ手にグッと拳を握りしめ一歩一歩にじり寄る。


『ま、まぁ、魂抜いちゃったしもう戻せないし仕方ないよね!君にはダジョダニアに転生してもらうよ!君はえらばれし者じゃないけどお詫びに若さと寵愛スキルあげて生まれ変わらせてあげるから!』


拳を振り上げるより早く、七色の光が私の身を包んで…

気が付けば筑前煮を煮ていた見知った台所ではなく、見覚えのない世界に放り出されていた。


「……変な夢だなぁ。あー、殴りそびれたし…」

自分でおばさんとかおばぁちゃんとか言う分にはいいけど、人に呼ばれるとなんとなく腹が立つ。そういう経験ありませんか?と誰にとはなく聞きたい気持ちになりながら夢なら仕方ないと先ずは辺りを見渡す。だいたい愛息子が選ばれし者で勝手に異世界転生させられるとか普通に考えて悪夢だし、間違えちゃったてへぺろで転生とか夢以外の何物でもないはず。

「どこだろ此処…」

中世ヨーロッパ時代を彷彿とさせる町並みの中央には周りの景色に全くそぐわない洞窟。入り口には衛兵らしき男が二人。コスプレイヤーとかかな?

とりあえず近付かないでおこ…っ!?

ぼんやりと考えながら歩いていたせいか足下に転がっていた石に躓いて転んだ所で意識がブラックアウト。





次に目覚めた時、視界に映ったのは天井とどこか心配そうに覗き込む銀髪碧眼の美丈夫。

あれ、夢って寝たら覚めるんじゃないの?

しかもなんか額がめっちゃ痛いんですけど!?

え、まさかこれ夢じゃないの!?

夢なら痛さなんて感じないよね?!パニックに陥りすぎて瞳を見開いたまま口をパクパクさせていると、ベッド横にいる男が苦笑い混じりに口を開いた。


「おい、お嬢さん…大丈夫か?変な格好してるし町中で死にかけてるやつなんてはじめて見たぞ。」


「お嬢さん…?」


こんなイケメンにお嬢さん呼ばわりされる年ではないはずだ。ホストクラブにも執事喫茶にもいった覚えはないし、男は一つに束ねた長い髪に腰に長剣…息子がやっていたゲームとかにでてくるTHE冒険者!という格好をしている。


「どうみても16、7だろ?」


「へ!?」


16、7!?+40ぐらいですけどって頭の中で突っ込みをいれてる最中、あの憎たらしい桃色神の言葉が頭を過る。

(若さと寵愛スキルとかいうやつ?!え!?あれ夢じゃなかったの!?ちょ、ま、あの桃色…!?うちの息子マジで異世界浚おうとしてたの!?ぶん殴るっ)

息子が読んでた異世界転生ものを興味本意で読んだことは何度かある。神様に力貰うやつとか、もとの世界帰れないけど創作物だし、面白ければいっか!…とは思ってました。

えぇ、思ってましたとも。

我が身に降りかかるはずないと思ってたし。大パニック!

年取りたくないとか若返りたいなーって考えたことはあるけど、そんなの誰しも一度ぐらい考えると思う。

でもまさかリアルに戻るなんて思わないじゃない!?え、異世界転生ってことは顔どうなってんの?日本人らしい平面顔?それともファンタジーな顔面に?切実に鏡ほしいと思いながら顔をペタペタ触っていたらイケメンの怪訝な顔いただきましたー!ヤバイものをみたようなお顔になってます。


「変なやつだな…ちょっとお前、ステータスどうなってんだよ」


「ステータス…?」


「頭打って記憶でもなくしたのか?ステータス、って呟けばみれるはずだぜ」


何て言うゲーム!?突っ込みたいところが多すぎていっそ記憶を消したい。異世界転生自体信じたくないけど現実ならいっそ記憶を失ってたらすんなり受け入れられたかもしれない。新しい物や場所など社会人として適応力はある方だと思っていたけど、異世界適応力なんてものはありません。


「ステータス」

なかば自棄っぱちで口にすれば目の前に出てきたのはシステムウィンドウ。ありがとうございます。どうみてもゲームです。


名前: シオン

種族: 人間

年:17

所持金:小銀貨5枚

スキル名:ラウミア神の寵愛

鍛治、造形、製作、調理などを極めし者。

セットスキル

鍛治

精錬

調理

工作

造形

アイテムボックス(時間経過なし、容量無制限(ただし食料品に限る))

デイリーボーナス(一日一個何かが貰えるよ)

調味料召喚

鑑定


*神の力は人の体には過ぎしもの。

HP、DEFが十分の一になる。


レベル1


HP:1(10)

MP:50

STR:5

DEF:0.5(5)

INT:50

LUK:30


(なにこれ!?)


「えっと……ちょっと記憶なくて…ステータスこんな感じなんですけど…」

とりあえずスキルは伏せて数値だけを読み上げる。

この世界の記憶なんてあるわけないけど、一つだけわかることはある。HP1はない。防御力なんて1すらない。攻撃受けたら一撃死である。なにそのデッドオアアライブ!?



「は?!その年でレベル1?しかもなんなんだその紙さ。お前ダンジョン潜らないでどうやって生きてきたんだ?…いや、HP1じゃそもそもダンジョン入れないか…魔法特化型だとしても1じゃなぁ…」


ダンジョン入らないと生活できない世界なの?日本産まれ日本育ちがダンジョン入ったことがあるわけがない。いや、普通に入ったことある方がどうかしてる。

腕を組んで真剣な顔でなにやら考え込んでるイケメンの顔を見ながら頭の中を整理しようにも知らないことだらけすぎてただのイケメン鑑賞(ただしパニック中)になってしまう。


「ダンジョン潜らないと駄目なんですか?」


「子供から老人まで、老いも若いも、王族含めて誰しもダンジョン。…当たり前の常識だろ?」


「は?」


「農夫だって鍛冶屋だって、料理人だって…どんな仕事があろうがダンジョンがないと生活できないんだよ。材料はダンジョンで手に入れるのが普通だからな…まぁ、金で解決もできるけど…自分で取りにいけば元手ゼロに近いだろ?鍛練だってダンジョンのモンスターでやる。…極力死なないように適正レベルの場所でな」


(なにその脳筋!?金がないなら力でいけよってなにそれ!?)


冒険者がダンジョン、オーケー想像の範囲内だ。

だがしかし農夫もダンジョンってどういうわけだ…畑耕すんじゃないの?ダンジョン潜ってなにすんの?!


「………私もダンジョン潜れますかね?」


「……限りなく不可能に近い。…とりあえず、お前名前は?」

「詩音です。」

「シオンか。俺はクロード…冒険者をやっている。…今回は護衛依頼でこの町にきていたんだが……ずいぶん危なっかしいニュービーを見つけちまったようだ…金は?」

「小銀貨五枚だけ…」

この世界の貨幣基準はわからないけど、桃色神のやらかしぶりから考えて嫌な予感しかない。ダジョダニアのダンジョン、名前だけでもやばい。


「あー、いくら初心者ダンジョンの町ってよばれてるダジョーンの町でも…それじゃ精々2日しか持たないぞ?…記憶がないみたいだから教えてやるが…」


ダジョダニアのダンジョンの町ダジョーン。もはや悪ふざけが過ぎる…って突っ込んでる場合じゃない。

銀髪碧眼イケメンのクロードさんの親切丁寧な話を纏めるとこの世界の貨幣価値は

聖金貨 一枚五千万円ぐらい

大金貨 一枚五百万円ぐらい

金貨 一枚五十万円ぐらい

小金貨 一枚五万円ぐらい

大銀貨 一枚十万円ぐらい

銀貨 一枚一万円ぐらい

小銀貨 一枚千円ぐらい

大銅貨 一枚500円ぐらい

銅貨一枚50円ぐらい

小銅貨 一枚五円ぐらい

鉄貨一枚10円ぐらい

小鉄貨 一枚一円ぐらい

こんな感じみたいだ。

どうせなら普通に銀貨くれよ…と桃色神を締め上げたい。装備も家も何も無し、所持金約五千円って…何たる無理ゲー。おばちゃん死にそうだよホロリ…あ、いま若いんだった…とかセルフ突っ込み入れるまでがワンセット。にしても、このイケメン優しい。

この町のダンジョンが攻略難度の低さから初心者ダンジョンとよばれてること。初心者用の装備を売ってる店がたくさんあること。…初心者ダンジョンの一階からはレベル1~5の適正狩り場らしいことを教えてくれた。


…が、しかし…


「HP1でDEF0.5って…虚弱児でもそんな酷くないぞ?……どうやって生きてきたんだ…」

「……記憶にないです」

桃色神の野郎許さんっと心の中で呪詛を唱える。

一発殴らないと気がすまんっ!!

「………仕方ない。依頼は終わったし暫く面倒見てやるよ。町中でぶっ倒れて瀕死になるようなやつ一人でダンジョンにいかせられないしな…」

はぁ、と深いため息をつき、困ったような顔で笑うイケメン、クロードが仲間になった…ててててーん。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ