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よろしくお願いしますm(*_ _)m

コンコン__


「ティ、ティナさん?…ティナさん、おられましゅか!!」


魔物の寝床で働く獣人の奴隷アリーはティーナの部屋の扉をノックし、大声でそう叫んだ。

勢いよく叫んだせいで見事に噛んでしまったアリーは、全く反応が帰ってこない扉の前で一人、顔を赤く染めていた。

そしてさっき自分に起こった出来事を思い出すのだった。


今から少し前、お客様を部屋に置いてきぼりにするという大失態を犯してしまったアリーは、今度はどんな罰を受けるのかと受付に立ちながら怯えていた。



ひと月前、奴隷商からここの店主であるミーヤに買い取られ、この魔物の寝床にやってきたアリーは仕事を早く覚えようと必死に働いた。


しかし、奴隷商に居た時は檻の中で一日一回の食事以外に特に何もやっていなかったアリーはなかなか仕事に慣れることが出来なかった。

それでも自分を買い取ってくれたミーヤさんに恩を返さないと、と意気込み、自分を追い込んで頑張るアリーはその根気強さが空回りしてしまうことが多々あった。


例えば、食堂のテーブルを拭くのを頼まれた時。

ふきんを水で濡らし、絞ってテーブルを拭く単純な作業。

しかし、アリーがふきんを濡らして絞った後テーブルを拭くと、テーブルはびちょびちょになってしまう。

絞りが足りなかったと反省し、力の限りふきんを絞れば今度は獣人の力に耐えきれずふきんが破れた。


泊まりのお客様を部屋へと案内する。


しかし、アリーが連れていったのは案内するはずの部屋の隣の部屋だった。そこは別のお客様の泊まっていた部屋で夫婦で宿泊しており、アリーが扉を開けた時は間が悪く、夜の営みをしているところだった。


アリーはそんな失敗をするたびお客様から罰を与えられる。アリーが獣人でしかも奴隷ということもあり、罰は厳しいものが多かった。


それはお客様に袋叩きに殴られ、蹴られるなどといったものもあれば、ミーヤにアリーを一日外に立たせておくように、と言いつけることもあった。

中でも一番酷いのはミーヤにアリーを一晩貸せといい、性奴隷にしようとするお客様だった。


でもそれだけはいつもミーヤさんが止めてくれた。


今回はどんな罰がくるのだろう。

女の人だったし性奴隷とかはないと思うけど…。ご飯抜きとかだったら嫌だなぁ。まだ痛い方がいいかも…。


そんなことを考えていたアリーにミーヤが近づいてきた。


「あ、ミーヤさん!お客様はまだ誰もいらっしゃってません!…それと、あのう、私の罰はなんでしょうか…?」


そう尋ねて、恐る恐るミーヤの顔を見る。


「そうかい。それよりいいお客様でよかったねぇ。お客様は何も望まれなかった。お客の足が止んだのならちょうどいい。もうすぐ夕飯の時間だから、さっきのお客様をお呼びしてきな。名前はティナさんだ。ちゃんと、お礼も言っとくんだよ」


そう言ってミーヤはアリーの頭を大雑把に撫でた。


「え…!!本当ですか…?は、はい!すぐに行ってきます!!」


アリーはミーヤの言葉に心底驚き、衝撃が大きすぎて何も考えられないまま、とにかくお礼を言わないと!と思い、お客様の部屋へ向かった。


「こら、バタバタと音を立てて走らない!!」


急いで階段を上るアリーは後ろでミーヤから注意されるのを耳に入れながら、2階へと着いた。


そうして、今に至ったわけだが。


一向に扉は開かないし、声も聞こえてこない。


…コンコン、ってして返事なかったら中入ってもいいかな…?でも、勝手に入って怒られたらどうしよう。でも私の失態を見逃してくれた人だし、大丈夫かも…!


喉を鳴らし、一度深呼吸をしたアリーは、一息置いてから再び扉をノックした。


「あの!ティナさん!お、おられませんか?ゆ、夕ご飯の時間ですよ!!」


「……」


…よし!入ろ!


_コンコン…


「し、失礼します…!」

読んでくれてありがとうございます。

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