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よろしくお願いしますm(*_ _)m


「いらっしゃいませー!」


中へ入ると、10歳くらいの小さな女の子が笑顔で出迎えてくれた。女の子の頭には犬のような耳が生えている。

どうやら獣人のようだ。

私も初めて見た時はすごく驚いたが、この世界にはリアルに獣人という種族が存在する。

確か、攻略対象のキャラにもいたなぁ。


「あの、この宿屋で一番高い値段の部屋を見せて欲しいの、んんっ。見せてもらえませんか?」


私は地球にいた時を思い出しながら話す。

随分と久しぶりに使うその言葉遣いはなんだかとても懐かしく感じた。


これからは平民として暮らして行かないといけない。

もし身分がバレれば、確実に父に連れ戻されてしまう。

というか普通の会社員だった私が貴族の言葉遣いが普通に出るようになるなんて…地球にいた頃は想像も出来なかったなぁ。


「了解しました!!では、こちらへどうぞ!」


獣人の女の子に案内されたのは、寮にあった私の部屋の半分ほどの広さの部屋だった。


でもベットは綺麗だし硬さも大丈夫そうだ。これなら快眠出来そう。


私はほっと肩をなでおろし、女の子の方を見る。


「ここに決めたいんですが、いくらですか?」


「えっ…と、ごめんなさい!すぐにミーヤさんに訊いてきますっ」


女の子は値段がわからなかったようで泣きそうな表情で慌てて登ってきた階段を下へと降りていった。


突然走り去っていった女の子を呆然と見送った私は、ここに居ていいのか、それとも私も降りた方がいいのかわからずに結局、部屋の中に立ち尽くしたまま案内してくれた女の子が帰ってくるのを待った。


「…おお、あんたかい?ここを借りたいって言ったのは。ずいぶんと待たせてしまったみたいで悪かったねぇ」


開きっぱなしになっていた扉から顔を出したのは、中肉中背のおばちゃんだった。この人が女の子が聞きに行ったミーヤさんだろうか。


「あ、いえ…。えっと、ミーヤさんですか?」


「おや、あんた、私の名前知ってたのかい?」


どうやら名前はミーヤさんで合っていたようだ。


驚いた様子のミーヤさんに私は案内してくれた女の子が言っていたことを伝える。


「それは悪かったねぇ。あの子にはいつも冷静に対応しろって言ってるんだけど。なにぶん、まだ入りたての子だから、勘弁してやって欲しい」


ミーヤさんは私が怒るとでも思っているのか、部屋の中に妙な緊張感が漂う。


「いえ、気にしてないですから。それよりもここを借りたいんですけど…」


「…いいのかい?」


「はい。それよりここっていくらでしょうか?」


目を丸くして確認してきたミーヤさんに、私は改めて気にしていないことを伝え、ここの値段について尋ねる。


「…あ、ああ。…何度も訊いて悪かったねぇ。あの子は獣人だから、ヘマをしたあの子にきつい事を命令するお客も多いんだよ」


「そうなんですか…」


「ああ…。それでもあの子は店を手伝ってもらうために奴隷として買い取った子だ、だから働いてもらうしかないんだけどねぇ。つまらないことを話してしまったね。…じゃあ下に降りてきて手続きしてくれるかい?」


「あ、はい。よろしくお願いします」


ミーヤさんは少し悲しげに女の子のことを話したが、すぐにその表情は消え、下の受付へと私を案内してくれた。



「はぁー」


手続きを済ませた私は借りた部屋に戻り、ベットに寝転がる。


「気持ちいい…」


値段は三日で銀貨2枚と結構したが、高いだけあってベットはふかふかでとてもいい寝心地だった。

銀貨2枚は地球でいうと10万円くらいなので、行ったことがないからわからないが、地球の高級ホテル一泊分くらいの値段かな。


「それにしても…」


私はさっき、ミーヤさんが話してくれたことを思い出す。


奴隷って本当に存在してるんだ。


もちろんここに生まれてから知識としては学んだし、私を育ててくれたリーシャも奴隷だった。

でもリーシャはいつもシワひとつ無い綺麗なメイド服を着ていたし芸能人みたいに綺麗だったから、奴隷という意識は全くなかった。


…獣人、か。


この世界には獣人は獣の生まれ変わりと信じている人が多くいる。そういった考えを持った人々は、獣人は人間ではないという意識を持ったらしい。


それはこの大陸にある私の生まれ育った国や、今いる隣国のこの国の王様や貴族が全て人族で構成されていることでそれが間違いだという人がいないことが獣人の迫害の原因になっているのかもしれない。

貴族のような地位を確立した人の中に一人でもそれを否定する人でもいれば、その人を中心に認識を変えようとする反乱が起きたりもするかもしれないが、何世代も否定を唱える人が現れず、獣人は獣の生まれ変わりだという意識が根付いているこの国や私の生まれた国では難しいだろう。



そういった意識が根付いた人族は、獣人を自分より下に見ているため、私の育った国でも獣人が暴行される事件が多く起きていた。それは奴隷に限らず、少数存在する平民の獣人も同じだった。


そういえば、あの子も手とか足に傷があったなぁ。


私はといえば、やっぱり地球で暮らしていた時の記憶があるため、獣人を見ても可愛いとしか思えない。まあ、実際に見たのはさっきの女の子が初めてだったけど。

さっきの子、可愛かったなぁ。

犬耳がついている男性とかも見てみたいなあ。

アルフォンス様に犬耳とかついてるとか…絶対似合う!あのツンとした表情に犬耳ついてるのとか、想像するだけで口元が緩んじゃう。


決めた!会ったら、魔法でもなんでも使っていつか必ずやってもらおう!

幻術系の魔法を使えばアルフォンス様に犬耳をつけることは簡単に出来ると思う。


そんなことを考えているうちに私はいつの間にか眠ってしまった。


読んでくれてありがとうございます。

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