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よろしくお願いしますm(*_ _)m

あれからしばらく時間が流れた。具体的に何日かは時計がないのでわからないが、結構な時間が経ったのは確かだった。


初めはぼやけていた私の視界もやっと鮮明に見えるようになった。

視界が鮮明になって分かった事は、私は今赤ちゃんになっていて、私がいる場所は地球じゃないということだった。


なぜそういえるのかといえば、私のお世話をしてくれているメイドさんが、ファイアーボール的なものを使うのを何度も目撃しているからだ。


私はこの状況を把握した今、一つの可能性を期待していた。


それはこの世界が恋ものの世界ではないか、という事だ。


まだ見覚えのあるキャラを見かけてはいないが、私が乙女ゲームと同じくらい趣味だったラノベ小説に、乙女ゲームに転生した、みたいな話が結構あった。

もちろん、そんな夢みたいなことが本当にあるとは信じ難い。でも実際に魔法という非現実的なものが存在する世界に来ている私だ。もしかしたらと期待せずにはいられない。


もしも、本当にここが恋ものの世界なら、何としても私の生きがいであるアルフォンスに会いたい。


会って、たとえ恋愛的な関係にはなれないとしてもせめて、彼の傍に居させてもらいたい。


まだ私がどういう家に生まれたのかはわかっていないが、メイドさんがいるので裕福な家なのは間違いないと思う。そうなると、貴族の可能性が高い。そしてそうなら当然、婚約者をつけられる可能性があるわけで。


そんな可能性を想定した私は幸いなことに何もすることがない、元社会人としては羨ましいことこの上ないこの状況を使って、どうしたらアルフォンスに会えるかをひたすら考えた。


もちろん、私にとって一番いいのは私が令嬢としてアルフォンス・シュゲイザーの婚約者になることだ。しかしそれは難しいと思う。

なぜなら彼は隠しキャラなのだ。ゲーム通りなら、彼の存在は王家で秘匿されているはずだった。

何よりいちばん厄介なのは、ゲームで彼は魔王という存在だったことだ。


そんな彼のルートに入るには、ヒロインが第1王子として扱われている本当は第2王子のアレク・シュゲイザーとその王子のお付きであるフェンバート・ユーレスの好感度を、夏に行われる舞踏会までに最大にしておかないといけない。


ちなみにアルフォンスのルートに入ると、ヒロインのアンナが魔物に襲われそうになるのを魔法を放ち、アルフォンスが助ける。

しかし、それからすぐに仲良くなる訳ではなく、その場でアンナは礼を口にするが、彼は全く表情を動かさず無言でその場を立ち去るのだ。



ちなみにその時ヒロインのアンナつまりプレイヤーには、「彼を追いかける」と「そのまま見送る」という選択肢が表示される。


そこで「彼を追いかける」を選べば結局彼は見つからず、その後二度と出てこない。恋ものというゲームはキャラクター攻略に関して非常にシビアなゲームだった。


私も初めての時は案の定、「彼を追いかける」を選んでしまい、その後アルフォンスには一度も会えなかった。

もちろん私はそのあとすぐに周回プレイを開始したのでアルフォンス様のルートはしっかりコンプリートしてある。


でもこんな知識は今の私が覚えていても何の役にも立たない。

なぜなら私はヒロインのアンナじゃないから。

はっきりとそう否定できる理由には、アンナは平民だった からということもあるが、一番の理由はアンナの髪がこの世界ではとても珍しい黒髪だからだ。

私の髪は貴族の令嬢らしい艶のある綺麗な金髪だ。

なので私がアンナじゃないことは確実だった。


現状、私はヒロインとは正反対のキャラ、悪役令嬢のティーナである可能性が高い。


悪役令嬢ティーナ・クロスロード。

鋭い目つきが特徴的な彼女は、幼少期から将来この国の王妃となるためにと両親から厳しい英才教育を受けさせらる。


真面目で粘り強い性格のティーナはそれが当たり前だと思っており、授業がある度に逃げ回ったり、こっそり王城を抜けて王都に行ったりと、幼少期からやんちゃな性格のアルフォンス様の弟でもあるアレク・シュゲイザーのことを嫌っていた。


そしてアレクの方も、幼い頃から勉強している姿しか見たことがなく、常に学年一位を取り続けるティーナのことが、感情がない人形のように見えてしまい気持ち悪いと、嫌っていた。


しかしそんなアレクとティーナは婚約しており、ティーナはそのことを12歳の誕生日に知ることとなる。


ずっと両親から言われた通りにして過ごしてきたティーナは期待に満ちた笑顔を浮かべて喜ぶ両親に嫌だとはもちろん言えず、一方のアレクもまた、王である夫が決めた婚約者を断れば王位争いに影響すると考えたアレクの母によって断ることは許されなかったため、二人は婚約者となった。

そうしてアレクの婚約者となったティーナはアレクがいずれ王になることを考え、アレクの性格をなんとか矯正させようと決め、アレクと会えば必ずと言っていいほど、アレクの態度、行動に関して注意するようになる。


個人的に私はこれがティーナの、両親に対するちょっとした反抗だったのかなと思った。


しかしそんなちょっとしたティーナの行動は、徐々にエスカレートしていく。そのきっかけとなったのが学園に入学し、ヒロインのアンナがアレクと仲良くなることだった。


アンナは平民なので令嬢としてのふるまいなど知っているはずもなく、そんなアンナのことを逐一注意するようになる。

そして何度注意しても治らないアンナの様子に、ティーナの注意は、虐めへとエスカレートしていく。


それはアンナの教科書を破ったり、アンナの鞄に虫を入れたりと、アンナ自身に怪我をおわせるような大きなものではなかったが、アンナはティーナが一つ何かを起こす度に大泣きしながら学園中をまわってアレクを見つけ、ティーナにいじめられたとアレクに泣きつくのだ。

もちろん人前で大泣きするなど大きな恥だ、と泣くのを堪えるのが普通の令嬢だ。


ちなみにティーナとアレクの関係性などはここまで細かい情報はゲームでは出てこない。ならなぜ、こんなことまで私が知っているのかというと、実はこのゲーム人気があったのか、ゲームだけじゃなく、小説としても作品が出ていたからだ。もともと小説も趣味の私はせっかくだから、とゲームと一緒に購入していた。



それはそれとして、恋ものの話に戻るが、アンナに甘えられたアレクは、さっそくティーナに虐めをやめるように言う。

しかしティーナはそれを拒否し、その後もアンナを見かける度、悪戯をする。

そしてついに、ティーナは断罪されてしまうのだった。


ティーナは、アレクのルートだと国外追放、アレクのお付きであるフェンバートのルートだと刺殺、他にも奴隷落ちや毒殺、そして、アルフォンスのルートでは魔物に変えられる。


結末から見れば、王道ルートであるアレクの国外追放が一番マシといえるだろうか。


とにかく、ティーナはどのルートでもロクな結末を迎えられない。

いくら悪役令嬢という設定だからといっても、悪戯レベルの虐めで罪が重すぎると思う。


でも今の私にとってそんなことはどうでもいい。


もしもここが本当に恋ものの世界なら私が悪役令嬢だろうが悪魔だろうがなんだろうが、意地でも立体的に存在するアルフォンスに絶対に会う。

そしてずっと傍にいたいという夢、いや目標がある。


たとえ、私が魔物に変えられるとしてもアルフォンス様に会える、しかも現実で会えるんだからなんでもしてやる。


傍で見守れるならそれでいい。私を魔物に変えるのがアルフォンス様ならもっといい。


とにかく、二度と会えなくなると思っていたアルフォンス・シュゲイザー様と同じ世界にいるのならば、どんな不可能だって可能にしてみせる。


そのためにもまずは不可能を可能に出来る力、魔法を覚えよう。

大丈夫。今の私は成績優秀のティーナなんだから。頑張れば何にだってなれるはず。



読んでくれてありがとうございます。

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