表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/251

8章

インストガンの轟音(ごうおん)が鳴った方向へと足を進めるアンたち。


アンは、奥では戦闘が始まっているはずなのに、と静かなことに違和感を覚える。


薄暗い道をしばらく歩くと、奥から明かりが見えた。


そこにいたものをみて、リードが思わず()()る。


「な、なんだこいつら!?」


そのフロアに入ると、そこには数体の機械が(たたず)んでいた。


もう少し正確に表現すれば、特異な形状の鎧甲冑(よろいかっちゅう)のような姿をしている人の形をしたものだった。


メタリックな白い装甲が、照明に当てられて輝いている。


よく見ると5体はいる機械人形。


その1体1体の大きさは、160cmから180cmとバラバラだったが、それぞれがまるで鬼神(きじん)のような威圧(いあつ)感を放っていた。


この廃墟に住んでいた新種のキメラか、反帝国組織バイオ·ナンバーの兵士なのか――。


真っ白な機械人形たちは、アンたちを確認すると突然向かってくる。


アン、リード、ストラ、レス四人がインストガンを構えた。


隊長のモズは右手を振って、「()て!」と命じる。


次の瞬間、轟音が響いた。


インストガンによる銃声ではなかった。


モズが機械人形によって、壁に叩きつけられた音だ。


「モズ隊長ッ!?」


ストラが叫びながら、飛ばされたモズへと駆け寄った。


アンたちが一斉にインストガンを撃つ。


轟音と閃光(せんこう)(ほとばし)る。


放たれた電磁波が、機械人形たちの腕や頭部を破壊していく。


後方にいた2体の機械人形が、前衛で倒された3体を飛び越えて向かってくる。


リードが、アンを(かば)うように前へ出て、腰に()びているピックアップ·ブレードを出した。


それに呼応(こおう)するかのようにレスもブレードを握る。


グリップにあるスイッチを押し、光のサーベルが姿を現す。


二人はその白い光の(やいば)で、残った2体の機械人形の攻撃を受け止めた。


「っく!? なんてバカ力だ」


「ああ、まるで大型のキメラ並だぜ」


リードとレスが冷や汗を()いていると――。


「二人ともそのままだぞ」


アンが声をかけた。


手にはインストガンを構えている。


そして電磁波を発射。


2体の機械人形は、頭部が吹き飛ばされて、その場に(しず)んでいった。


リードが、動かなくなった機械人形に近づく。


「こいつら……なんなんだよ……?」


アンもその傍へ行き、リードへ声をかける。


「同じことを2回も言うな。みんなもそう思ってる」


「だ、だけどよ……」


「それよりモズさんは?」


アンが、壁に叩きつけられたモズと、それに近寄ったストラの方を振り返って言った。


モズは口から血を流し、着ていた軍服が切り裂かれていたが、ストラは大した怪我(けが)ではないと言い、背負っていたミリタリーリュックから医療キットを出す。


レスもそれを手伝おうと、モズとストラへの傍へ。


モズが顔を歪めて言う。


「すまない。くそッ! 油断した」


「あんなの歴戦の兵士だって()けられないですよ。事故みたいなものです」


笑みを浮かべながら言うストラ。


手慣れた様子で、モズの手当てをしていく。


モズが、少し苦しそうに言う。


「このザマでなんだが、全員周囲の警戒を。まだ残りがいるかもしれん」


「モズ隊長、このザマ(・・・・)って、気にし過ぎですよ。ストラの言う通り、あれはしょうがない」


ストラの横に立っているレスが言った。


そんなレスを見て、ストラは嬉しそうにしている。


その様子は、ストラは彼のそういう気遣(きづか)いを言葉にできるころが好きなのだと思わせた。


それはレスも同じだった。


二人は互いに、こういう危機的な状況でも他人への優しさを忘れないところに()かれ合っているのだ。


アンとリードは、微笑みながら周囲の警戒に回った。


それから、モズの手当を終えたストラが気がつく。


「あれ? もう血が止まっている? やっぱり大したことなかったんですね」


そうモズに声をかけた瞬間――。


ストラの体が、白い腕に(つらぬ)かれた。


貫かれたストラの体から飛んだ血が、横にいたレスの顔に飛び散る。


レスはあまりに突然のことに両目を大きく開け、状況を理解できずにいた。


「ストラ……?」


レスが婚約者の名前を(つぶや)くと、彼女と同じように白い手によってその体を貫かれた。


何が起こったわからないレスは、そのまま白い手の主を見る。


「モ、モズ……隊長……?」


そこには、身体が機械化していたモズの姿があった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ