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5章

檀上(だんじょう)から話を続けているバッカスの後に座っている二人の男女。


ストリング帝国の将軍の2人――ノピア·ラシック将軍とキャス·デュ―バーグ将軍。


「話が長いな」


ノピアは、オールバックの髪に手をやり、細い目をさらに細めて言った。


そして、退屈そうに首に巻いてある黒いスカーフの位置を直している。


その横で、両腕を組んで姿勢正しくしている金髪の女性――キャスがネクタイを締め直すと、椅子(いす)から立ち上がった。


立ち上がったキャスは、壇上へと近づいて行き、話を続けているバッカスの肩を叩く。


「バッカス将軍。もういい、私が代わろう」


並ぶ二人の将軍。


身長178cmある長身のキャスだが、188㎝はあるバッカスの横に並ぶと、やはり小さく見えた。


キャスの()き通った碧眼(へきがん)に見つめられたバッカスは、黙ったまま後ろへと下がっていく。


入れ代わったキャスは、金髪のロングヘアを両手で背中へ払い、ストリング兵たちの方へ向く。


「キャス将軍だ」


「相変わらずお美しい……」


壇上へ立ったキャスの姿を見て、兵たちから声が()れ始める。


無理もない。


彼女の顔も体も、まるで女神の彫刻のように美しいからだ。


それと弱冠18歳にして将軍まで上り詰めた彼女には、男性だけではなく女性の信望者も多い。


それから、キャスは話を始める。


――数か月前、見張りの兵が見慣れない怪しい男を捕らえた。


捕らえられた男は尋問(じんもん)にかけられ、兵に変装して中へ入ったのは、組織の命令でやったことだと白状(はくじょう)する。


なんでもその組織のリーダーに、ストリング帝国の内情を調べるように言われたそうだ。


キャスがドスの()いた声で静かに言う。


諸君(しょくん)、これは明らかな宣戦布告である」


キャスがいうに、正面の城門から手続き済ませて入国すればいいものを、わざわざ変装して調べようとするなど、何かこの国に害を与えようとしているとしか考えられないと続けた。


「その組織の名はバイオ·ナンバー。我々ストリング帝国に(あだ)なす者たちの集まりだ」


その後、男に案内させ、その反帝国組織のアジトへ向かった部隊が消息を()った。


だが、まだ通信デバイスは生きていたので、消息の絶った部隊の位置はわかっていると付け加える。


「諸君らには、これからその場所へ進軍してもらう。武運を祈るぞ」


キャスの話では、その消息の絶った部隊の捜索を、ここに集められた兵たちで行うようだ。


話が終わると、兵たちはそれぞれの所属する部隊の元へと集まって行く。


モズが指揮するアンたちの部隊の他――総勢50人のストリング兵へ、(あらかじ)め用意されていた水や携行食(けいこうしょく)の入ったミリタリーリュックを渡せされていく。


もちろん武器もだ。


古い突撃銃を思わせる電磁波放出装置インストガン。


高出力の半導体レーザーの(つるぎ)――ピックアップ·ブレード。


ピックアップ·ブレード――この白い光の刃は、半導体レーザーの出力が調整してあり、グリップにあるスイッチを押すとサーベルのような形状になる。


ストリング兵は、主にこの二つ武器で戦う。


その後、大きく強固な門が開き、行軍が始まった。


城門から外へ出たストリング兵たちの後ろには、今回の指揮(しき)を任されているノピア·ラシック将軍の乗る戦闘車両が、歩兵の歩く速度に合わせて走っている。


ストリング帝国の戦闘車両は、その昔に南アフリカのパラマウントグループが作ったといわれる車――マローダーを思わせる外観だ。


その名はプレイテック。


ボディの色はサンドイエローとブッシュグリーンの2カラー(砂漠地域なら前者、森林地域なら後者を使う)。


全長6.4m 高さ2.7m 総重量10t


乗員は2人だが、8人まで同乗可能なので、最大で10人まで乗れる。


車両重量11,000~13,000kg ホイルスペース約3.5m 最大積載量重量5,000kg


エンジンには6気筒ターボディ―ゼルを搭載(とうさい)していて、最高速度は100k/h。


防弾性能、対地雷防御性能にも(すぐ)れ、ホイールは14kgのTNT火薬の爆発にも耐え、厚さ9mにも及ぶ窓ガラスは、RPG-7(ロケット推進擲弾(すいしんてきだん))の攻撃も防ぐことができるため、キメラでも簡単には破壊できない。


武器はインストガンの大型タイプを車両の上部に付けていて、全方位へ電磁波を撃つことができる仕組みになっている。


ある探索してた部隊が、偶然この戦闘車両を発見し、構造を調べ、それから改良を加えて量産した。


軍の遠征時には欠かせない戦闘車両である。


……グレイには手紙を書いておいたけど。


直接会って言いたかったな。


アンは、目の前に広がる砂漠を歩きながら思った。

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