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12章

川沿いにある空き家で一夜を過ごしたアンたち――。


目を覚ましたアンは、辺りを見渡したが、グレイの姿がない。


……グレイ。


まさか寝ずに見張りをしていたんじゃ……?


そう思ったアンは、体を起こして立ち上がった。


起きたばかりのせいか、白昼夢(はくちゅうむ)が始まる。


機械に成り果てた仲間たちとの思い出――。


彼女は今でも忘れていなかったが、香りや声色の記憶は(うす)くなっていた。


それは、仲間たちが機械化したときに聞いた声と匂いが、耳と鼻に張り付いているからだった。


自分を抱きしめるように体を掴んでいるアン。


いつの間にかいたニコが、アンの足に食らいついて外へ引っ張ろうとしている。


アンたちがは着いたこの川沿いの空き家は、グレイがストリング帝国を出ていたときに見つけたと、昨夜に説明していた。


空き家から出ると、そこには川があり、周りには木々や草が咲いている。


砂漠とストリング帝国の街しか知らないアンにとって、その光景(こうけい)は生命の息吹(いぶき)を感じさせた。


アンは、赤子を触れるように優しくそれらに触れる。


「すごい……昨日は気にしてなかったけど。自然がこれだけ残っているなんて」


両目を見開いているアン。


そんなアンを見て、体を(おお)っている白い毛を()らしながらニコはさらにはしゃいでいる。


川には魚がいた。


アンは、生まれて初めて魚を見た。


ニコがアンに向かってはしゃいでいるが、、アンの目は水の中にいる魚に釘付けになっていた。


それから空き家の方を振り返り、そこにあった戦闘車両――プレイテックを見て、苦々しい顔をする。


この景色に、戦闘車両があることに違和感を感じていたアンに声がかけられる。


「おはよう、アン」


グレイが、家といるときと変わらない調子で、そこに立っていた。


だが、その手には大昔の散弾銃パンコア·ジャックハンマーが握られている。


パンコア·ジャックハンマーとは、ジャックハンマーショットガンとも呼ばれるフルオートショットガンだ。


1980年代初期にアメリカの銃器デザイナー、ジョン·アンデルセンによって設計され、1984年に特許を出願(しゅつがん)、1987年に同特許を取得している。


散弾銃、しかもブルパップ方式としては世界で最初の銃の一つに数えられる。


銃の構造はとても変わっており、「弾薬カセット」と呼ばれる取り外し可能なリボルバー型のマガジンを持ち、弾は最初からカセットに装填(そうてん)されている。


射撃後も薬莢(やっきょ)は排出されず、リロードはカセットごと交換して行う。


このカセットを人が踏みつけると10発の散弾が全て発射され、傷つけるという虎挟み(ベアートラップ)と呼ばれる対人地雷としても使うことができる。


この数百年前の散弾銃は、ストリング帝国のインストガンしか知らないアンからすれば、骨董品や中古品にしか見えなかった。


だが、グレイは物持ちがいいと自称(じしょう)するだけあって、壊れることなくもう長いこと愛用している。


準備ができたら出発しようと言うグレイに、アンは今度は自分が運転すると返す。


「寝てないんだろう? ずっと見張りをやっていて……」


申し訳なさそうに言うアンに、グレイは言う。


「まあ、俺は夜型だからね。丁度よかったのさ」


それから食事を終え、アンたちはプレイテックに乗り込んだ。


しばらくは川沿いを走るように言われ、ハンドルを握りながら外の景色を見るアン。


グレイはさすがに眠たかったのようで、後部座席で横になっていた。


助手席では、ニコがおとなしく丸まっている。


アンは思う。


……変だな。


砂漠地帯では、何体かキメラの姿を見たが。


ここらでは一体も見ていない。


キメラがいないのなら、誰か人間を見かけてもよさそうなのだが……。


しばらく走っていると、森林を抜けてまた砂漠地帯が現れた。


川はまだ続いているので、アンはそれに沿ってプレイテックを走らせる。


……まだ油断はできないが、思ったより安全に目的地まで行けそうだ。


アンがそう思っていると、急に車体の横から衝撃を受ける。


何かもの凄い勢いで激突されたように、プレイテックは横転した。


「な、なんだ!? なにが起きた!?」


慌てながらもアンは、ひっくり返ったプレイテックから出た。


そして、中にいるグレイとニコを外に出す。


「こんにちは♪」


若く弾力のある声。


アンが後ろから聞こえたその声に反応して、振り返ると――。


「な~んだ。大人じゃなかったのか」


そこには、緑のジャケットを着た男が、体から黒色と緑色が混じったの炎を(まと)って立っていた。

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