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イレギュラー -悲劇の子-  作者: 獅子島 虎汰
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第25章

第25話 登場人物


高原 晴翔 [たかはら はると]

 保護施設育ち、過去の記憶が曖昧。 本当は五心の第1神『邪神』。

 炎の能力を持つ。

 

衣沙羅 神威 [いさら かむい]

 保護施設育ち、自分の意志で記憶を封印→解除。『邪神』に仕える巫女でもある。

 言霊使い。本当は貴族であり言使いの王女。


咲桜 緋色 [さくら ひいろ]

 鬼の一族。過去の記憶あり。『鬼神』に仕える巫女。

 水の能力を持つ。 透とは主従関係にある。


獅子島 透 [ししじま とおる]

 鬼の一族、人と鬼の間に生まれた混血種。五心の第3神『鬼神』だがほぼ無自覚だった。

 影の能力を持つ。 


真宮 真紅 [まみや しんく]

 吸血鬼の一族。吸血鬼界の王様。

 血の能力を持つ。性別は女。


八坂 琥珀 [やさか こはく]

 吸血鬼の一族。元暗殺者であり真紅の婚約者。

 風の能力を持つ。 神威のことをずっと探していた。


相馬 出雲 [そうま いずも]

 謎が多い男。紗綾のことを"マザー"と呼ぶ。

 何を考えているのか分からない。煙草が好き。


秋月 紗綾 [あきづき さあや]

 神職の人間であり政府の上の人間。 

 神術が使える。皆の優しい母のような存在。


緋室 昴 [ひむろ すばる]

 鬼の一族で純血種。 五心の第5神『呪神』であり鬼頭精鋭部隊、零部隊隊長。

 闇の能力を持ち大鎌を得意としている。 


咲桜 翡翠 [さくら ひすい]

 鬼の一族。 鬼の姫巫女であり、第5神『呪神』に仕える巫女でもある。性別は男。

 前世の魂雛菊が残した記憶を持つ。 氷の能力を持つ。


猫村 華子 [ねこむら かこ]

 獣人の一族のネコ科。 職業は医者。 五心の第2神『天光神』でもある。

 光の能力を持つ。 戦闘向きの神ではないし本人は争いが嫌い。


風早 杏李 [かぜはや あんり] 

 獣人の一族でネコ科。華子の助手をしている。 『天光神』に仕える巫女。

 無効化‐キャンセル‐の能力を持つ。 華子の記憶は無し想いのみで華子の傍にいる。

 




「華子ちゃん、寝ないの?」

「杏李、私はまだ起きているよ。先に眠って構わないよ」

「うん…何しているの?」


杏李はパソコンにかじりつくようにしている華子の傍まで近づく。

華子の顔は真剣な顔をしている。パソコンにはとある資料が乗っていた。


「これ…邪神様の…?」

「あぁ、そうさ…きっと彼の体に起きていることがここに書いてあると思うんだ」

「でもこれって機密情報なんじゃ」

「紗綾から貰ったんだよ。気になったから有難く頂いたさ」

「紗綾さんって一体…」

「政府の人間だとそう言っていた気もするけど覚えてないね興味がない、私は患者にしか興味が湧かないからね一個人の事情なんてどうでもいいさ」

「華子ちゃん……」


華子の真剣そうな眼差しに杏李はそっと部屋を出て行った。

水を飲もうとキッチンへ向かうと談話室にはまだ明かりが灯っていた。

誰かいるのかと思い覗いてみるとそこには昴と翡翠と紗綾が暖炉の前で寛いでいた。


「……ん?杏李、どうした寝るんじゃなかったのか?」

「えっと……華子ちゃんがまだ起きてるから…」

「華子は一つのことに夢中になると離れねぇから諦めて寝たほうが先決だぜ?」

「…うん…そうする」

「おう」


そう言い戻ろうと思ったがなぜまだ起きているのか気になってしまい歩を止める。


「昴さん達はなんで起きているんですか…もう遅い時間なのに」

「あー…寝ねぇと明日に響くのは確実なんだがな、少し問題があってな」


キッチンにある時計はすでに零時を回っていて他のみんなは与えられた部屋で眠りについている。

それに傷を癒すためにも眠ることは重要だ。

深夜は心が不安定にもなりやすいなので心の安定の為にも寝てもらいたい杏李だったが、昴の前に座り紗綾の見せる神術に嬉しそうにしている翡翠の目は赤くなっていたことに気づく。

明らかに泣いた後だった。

 そうなればこのメンバーなのもうなずける。

暖かい場所に居れば心は安らぐだろうし当人にとって一番安心できる人間と傍に置いても害のない人間が揃っているのだからあとは当人の心が落ち着き眠りにつくまで待てばいい。


「不安定なんですか?」

「こいつは仕方がねぇんだ、この年になるまでこいつの中には別の魂が居たもんでよ、まだ子供のままなんだ…心と体が追い付いてこないせいでパニックになるんだ。後は夢だろうな…こればっかりは何ともしてやれねぇからな」

「巫女でしたね確か」

「ああ、緋色みたく心が鋼で出来てたら気は楽だろうに。ま、繊細なんだよな~」


昴は目の前に座る翡翠の頭を撫でてやる。

まるでさっきまでの大人の対応をしていた翡翠が嘘のように今目の前にいる彼は夜に癇癪を起す赤子そのものだとそう思った。


「よく傷ついた人に時間が解決してくれると、言いますがそれは違います。きっとこんな風に支えて傍にいて安心させてくれる人と安定が必要なんですよね…」

「……そうだな、俺はこいつの心が壊れるのを2度も見てきた、最初は兄からの拒絶だった次は…人間からの裏切りだ。そんなもん普通の人間だったら立ち上がれねぇし絶望するだろうさ。でも翡翠は立ち上がってきたその分なくしたもんも多いがな…」

「昴さん…」


昴の表情はいつになく優しくて頭を撫でる仕草も翡翠を愛おしそうに大事そうにしているのが分かる。

杏李は心が温かくなった、華子の傍でいろんな医療を見てきた壮絶なケガも悲しみも色々見てきたがここまで優しい医療があっただろうか、きっと人にも神にも誰かの存在が必要なのだ。

一人で立てても光がなければ明日へと導く天からの光がなければ歩けないきっと誰か一人でも見つけてくれる人が居たことによって救われる命がある。誰かの救いに誰かが生かされている。


「素敵です…」

「何言ってんだよ、お前には華子が居るだろう。きっとあいつならお前を光のあるほうへ導いてくれるさなんたってあいつは第2の神、全ての愁いを晴らし光の導きを携え民を導いて生きてきた『天光神』だからな、俺とは違う」

「そうですね、僕は華子ちゃんに救われたそれはきっといまも昔も変わらないです。僕は華子ちゃんが望む限り傍にいますこの命が終わるその時まで…」

「凄い信仰心だな」

「違いますこれは愛です」


満面の笑みで答える杏李に昴は大笑いする。

その様子に翡翠と紗綾はなになにと興味が湧くが教えてはくれなかった。

暫くすると、翡翠が完全に眠りについたので一安心した昴と紗綾、杏李はソファに座り一息つく。


「いつもこんな感じなの?」

「いや、いつもじゃない」

「じゃあ今日はタイミングが悪かった感じかしら?それとも環境が合わなかったのかな?」

「それはあるかもしんねぇな…」

「まるで赤子だな」

「華子」


当然現れた華子は扉の所に背をもたれさせたいた。

相当疲れているのか眉間に皺が寄っている。


「診察してやろうか?」

「精神科もやっていたのか?」

「心療内科だそれは、まぁ私が手を出すことでもないがなそれはこれからの過ごし方で変わる。あまり人の目に当てられなければきっと走れるさ今はゆっくり昴が一緒に歩いてやればいいさ」

「ありがとよ」

「ふん、だが透の育て方は間違えたな」

「痛いとこついてくんのな」

「ま、勝手に曲がっていったようなもんだろう。それよりもだ、いつまで起きているつもりだ貴様らは…医者の前でそんな愚行許さんぞ…さっさと寝ろ」

「「「はい」」」


華子の鋭い眼光にそそくさと談話室を出ていく。


「紗綾」

「なあに、華子さん」


翡翠を抱え廊下を歩く昴についていくように歩く紗綾を華子が引き留めると、手のひらにデータの入ったUSBメモリーを渡す。


「これを返そう、すまないがこの現象はちっともわからん。全てアイツのものではあるが一つ違うのは言動だな、そこに可能性があると言っても過言ではない。もしかしたら声が届くかもしれん」

「声が…」

「だから、まだ神威が生きて隣に立てている。何度も死地を潜り抜けれたということだろう」

「…ええ」

「政府は…動かんのか」

「きっと今回も見捨てるわ…だってまた生まれ変わればいいそう思ってる」


紗綾の表情は曇りきっていた。

悔しさ歯がゆさ全てが紗綾の心を満たしていく。


「次なんてないのに…できるなら過去を変えれれば…」

「それは駄目だ、均衡が乱れる。秩序が崩れ世界は崩壊する、我々が存在してる内はな…秩序である神『鬼神』が死ぬことになる。同じ終わりになるそれは避けなければいけない」

「ごめんなさい…」


紗綾の表情は俯いていてよく見えないが微かに体が震えている。

華子はそのか細い体を抱き寄せる。


「いつだって一番つらいのは見守るほうさ、何もしないのと何もできないのは違う。キミはよくやっているよ人間はいつだって立ち上がってきた"あの絶望のなか"でも国は立ち上がった前を向いてきたそれでいいんだよ、人間はみっともないくらい足掻いて生きているくらいが生というものを実感できるのだからな、泣きたいときは泣くんだ、じゃないと心が死んでしまうからな」


紗綾は華子の腕の中でボロボロと涙を流し泣いた。

華子はただ黙って背中をさすってやった、落ち着いてきたときに杏李が水を差しだす。

紗綾の心を蝕んでいた茨の棘は無くなっていた、その代わり優しい光が満ちる。


「私、少し自分でも動いてみます。何もできないんじゃないから」

「あぁ、人間側は任せたよ」

「任せて!!」


吹っ切れたように輝きを見せた紗綾は満面の笑みで意気揚々としている。

まるで希望に満ち溢れた子供のようなその表情に華子は薄らと笑みを浮かべる。

そのまますぐに行動に移すタイプの紗綾は走って部屋に戻っていった。


「華子ちゃん?」

「なに、少しあの子の意見も聞いてみようと思ってね」

「あの子?」

「私らと同じ神さ」


華子は携帯端末を弄りメールをとある人物に送ると、背伸びをしゆっくりと歩き出した。

その後ろを何も言わずについてく杏李はどこか誇らしげで微笑んでいた。



海上をひと際大きな船が漂っていた。

その船にはあまり多くない人数の乗組員と飛び切り美人な女が二人が航海を楽しんでいた。

そのうちの一人が腕につけている時計型端末が点滅していることに気づき、見てみると一通のメールが届いていた。


金色の長い髪を揺らし足早に向かったのは甲板で、そこには海のようなきれいな髪を後ろの高い位置で一括りにしている女性がいた。


「マリン!ここに行きまショウ!」

「えっ!?きゅ…急だな…まぁいいけど、どこ?」

「ここデース!」

「はいはい、行先変更!舵を切れ!」


キラキラと輝く瞳はこぼれんばかりの大きさですべてを見通すかのようだその瞳に見つめられれば、断ることはできないだろう女性は片言でしゃべる女性の手を持ち真っすぐ先を見据える。

 向かう場所に恐れも抱いていないような顔をして海を渡るのだ。


夜が明けると霧がまだ残る山地なだけあって少し肌寒い。

起きた時にはもう真紅と琥珀の姿はなかったことに気づいた神威は肩を落とした。

その代わりに二人から預かったという手紙を華子から受け取った神威は暖かい談話室で一人手紙を読む。

 その内容はとても優しい内容だった、神威のことを心配する内容と何かあったときは遠慮なく呼んでほしいという内容とともに住所まで記されていた。

何か困ったことがあれば訪ねてきてねと記された文字は琥珀の文字のようだった。


「(ありがとうございます…)」

「うわああ」

「?!」


突然の晴翔の悲鳴に我に返った神威は急いで声がしたほうに向かうとそこには金髪の女性が晴翔に抱き着いたまま押し倒しているところだった。

その後ろには呆れたように溜息を吐きその女性を持ち上げる海のような髪色をした女性が居た。


「へ……」

「ん~イジワルデース、マリン!」

「いやいや、彼困ってるよ。ごめんね大丈夫?」

「だ、大丈夫です…」


マリンという女性の手を借り立ち上がる晴翔の後姿を見て唖然としていた神威は再び我に返るとすぐに晴翔に駆け寄る。


「ハル、大丈夫?」

「あぁ…神威、大丈夫だよ少しびっくりしちゃって尻餅着いただけだから」

「ほんと…?…えっとこちらの方は…」

「あ!カコいますカ?」

「何してんだい玄関先で喧しいね、ロゼッタ」

「カコ~!お久しぶりネ~」


廊下の奥から白衣を着た華子が現れるとロゼッタと言われた女性の顔が益々明るくなる。

マリンに抱えられながらも手をぶんぶん降っている様子を見て華子はげんなりした様子でロゼッタのおでこにデコピンをする。


「こんな朝っぱらに来いなんて一言も言ってないのだけど?」

「そんなこといわないでくだサーイ」

「あの…華子さんその方は…?」


騒ぎに気付いたのかいつの間にか全員が玄関先に集まる形となってしまった。

その中で昴と透が何かを察したのか二人揃って嫌そうな顔をしたのを見たロゼッタはマリンの手を振り切って二人に飛び付く、昴は見事に避けたが代わりに透が餌食になってしまい、ロゼッタを顔面で受け止める形となった。


「やーーん!スバル!トオル!ひさしぶりデース!」

「ロゼッタ……」

「離れろ」

「トオル相変わらず冷たいデース…」

「いい加減にしろ怪我人を増やす気か」

「ゴメンナサイ」


透からロゼッタを引きはがす華子の笑みはとても怖かった。

途端にロゼッタは大人しくなる。


「ロゼッタ、とりあえず自己紹介しろ」

「ハーイ!私、ロゼッタ!よろしくネ!」

「ちゃんと身分を明かさんか…全く…、このうるさいのはロゼッタ、我々五心の第4神『愛神』だ」

「あ…私は、その愛神の巫女のマリンです」

「みなさんよろしくネ~!」


突然現れた神と巫女は海のにおいと共にまるで荒れ狂う波のような騒がしさで呆気にとられるものと溜息を吐くもので見事に反応が分かれてしまった。

波は全員の心をさらっていって暫くは帰ってこなかった。


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