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paradox 受け継がれる可能性  作者: ナカヤ ダイト
進級と転入生 編
48/54

ゴールデンウィークはハワイ旅行 8 再戦B

「今度は、俺の番だ」

 必死に思考をクールに保とうとする晋二とは裏腹に、この状況を完璧に把握しているマオは、膝を軽く曲げ前方に向かい加速した。

「くッ」

(ダメだ、切り替えるんだ。たとえ、力や創造スピードでは負けたとしても、経験なら俺の方が圧倒的にまさっているんだ)

 晋二は、迷いを断ち切るかのように首を左右に振ると、正面から最高速で迫って来るマオを、幾多の任務も一緒に乗り切ってきた両手のダガーナイフで迎え撃つ。

「…… 」

(晋二のナイフの軌道、その延長線上に俺の武器があって、それを掴むイメージだッ!! )

 マオは、晋二の太刀筋を予測し創造した武器を交える。

 その度にマオの武器は、粉砕されるが瞬間創造ソニックで、次の武器を瞬時に創造し、晋二の攻撃のことごとくを打ち払い続けた。


「…… あんな戦い方見た事がない…… けど、五木も前のように押されていない」

 まばたきをする事すら忘れ、マオと晋二の戦闘に見入っていたユウキは、思わず心中を吐露とろしてしまう。

「あぁ、今の五木は両手だからな。あの手数を、左手1本で耐えしのいでる瑠垣も大概たいがいだが、そろそろ」

 右隣に立っているユウキが口を開くと、岸田は全力を出した晋二に対し、マオがほぼ互角に戦えたという事に満足した様子で答える。

 両手をリズミカルに使い、多彩な攻撃パターンを駆使する晋二に対し、少ない手数でそれに対応しなければいけないマオは、次第に防戦一方になっていき、経験の差は色濃く浮き出てきた。


「…… ッ」

(さすがに、本気を出した晋二は強いな。両手になった事で攻撃テンポの速さが、前の比じゃない)

 徐々に加速していく晋二の動きに、マオはじわじわと追い詰められていく。

「うッ! 」

(なんだ、この重さは? これが本当に圧縮率17% の武器だというのか? そろそろ決めにいかないと、俺のナイフが危ない)

 マオの使用率がこもった剣を幾度となく受けた事により所々、小さく欠けはじめたダガーナイフと、しびれが強まっていく両手を気にした晋二は、マラソン選手がラストスパートをかけるかのように、攻撃速度をもう1段階加速させた。

「…… 」

(更に速くなるか。だったら)

 とうとう、晋二のスピードに追いつく事が出来なくなってしまったマオは、それまで下げていた右腕を動かす。


 2本のダガーナイフを同時に弾き返したマオは、晋二に右肩を向けるようにして静かに立っていた。

「まさか、ここまでとはね」

 攻撃の手を止めた晋二は、荒れた息を整えながら口を開く。


「…… 」

 無言のまま晋二の様子を伺うマオの右手には銀色に輝くロングブレード、左手には大太刀が握られていたが、彼の武器と接触したそれらは間も無くして、跡形もなく砕け散った。


「これは…… 」

(あいつ、俺や五木と同じ武器の同時創造も出来んのか!? 五木には、高速創造クイックという途轍とてつもない才能があるが故に見落とされがちだが、2つ以上の武器を同時創造する事が出来る。これは、司書の中でも扱える者が少ない超高難度の創造スキルだ。それを瑠垣のヤツ、戦闘中に使うとは)

 岸田は、自分の想像を絶するマオの成長速度に、今後どのようにして彼を導いていけばよいのか、見当がつかなくなってしまい困惑していた。


「あ゛あァァァァッ」

 晋二は、防御を捨て玉砕覚悟でマオに突進を仕掛けた。

 そして、再び両者は激しく攻撃を打ち合う。

 マオも両手になった事で、2人の実力は完全に互角となったように見えた。

「はあァッ!! 」

(単純なミスだよ。左利きの君は、前の実戦授業でもそうだったけど、右手の動きがぎこちない。だから、今のマオの太刀筋は読む事が出来る)

 晋二は、打ち合いの中で再び後方に距離を取ると、両手を胸の前でクロスさせ、マオ目掛けて急加速した。

「くッ!? 」

 右腕を使った際に生じる、その隙を完璧なタイミングで突かれたマオは、その分だけ反応が遅れてしまう。

「なっ武器を!? 」

 猛スピードで直進する晋二に対し、マオは在ろう事か武器を捨てた。

「壁? 」

 突然、目の前に出現した青白い壁によって晋二の視界が覆い隠される。

「くッ!! 」

 マオが創造した格技場の壁と同色のアイロン型の盾によって視界を奪われた事に気付いた晋二は、その盾をダガーナイフで両断した。

「マオはどこへ? 」

 粉々に崩れゆく盾の向こう側には、先程までいたはずのマオの姿は無かった。

「ハッ」

 消えたマオを探す晋二の動きが停止した。


「終わりだ」

 マオは、晋二の右側でかすみの構えで大太刀を握っており、その刃先は彼の首元に向けられていた。


「…… 負けたよ」

 晋二は、ヒビだらけのダガーナイフを両手から滑り落とし戦意がない事を示した。

(そうか、単純なミスをしたのは俺だったのか。マオは、俺が右手の弱点を突いてくる事まで計算していたんだ…… 完敗だよ)

 全力以上の力を尽くしても勝つ事が出来なかった晋二は、どこか清々しい気分になり口角を上げた。

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