表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生命(いのち)の継れ  作者: せいちゃん
9/14

張りつめる一日

その後に心配そうに、タタオとひょろと出口さんが休息所から出て来て、こちらへ向って来た。

「大丈夫か?気持ちが悪そうに休息所から二人で出て行ったけど…」とタタオは、心配そうに私達を見ていた。

「何とかね…それで、タタオとひょろと出口さんは、どうするの?この村に滞るの?」と私は、三人の顔を見て言った。

「僕は、通訳者でもあるし、この村に興味が持てたし…だから、ここに滞在するよ」とタタオは、真剣に言った。ひょろと出口さんは「皆がここに住むっていうのなら」といって、不安そうにしていた。

「わかった…私もここに残ってこの村の人達に笑顔を分け与えて元気な村にしようと思ったの…ね?里美」と私は、里美を見て、ウインクをした。

「そっそう…」と里美は、自信あり気ではなかった。するとタタオが「この村の観光スポットがある事をきいてみたら、一ヶ所、遺産として登録をされている所があるみたいだ。詳しくは、案内人のメリーネさんという人が知っているというから、僕が…ちょっと聞いて来るから…少しだけ待ってくれ」といって一つの家の方へ向って入っていきました。ひょろは「なぁ…本当にいる気かよ」と弱々しくなって私に聞いた。

「わっ私は、儀式が見たいから、滞る訳じゃないからね」と私は、焦って言った。隣にいた里美が肩を叩いて、耳元で「どうしたの?急に自信を取り戻して」と言った。

「里美が自信を付けてくれたんじゃない。じゃないと先の事なんて、言わなかったわ。あの子の為に滞在しようと思ってね」と耳元で私は言った。

「ごめん」と里美は、何でか、謝った。

「えっ?何で里美が謝るのよ。微笑んでくれないと、て慰めてくれたじゃない」と私は、いつものように、笑顔でそう言った。

「愛…そうだよね。さっき言ったばかりなのに…全く私が落ち込んじゃうと…愛に慰めた意味がないのに」と里美は、自分自身の頭に手をおさえていた。ひょろが「何をこそこそと二人で話しているんだよ」と疑問に思って言った。私と里美は、「何もない」と同時に言葉を揃えて言った。そのあと、私達は、見合わせて、クス笑いし合いました。

すると、タタオが、奥の方から誰かを連れて来ました。どうやら、女の人で服装がこの村の民族衣装の薄肌色のヒラヒラのスカートに、ヒラヒラの花柄をまじえた薄黄色の服を着て、もう一人、子供をうしろに連れて、私達の前まで来た時に丁寧にお辞儀をしました。私は、ついそれに、合わせてお辞儀を返した。

「この人…ちょっとこっちにきて…」と後ろに隠れて恥かしそうにしていた子供にタタオは声をかけた。日本語が、どうやら、通じる二人で、女の人が、後の子供の手を引いて、姿を見せた。

「コッコン…ニチハ」とカタコトでその女の子が言った。私は、どこかで見た事があるように…目を細めて、見ていました。

「この人が、僕達が行くところに案内をしてくれる、メリーネさんで…この子が、血縁者ではなくて、今は、メリーネさんの子として育てているメリッカといいます」とタタオが紹介して言った。メリッカという子は、モジモジさせながら、親族ではない養子ようしのメリーネさんという女の人にしっかりとくっついて、親子の様にメリーネさんも頭を撫でていた。 「オ…ネエ…チャン…」とメリッカという子は、私に声をかけた。私は、自分に指を指して、私?という様な素振りを見せた。メリッカはという子は、「ウ…ン」といって頷いた。

「譲ってくれた…女の子?」と私が言ったけど、メリッカは首を傾げていた。タタオは、通訳して言った。そうすると、メリッカは、「ソウ」と言っていた。私は、ゆっくりと喋って「さっきは…ありがとうね」と言い、お辞儀した後に笑顔を見せた。するとメリッカは、微笑んでいた。

「私は、メリーネといいます。日本語は、話す事ができまして、私の片親がアジア人でした…日本人です」とメリーネさんは、本当にペラペラと話されていました。私は、驚いた顔を思わずしてしまいました。出口さんは、「よろしくお願い致しますわ」と相変わらずお嬢様の口調だった。メリーネさんは、出口さんの方を見てお辞儀をした。とりあえず、一人一人、ご紹介をしていきました。

「私は、花村 愛といいます。愛と呼んで下さい」そしてひょろが「俺は、高山裕木といいます」とひょろがいった後にタタオが、「ひょろと呼んであげて下さい」と付け加えた。横目でタタオをひょろが見ていた。

「私は、菊井里美といいます。里美と呼んで下さい」

「私は、出口 薫と申しますわ。よろしくおねがいしますわね」と四人が次々と言っていきタタオが「の五人です。案内をお願いします」とお辞儀をした。

「わかりました。それでは、こちらへ来て下さい」とメリーネさんが歩き始め私達は、それに続いてついて行きました。メリッカという女の子は私の手を取って握りしめて、私の顔を見ていたので私は、微笑んで返してあげました。すると、メリッカも微笑んで一緒に歩きました。何だろう…この感じは、健治のあの大雨の中の帰り道のように、心が安まってしまう温かみ…とついついひたってしまっている内に元々の軍事用に使われて来たジープという大型車が四台程、とめてある所に着いていました。

「この車に乗って、観光スポットに向かいます」とメリーネさんが言った。スポットという言葉のアクセントが非常にスラスラとアメリカ人の様に言っていたのが、気になった。というか…注目は、そこではないけども。私達は、ジープという車に乗って、乗り上るのに苦労した。それは、普通車よりも大きく、段差が一様、付いているけど、大変なのは、確かでした。

ジープ車に、皆が乗って、私の座っている座席の膝の上にメリッカが乗った。私は、その子に軽く両手で抱えていた。

「それでは、ご案内致します。場所は、山岳の麓に向い、そこにあります遺跡がそうです。着く頃には、夜となってしまいます。そこで一晩過ごします。良いですか?」とメリーネさんが私達に大きな声で観光内容を話してくれました。遺跡の夜って…何だか怖そうと思った。私の顔は思案しあん顔の顔つきとなっていました。タタオは、「勿論です。どうぞ、メリーネさん」と誰一人と返事は、しておらずにいたのに勝手にタタオが進行させていた。 すると直ぐに、もの凄いエンジン音が村中に騒音となってしまわないかと想えてしまう程の大音おおおとでした。そして、私達は、観光スポットといわれる遺跡へ向った。段々と夕方になって陽が沈む頃となり、目的の遺跡へ着いた。

そこは木々に、覆われた中に一つの建造物があって神秘な感じだった。木々の風の揺れ動く音が、私には、導かれているようにうねりで聞こえた。

「ここで、一晩過ごしましょう。中に休むところはもうけられていますから、安心して下さい」とメリーネさん、遺跡近辺までジープ車で来てそれから、ジープ車から降りていった。出口さんや里美、ひょろとタタオは、それに、続いてメリーネさんの方へと向かおうとした。メリッカが私のいていた手を放して降りて、私に声をかけた。

「コッチ…へ…」とはしゃいで、呼んでいた。私は、ハッとなってメリッカがいないのに気付いて横を振り向くと、手を縦に振っているのが、見えたので直ぐに降りて、メリッカと手をつないで、メリーネさんがいる所へ行った。

「おそいぞ」とひょろに注意された。

「ごめん、ごめん」と私はそう言って、メリーネさんの話を聞いた。

「ここは、ウェルストニアの最古の遺跡として遺産登録をしていますウェルスグリード遺跡です。ここには、昔のウェルス人の様子が、描かれていたり、昔の資料があります。是非、知っていただいて下さい」とメリーネさんは、リュックの中にある見た事のない枝を取り出して地面に叩き付けて、その枝の先に火がともされた。

「それは…何ですか?」とタタオが興味津々に言った。

「この村に唯一、生えています木の枝です。私達は、ファイアウッドと呼んでいます。自然の力なのでしょうね。どこかに叩いただけで中の物質が反応して、火が灯されます」とメリーネさんは、その枝を見ながら言った。 「世の中には、まだまだ勉強する事が一杯だな」とタタオが考え込んでしまいました。皆は、それを見て、興味が特になかったので、メリーネさんについていくのだった。

遺跡の中に入ると、周りが暗闇で唯、松明たいまつだけがその暗闇を消していた。壁には、レンガで造られた建造物で、一面が、レンガに囲まれて、これのどこかに壁画があるとメリーネさんが言っていました。すると、薪が予め一空間ひとくうかんで広い所に置かれてありました。メリーネさんは松明たいまつで薪に火を灯した。徐々にその火は、大きな火よりも大きく炎となって一瞬に一空間が明るくなって小さなレンガの破片はへんがハッキリと見える位になりました。

その炎の周りに円状となって座り、メリーネさんが、そこで長々と話されました。

「ウェルス村は、このウェルストニアに来てから、知っていましたか?ウェルス村は、最古の村とされ、未だ他の村の民族は、ウェルストニアから移動して離れてしまいました。それは、昔、この最古の村は、災厄さいやくがあると思われていた様で、確かに、ウェルス村には、謎の疫病えきびょう流行はやっていました。次々と病で倒れていき、発熱、嘔吐、頭痛、胃炎等、死者が多数と出ました。ですが、最古とされ、文化遺産とされた遺跡もあります、この村を離れる訳にはいきません…その為、考案した人が神鷲しんじゅうウェルス・エブラ王だった。エブラ王の羽をたたえ、奉られていれば、村を救って下さるという。しかし、疫病が治まるどころか、年々に伝染患者が増加して、それでは、村を離れなければならないと村長が言い告げていました。すると、一人の若者が、私達の一部を捧げることができれば災いはなくなるのでは?と言った人がいました。昔、エブラ王は、人の命を人にあたえると災いは失せる。という伝えがありました。人の肉までもを取り、生きぬくという強い信念があったのです。しかし、それをどう一部、取り除くというのか…と村中で考え、結果、儀式というところに進展していき、さっそく一人の者を犠牲とさせてしまいました。すると、後日に、その親族は疫病や長寿を犠牲者が生かせてくれたと称えられて、今にいたった訳です。あまり、この話をしてしまいますと、私も苦しいですが、どの様な成立ちで至ったのかを教える必要があったのです。あなた達は、私達を只、元気や勇気を付けてくださる為に、滞在してくれていると知った上です」とメリーネさんは話された。それは、私には、到底、村を変える為来りは…私には、難しいのかなと思いつめていた。村人の苦節な心が、かなわないと思っていたからでもあった。里美にも、はなはだしい悲しみを抱えてみえた。出口さんは、また胃の辺りを手であてていた。ひょろは、腕を組んで考えていた。タタオは、何やら紙に書いていた。とても真面目だった。大人になっても変わらない性格で口をポカンと開けるくせを今ももっていた。見ると、ついつい、どのような状況でも、笑ってしまう程、可笑しな顔をしていた。するとまたリュックの中からフレームが大きくて液晶で組み込まれている物を出して、メリーネさんが上にあったボタンを押して私達に見せた。それは、壁画の画像でした。

「明日、見てもらいたいけれども。話がつながりそうですから、先に、私が言っていましたウェルス人とその資料といわれる壁画を見せます」とみてみると、何か、黄、桃色まで数々の色彩で描かれていて、それは高価な絵画と私の目では思っていた。何やら、王族の人が家来の様な人々を槍で突き刺していて、家来は、土下座の様な座り方で手を前へさしのべていて、家来の後に家来と何十人とがつらなっているように描かれていた。

「この絵は、王であったウェルス・エブラ王の前に伏せて拝み、あなたの言う事に、反対しませんよ…あなたの思うがままにおつかい下さいと、それ程に、地位の較差かくさが違う身分のウェルス人だったのでしょうね。先頭のウェルス人と見られる人は、頭蓋骨ずがいこつまで槍で刺されてしまっているのね。とても居た堪れませんね。昔は、ウェルス人と対立していたメホマド人が対戦に打ち勝って一部の領土をとられてしまった挙句のあまり良く見ずに、今のウェルス村にも占領されてしまったの。エブラ王は、メホマド人と思われるわ。恐らく…メホマド人によって、感染していった疫病だと思っています。そのような残酷な絵を誰かがこっそりと描いていたのですね」とメリーネさんが悲しそうに話してくれていました。私は、しばし、黙っていました。とても笑う事も、励ます事もできない状況だったからです。メリッカを見ると、俯いていました。それ程までに、さなければいけなかった儀式だったとは、私の思いを遥かに上方の山の頂の辺りにいる程、違っていた。変えられるが変えられない民族の伝統の舞台裏がそうであるならと思うと、とても私には、住めるような村ではない…けれども、故郷となるメリッカとメリーネさんは、その様な手段はない…いやっできない…そんな思いが頭の中でグルリと駆け巡っていた。

しばらくして、炎の辺りでシュラフをメリーネさんが人数分、用意をしてくれていました。ひょろと出口さんと里美は、直ぐにシュラフに包まって寝始めようとしていました。タタオとメリーネさんは、奥の方で話し合いを私には聞こえないようにしていました。メリッカは、私の座っている横に同じ様に、座っていました。しばらくは、ただ…何も話さず壁をじーっと見ていました。

「ワタシ…ココノ…ムラガ…ダイスキ…デモ…ギシキハ…キライ。イヤナ…オモイデ…アルカラ」とカタコトでメリッカが急に話した。

「どうして、嫌な思い出があるの?」と私は、手振りをして話した。

「ワタシノ…。ナンデモナイ…デモ…イヤナ…オモイデガ…アルノ…。アイ…オネエチャン…ワタシ…ドウスレバ…イイノカ…ワカラナイ」とメリッカは、困った顔をして私を見詰めていた。私は、メリッカの言った愛お姉ちゃんが私の心に響いて伝わった。何か思い詰めている…だとしたら、何かと、まるで我が子の様に、昔の幼い私の様にイヤな事があるのか、とにかく必至になって考えていた。 「オカアサン…オトウサン…」と沈んだ表情になってしまいました。

「お母さんとお父さん?両親は…生きているの?」と私は、何だか分らないけども、聞いてみた。

「オカアサンハ…イキテイル…ケド…オトウサンハ…エキビョウデ…ナクナッタ…」とメリッカは、一生懸命に日本語を私に言っている事を感じて、

「もしかすると…お母さんは…?」と真相に迫ってしまい、メリッカは、何も言わなかった。「ごめんね、でも、私は、メリッカの事を…笑顔…ね?喜んでもらうために、ウェルス村を少しでも、心でも癒されたらな…って私は思うのよ。だから、メリッカが喜ぶ顔をしてくれないとね…」と私は、故事付けるように話をした…とにかく、何故か安心する想いと信じられる想いを持ってほしかった。唯…ただそれだけ…それだけにしか支える事ができないと、私は思っていた。私は、メリッカの言いたい事も勘付いてしまっていました。だから、メリッカに強く、幼い身体をギュッとおさえて抱きしめた。母親の様に、抱え込むつらさを取り除きたい想いで…抱きしめた。メリッカは、目を閉じて、私の背中を包むようにして、苦しい思いをぶつけている様に、メリッカもギュッとして、眼からの一滴二滴の涙が炎の明かりによって光を与えて何故か濁った水晶のように見えた。私の思っていた様に、思い詰めていた事が…この子には、あったんだね。と私自身に話し掛けていた。私の幼い頃と健治の苛められていた頃とに比べてしまうと…比べようがなく、苛めも苦しいけど。でも、生命を迫られてまでも強気でいられる方が、何だか、苦渋くじゅうなのかなと思えてしまってならなかった。

〈ねぇ…どうしたら、この子を救えるのかな…この村から救う事ができるのかな…教えてお母さん…あの時のように…言葉を…話をして下さい…私に…。〉

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ