初旅行
「Attention Please。まもなく飛行機は、空港を飛び立ちます。」とアナウンスが流れた。
「あっトイレトイレ」とひょろが立ち上って、急いで私達のいる座席から後部の方へ行った。
「まったく、ひょろは、おちつきがないんだからー」と私が仕方がない渋面な顔つきをして言った。
「子供みたいね」と里美は、クス笑をした。
飛行機が動き出そうとしてエンジン音が聞こえた時に「わりぃー。女の人に聞いてトイレの場所がやっと分かった。もうすぐで迷子になりそうだったぜ」とひょろは、そう髪をかきながら言った。
「ひょろ…迷子って…おかしいでしょう?」と私は指摘した。
「どうしてだ?」とひょろが分かっていない顔をして言った。
「親切にお手洗いマークが書かれているのは、気づかなかったのかよ」とタタオがその答えをひょろに言って座らせた。
「もう、もれそうだったからよー」と言い訳をして言って、素振りをみせた。
「それに、女の人ではなくって、キャビンアテンダントですわ」と出口さんが常識知らずと言わんばかりに外方向いて窓から風景を眺めていた。
「お前ら…俺をからかうなよ!」とムスッとした顔をして、自分のオーディオプレイヤーを操作しながら付属のイヤホンを耳に入れて音楽を聴いていた様だった。私は、呆れてためいきをついた。
「ねぇ、愛、海外旅行って初めてなの?」と里美がこっちの顔を伺いながらワクワクとした面差しで言った。私は、里美の声が聞こえていなず、窓から外を見ていた。
「ねぇ」と私の肩を叩くと驚いてやっと里美がこっちを向いて話そうとしている事に気が付いた。
「え?何?」と苦笑いで言った。
「もう!愛、ポカーンとしてどうしたの?」と里美は、心配そうに言った。
「あー。大丈夫大丈夫、こんなにさー、のんびりした事、最近というか、ずーっとなかったなーて思ってね」と思い浸って里美に言った。
「そっかー。愛は、子供がいるものね」と里美は、そう言って窓の外を同じく見た。
「本当に、色々と大変だったわ。私一人で、成人になるまで育てて来たからね。それは、並大抵のものじゃなかった…思ってた以上に苦労した…でも、こうして、健治から離れて、私だけ羽根を伸ばしていいのかなと思うようになってね」と頬杖をついて、私は、口をカクカクさせながら言った。
「健治?」と里美がまた私の顔をみて疑問視していた。
「ああ、健治は、私の子供の名前は…夫とは、もう何十年と前に別れた。天下りをし過ぎて、もう飽き飽きになってね。少しでも立派に育ってほしいように、見守り続けていたんだけどね…急に、一人暮ししたいとか、健治が言ってね」とぐったりとするように手を伸ばしていた。
「何だか、本当に大変そうなのね。子育てって…。私、保育士をしているけど、それ程、大変って思わなかった。で…心配で仕方がないの?」と里美は、伺った。
「うーん。もう大人になってるんだけど、心配しちゃうのよ。健治自身は、いいって、っていうけどね…母性本能なのか、ほっておけないのよね」と私は、同じ体勢で言った。
「なるほどね。難かしい問題ね…。でも、信頼すれば、いいんじゃないの?愛のお母さんが言って話していた通りのままでいいんじゃないの?『相手を信じなさい。自分を信じなさい。肝胆相照』って言葉だったよね?」と里美は、笑顔で私に訴えるように聞いた。 「肝胆…相…照…」と私は、思い耽った。その後、里美は、また窓の外を見て雲をじーっと見詰めていた。
気が付くと私は、眠り始めてしまっていたらしく、もうウェルストニアへ着陸していた。そんなにも深い眠りについていたのかなと思いながら、立とうとすると頭がクラクラとして上手く立つ事が出来なくて、飛行機酔いをしてしまったのか、フラフラと旅行鞄を取ろうとしてもそれも上手く取れずに、里美が変わりに持たせてくれた。
「大丈夫?」と里美は、心配そうに私の顔を伺った。
「ありがと…う。うっ…ちょっと…フラフラする」と私は、気持ち悪そうに、口を手で覆っていた。
その後、私は気を失った。
どうやら、ひょろが私を背負ってくれていた様で、私が気が付いた頃には、どこかのホテルのベッドの上で寝ていた。
横には、ベッドが一つ空いていて、その向うに出口さんが寝ていた。
一体、ここは…?と私は思って、お手洗いから誰かが出てくるのがみえた。
起き上がって私がお手洗いの手前よりで待っていた時、里美が出て来た。里美は、ビックリした表情で 「愛…大丈夫?もう気分は、いいの?」と私を心配してくれていた。
「もう全然平気…それにしても、ここは…どこ?」と私は、知りたい事を言った。里美は、「ここはね、ウェルストニアの郊外地区のリトアっていう市街地だってタタオが言っていたよ。…ちょっとこっちに来て」と、里美は、出口さんを気にして周りをキョロキョロとしながら、部屋を出て、ロビーにまで私の手を引っ張って連れて来られた。里美は、そこでも周りをキョロキョロとさせて私の両手を握って言った。
「あのね…」と恐る恐る里美は言った。
「飛行機からの出来事なんだけど…愛は覚えてないよね。気を失っていたから…」と私には、何が言いたいのか、わからなかった。でも、何か緊張感を漂わす顔つきで見ていた。 「ウェルストニアについた時に、普通は、旅行案内人がいる筈だったんだけど…どこにいるのか空港の玄関口で、案内人を探していても、その人らしい人は、見当たらなくて、とにかく、タタオがウェルストニアの周辺地図は、所持していたらしくて、何だか仕方なくリトアに行けば、観光情報が見つかるって、タタオを信じてみて行ったら、ここのホテルで休憩にする話になった訳なの」と状況を話してくれた。
「タタオとひょろは、どうしているの?」と私は里美に話した。
「違う部屋で寝ていると思うよ」と里美が教えてくれたので、私はタタオとひょろのいる号室に急いで行ってノックした。
「はい」と中からひょろが出た。
「おっ花村か…中へ入れよ」と中へ通された。
中に入ると、タタオが起きていて、地図を見ながら、調べていた。
「タタオ…里美から聞いたんだけど、観光案内人が待っていなかったってどういうことなの?」と近づいていき、焦りながら言った。
「僕に聞いても、どう仕様もない事だろ?僕は、迂闊だった…それは間違いはないよ。でも…観光する内容のスケジュールを見て、どこを周るのかは、わかったよ。」とタタオは言った。迂闊だったというのは、旅行会社のプランコースが格安プランの二泊三日の旅費などは、通常の有名な旅行会社よりも確かに安価だった。私は、確かにそこは行く前から、気掛りだった。恐らく、観光案内人のいないプランでどこでも気楽に旅行ができますよという事だった。
「市街地リトアでの宿泊は、当たりだ。で、その次は、リトアからご自由散策と書いてある。恐らく次の日…つまり今日となるが、宿泊代は、実費という事だ。そこで、これからは、僕のプランで、周るのは、どうかな?」とタタオは、悔しかったのか、自己プランを言い始めようとした。でも私は「ちょっと待って、里美と出口さんも把握しないといけないよ。」と止めて言った。
「わかった。それじゃあ、連れて来てくれ。」と何か都合が悪いのか、嫌な顔をして、私にタタオは、命令をした。私は、その嫌みな態度は気にしずに、元の部屋に戻った。里美と出口さんを直ぐに呼んで、ひょろとタタオの部屋まで連れてきた。
「良いか?僕のプランに変更して、周ろうと思っているが、皆は、どうする?」とタタオは皆を見て、確認を取ろうとした。皆の内、里美は、質問をした。「どういう事?プラン変更って何なの?」と理解ができていなかった。
「格安プランだったから自由散策という日程にされちゃっていたって事。それでタタオが改めて、タタオの行きたい観光スポットへ行くというプランを考えていたらしいのよ」と里美に説明をした。
「…わかったわ」と了承を得た。
タタオは、直ぐに「…リトアから集落地ウェルス村…丁度、リトアから北部に位置する小さな村という事だが、一様、観光スポットになっている集落地と聞いた事がある。そこで、謎の行事が毎年行われているという。一度、僕の研究の為に、お願いだ。…同行してくれ。」と両手を合わせて、頭を下げた。ひょろと私と里美と出口さんは、見合わせて、友達のお願いだったからという事で、一致団結した。
「ありがとう!」とタタオは、何度も頭を下げて本気のようだった。これが目的のためだったのかなと私は、薄々と勘づいていた。
出口さんは、それを聞いてから直ぐに部屋の方へ戻って行った。ひょろは、私の顔をじーっと見て、「何?」と私が聞くとひょろは、「お前…倒れてから俺が背負っていってリトアまで運んだけど、お前…重いな」とひょろが言った言葉に痛感を感じた。私は、直ぐに「おっ重いって、失礼ね!女性を背負えたんだから良いでしょ…失礼な事を言わないで!」と外方向いて私は、イライラとした。
「ごめんよ…それにしても…寝顔は…かわいかったな」と言って照れながら下を向いたひょろの言葉に反応して、私は、ひょろを振り向いて、睨みつけた。後から、恥かしくなって、里美の手を引張って、部屋を出た。そこから、ひょろとは、一切、口を聞かなかった。ひょろは、がっかりとして、言い過ぎた事に、反省していた顔をするが、私は、許しはしなかった。痛い所を突かれたからだった。どうして、そう本人の前で堂々と言えるのか信じられなかった。里美は、「まあまあ」と私を慰めようとしたけど、ムスッと頬を膨らませて私はいた。タタオは、「あの時にあのタイミングで言うのは、不味かったぞ」とコソコソと言っていたが私には、それが筒抜けだった。
「全部、聞こえてるわよ、タタオ」と私は、ムッとしたまま、口をあけて言った。
そう私が剥れながら歩いている時には、リトアの街を越えて、タタオが言っていた謎の行事が行われるという集落地ウェルス村に到着をしていた。周りの景色に私は、圧倒された。その景色とは、広大な野原と山岳に囲まれて地形にポツンと村が淋そうに建ち並んでいた。木製でウェルス村と私には、わからない文字で書かれていた。
私は、スッカリ、イライラしていた事を忘れ、口を開けて山々の方を見ていた。
「すごいキレイな所ね」と里美は、笑顔でワクワクさせながら私に言った。
「そうね」と私は、微笑んで、里美を見た。それを見ていたタタオとひょろは、安心した表情になっていた。出口さんは「もうお足が痛いのですけども、どこかに憩う所とかはないのかしら」と膝辺りの部分をさすっていた。 「わかった。ちょっとここの村の村長と、話し合って休憩所をどこにあるか聞いてくるから皆は、待っていてくれ」と自信有り気に、タタオが言って、ウェルス村の方へと走って入って行ってしまいました。
私は、不思議に思って、何でだろうか、この村にとても興味があるというのか、気になっていた。私達は、只、タタオが戻ってくるのを待っていた。




