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生命(いのち)の継れ  作者: せいちゃん
7/14

初旅行

Attentionアテンション Pleaseプリーズ。まもなく飛行機は、空港を飛び立ちます。」とアナウンスが流れた。

「あっトイレトイレ」とひょろが立ち上って、急いで私達のいる座席から後部こうぶの方へ行った。

「まったく、ひょろは、おちつきがないんだからー」と私が仕方がない渋面じゅうめんな顔つきをして言った。

「子供みたいね」と里美は、クスわらいをした。

飛行機が動き出そうとしてエンジン音が聞こえた時に「わりぃー。女の人に聞いてトイレの場所がやっと分かった。もうすぐで迷子になりそうだったぜ」とひょろは、そう髪をかきながら言った。

「ひょろ…迷子って…おかしいでしょう?」と私は指摘した。

「どうしてだ?」とひょろが分かっていない顔をして言った。

「親切にお手洗いマークが書かれているのは、気づかなかったのかよ」とタタオがその答えをひょろに言って座らせた。

「もう、もれそうだったからよー」と言い訳をして言って、素振そぶりをみせた。

「それに、女の人ではなくって、キャビンアテンダントですわ」と出口さんが常識知らずと言わんばかりに外方そっぽ向いて窓から風景をながめていた。

「お前ら…俺をからかうなよ!」とムスッとした顔をして、自分のオーディオプレイヤーを操作しながら付属ふぞくのイヤホンを耳に入れて音楽を聴いていた様だった。私は、あきれてためいきをついた。

「ねぇ、愛、海外旅行って初めてなの?」と里美がこっちの顔をうかがいながらワクワクとした面差おもざしで言った。私は、里美の声が聞こえていなず、窓から外を見ていた。

「ねぇ」と私の肩を叩くと驚いてやっと里美がこっちを向いて話そうとしている事に気が付いた。

「え?何?」と苦笑いで言った。

「もう!愛、ポカーンとしてどうしたの?」と里美は、心配そうに言った。

「あー。大丈夫大丈夫、こんなにさー、のんびりした事、最近というか、ずーっとなかったなーて思ってね」と思いひたって里美に言った。

「そっかー。愛は、子供がいるものね」と里美は、そう言って窓の外を同じく見た。

「本当に、色々と大変だったわ。私一人で、成人になるまで育てて来たからね。それは、並大抵なみたいていのものじゃなかった…思ってた以上に苦労した…でも、こうして、健治から離れて、私だけ羽根を伸ばしていいのかなと思うようになってね」と頬杖ほおづえをついて、私は、口をカクカクさせながら言った。

「健治?」と里美がまた私の顔をみて疑問ぎもんしていた。

「ああ、健治は、私の子供の名前は…夫とは、もう何十年と前に別れた。天下りをし過ぎて、もうきになってね。少しでも立派に育ってほしいように、見守り続けていたんだけどね…急に、一人暮ししたいとか、健治が言ってね」とぐったりとするように手を伸ばしていた。

「何だか、本当に大変そうなのね。子育てって…。私、保育士をしているけど、それ程、大変って思わなかった。で…心配で仕方がないの?」と里美は、伺った。

「うーん。もう大人になってるんだけど、心配しちゃうのよ。健治自身は、いいって、っていうけどね…母性本能ぼせいほんのうなのか、ほっておけないのよね」と私は、同じ体勢たいせいで言った。

 「なるほどね。難かしい問題ね…。でも、信頼すれば、いいんじゃないの?愛のお母さんが言って話していた通りのままでいいんじゃないの?『相手を信じなさい。自分を信じなさい。肝胆相照かんたんあいてらす』って言葉だったよね?」と里美は、笑顔で私に訴えるように聞いた。 「肝胆かんたんあいてらす…」と私は、思いふけった。その後、里美は、また窓の外を見て雲をじーっと見詰めていた。

気が付くと私は、眠り始めてしまっていたらしく、もうウェルストニアへ着陸ちゃくりくしていた。そんなにも深い眠りについていたのかなと思いながら、立とうとすると頭がクラクラとして上手く立つ事が出来なくて、飛行機酔ひこうきよいをしてしまったのか、フラフラと旅行鞄りょこうかばんを取ろうとしてもそれも上手うまく取れずに、里美が変わりに持たせてくれた。

「大丈夫?」と里美は、心配そうに私の顔を伺った。

「ありがと…う。うっ…ちょっと…フラフラする」と私は、気持ち悪そうに、口を手でおおっていた。

その後、私は気を失った。

どうやら、ひょろが私を背負せおってくれていたようで、私が気が付いた頃には、どこかのホテルのベッドの上で寝ていた。

横には、ベッドが一ついていて、その向うに出口いづぐちさんが寝ていた。

一体、ここは…?と私は思って、お手洗いから誰かが出てくるのがみえた。

起き上がって私がお手洗いの手前よりで待っていた時、里美が出て来た。里美は、ビックリした表情で 「愛…大丈夫?もう気分は、いいの?」と私を心配してくれていた。

「もう全然平気…それにしても、ここは…どこ?」と私は、知りたい事を言った。里美は、「ここはね、ウェルストニアの郊外地区こうがいちくのリトアっていう市街地しがいちだってタタオが言っていたよ。…ちょっとこっちに来て」と、里美は、出口いづぐちさんを気にして周りをキョロキョロとしながら、部屋を出て、ロビーにまで私の手を引っ張って連れて来られた。里美は、そこでも周りをキョロキョロとさせて私の両手をにぎって言った。

「あのね…」と恐る恐る里美は言った。

「飛行機からの出来事できごとなんだけど…愛は覚えてないよね。気を失っていたから…」と私には、何が言いたいのか、わからなかった。でも、何か緊張感をただよわす顔つきで見ていた。 「ウェルストニアについた時に、普通は、旅行案内人がいるはずだったんだけど…どこにいるのか空港の玄関口で、案内人を探していても、その人らしい人は、見当たらなくて、とにかく、タタオがウェルストニアの周辺地図は、所持しょじしていたらしくて、何だか仕方なくリトアに行けば、観光情報が見つかるって、タタオを信じてみて行ったら、ここのホテルで休憩にする話になった訳なの」と状況を話してくれた。

「タタオとひょろは、どうしているの?」と私は里美に話した。

「違う部屋で寝ていると思うよ」と里美が教えてくれたので、私はタタオとひょろのいるごうしつに急いで行ってノックした。

「はい」と中からひょろが出た。

「おっ花村か…中へ入れよ」と中へ通された。

中に入ると、タタオが起きていて、地図を見ながら、調べていた。

「タタオ…里美から聞いたんだけど、観光案内人が待っていなかったってどういうことなの?」と近づいていき、あせりながら言った。

 「僕に聞いても、どう仕様しようもない事だろ?僕は、迂闊うかつだった…それは間違いはないよ。でも…観光する内容のスケジュールを見て、どこをまわるのかは、わかったよ。」とタタオは言った。迂闊うかつだったというのは、旅行会社のプランコースが格安かくやすプランの二泊三日の旅費などは、通常の有名な旅行会社よりも確かに安価あんかだった。私は、確かにそこは行く前から、気掛きがかりだった。おそらく、観光案内人のいないプランでどこでも気楽きらくに旅行ができますよという事だった。

「市街地リトアでの宿泊は、当たりだ。で、その次は、リトアからご自由散策と書いてある。恐らく次の日…つまり今日となるが、宿泊代は、実費という事だ。そこで、これからは、僕のプランで、周るのは、どうかな?」とタタオは、くやしかったのか、自己プランを言い始めようとした。でも私は「ちょっと待って、里美と出口いづぐちさんも把握はあくしないといけないよ。」とめて言った。

「わかった。それじゃあ、連れて来てくれ。」と何か都合つごうが悪いのか、嫌な顔をして、私にタタオは、命令をした。私は、その嫌みな態度は気にしずに、元の部屋に戻った。里美と出口いづぐちさんを直ぐに呼んで、ひょろとタタオの部屋まで連れてきた。

「良いか?僕のプランに変更して、周ろうと思っているが、皆は、どうする?」とタタオは皆を見て、確認を取ろうとした。皆のうち、里美は、質問をした。「どういう事?プラン変更って何なの?」と理解ができていなかった。

「格安プランだったから自由散策という日程にされちゃっていたって事。それでタタオが改めて、タタオの行きたい観光スポットへ行くというプランを考えていたらしいのよ」と里美に説明をした。

「…わかったわ」と了承りょうしょうた。

タタオは、ぐに「…リトアから集落しゅうらくウェルス村…丁度ちょうど、リトアから北部に位置する小さな村という事だが、一様いちよう、観光スポットになっている集落地しゅうらくちと聞いた事がある。そこで、謎の行事が毎年行われているという。一度、僕の研究の為に、お願いだ。…同行してくれ。」と両手を合わせて、頭をげた。ひょろと私と里美と出口いづぐちさんは、見合わせて、友達のお願いだったからという事で、一致団結した。

「ありがとう!」とタタオは、何度も頭を下げて本気のようだった。これが目的のためだったのかなと私は、うすうす々とかんづいていた。

出口いづぐちさんは、それを聞いてから直ぐに部屋の方へ戻って行った。ひょろは、私の顔をじーっと見て、「何?」と私が聞くとひょろは、「お前…倒れてから俺が背負せおっていってリトアまで運んだけど、お前…重いな」とひょろが言った言葉に痛感つうかんを感じた。私は、直ぐに「おっ重いって、失礼ね!女性を背負えたんだから良いでしょ…失礼な事を言わないで!」と外方そっぽ向いて私は、イライラとした。

「ごめんよ…それにしても…寝顔は…かわいかったな」と言って照れながら下を向いたひょろの言葉に反応して、私は、ひょろを振り向いて、にらみつけた。後から、恥かしくなって、里美の手を引張って、部屋を出た。そこから、ひょろとは、一切、口を聞かなかった。ひょろは、がっかりとして、言い過ぎた事に、反省はんせいしていた顔をするが、私は、許しはしなかった。痛い所をかれたからだった。どうして、そう本人の前でどうどう々と言えるのか信じられなかった。里美は、「まあまあ」と私を慰めようとしたけど、ムスッと頬を膨らませて私はいた。タタオは、「あの時にあのタイミングで言うのは、不味まずかったぞ」とコソコソと言っていたが私には、それが筒抜つつぬけだった。

「全部、聞こえてるわよ、タタオ」と私は、ムッとしたまま、口をあけて言った。

そう私がむくれながら歩いている時には、リトアの街を越えて、タタオが言っていた謎の行事が行われるという集落地ウェルス村に到着をしていた。周りの景色に私は、圧倒された。その景色とは、広大な野原と山岳さんがくに囲まれて地形にポツンと村がさみしそうに建ち並んでいた。木製もくせいでウェルス村と私には、わからない文字もじで書かれていた。

私は、スッカリ、イライラしていた事を忘れ、口を開けて山々の方を見ていた。

「すごいキレイな所ね」と里美は、笑顔でワクワクさせながら私に言った。

「そうね」と私は、微笑ほほえんで、里美を見た。それを見ていたタタオとひょろは、安心した表情になっていた。出口さんは「もうお足が痛いのですけども、どこかにいこう所とかはないのかしら」と膝辺ひざあたりの部分をさすっていた。 「わかった。ちょっとここの村の村長と、話し合って休憩所きゅうけいじょをどこにあるか聞いてくるから皆は、待っていてくれ」と自信有じしんあに、タタオが言って、ウェルス村の方へと走って入って行ってしまいました。

私は、不思議に思って、何でだろうか、この村にとても興味きょうみがあるというのか、気になっていた。私達は、ただ、タタオが戻ってくるのを待っていた。

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