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生命(いのち)の継れ  作者: せいちゃん
5/14

健治の真心

健治は、相変らず、バイトで明け暮れていた。

けれども、私が病院に入院していることは、一切、告げられていなかった。

けれども、健治は、しっかりと知っていた。

毎日、バイトに向かう前に仕事先で最近、私の姿を見かけなくなった事と毎晩、私の帰ってくる事が無くなったことに、健治は心配をしていた。

その事で、仕事先に一度、訊ねて健治は、聞いてみると、私が三ヶ月前から入院をしていた事が発覚した。

健治は、驚いて、その職場から後ずさりしながら、バイト先へ向った。

健治は、どうしてなのかという事が頭にこびり付いて仕方なかった。

私が昼の入院食をし終わった時の頃だった。病棟からどこからか走ってくる音が聞えてきた。

私は、何が起きたのかと病室の外が気になり始めた。

すると、病室に入ってきた人がいた。それは、健治の姿だった。ヘルメットをかぶって、作業服を着て、汗をだらだらとこぼしていた。

「健治!?」と私は、ビックリして、つい言葉が出てしまった。

「母さん……身体…大丈夫なのか?」と私を気にかけてくれていたようだった。

「母さんに言いたいことがあるんだ…」と健治は、改まって病室の椅子に腰を下ろしていった。

「健治…私も言いたいことがあるの」と私も落ち込んだ声でいった。

「母さんから言ってくれ…」と健治は、手で私をさしていった。

「いや…健治からの言葉が先に聞きたい」と私は、沈んだ声でいった。

「そうか……母さん…母さんは、凄い……僕の為に、必死になって、パートを始めたんだよな…過労になるまで…僕は、母さんを責めてしまっていたんだな…ごめんなさい…ごめんなさい、どれだけ…母さんが好きだったのか…僕は…どれだけ、母さんに迷惑をかけてきたか…数え切れないほどだった…母さんとの思い出が強すぎて…母さんとの言葉が強すぎて…僕…母さんにひどい言葉を投げてしまった…本当にごめん」と涙がポツンポツンと止まらない程…健治は、泣いていた。

私の事をそこまで考えてくれていたのかと改めて、実感した。

本当に健治を支えてこれてよかったな…健治を産んでよかったなと…何だか、本当に実感が湧いて出てきた。こっちも健治の涙につられて、病院のベッドが涙で湿ってしまう程…涙が止まらなかった。生まれて初めて聞く、健治のありがたみが実感できた。辛かった育児の頃を振り返ってしまうほど、涙が溢れてしまうほどに嬉しさがとまらなかった。

「ありがとう…ありがとう…健治…私も…健治に言いすぎたことがあったの…だから、本当に謝りたかった…健治から謝ってくれたなんて…私…」と言葉にできなくなってしまった。

「母さん…僕、これからは、母さんが負担にならないように、バイトを始める…今、内緒にしていたけれども、バイトを始めたんだ。自分が疲れない程度の仕事だから、安心してほしい…母さんの為に、尽くしたいから…母さんは、僕の大切な母親だからさ」と健治は、涙を隠しながらも、照れ笑いをしながら、私に話してくれた。

「実はさ…中学生の頃に、好きな子がいたんだ…」と私に中学生の頃の話を初めてしてくれた。

「そうだったの…知らなかったわ」と私は、ビックリして、ただ、健治の話に耳を傾けていた。

「ある日さ…僕がその好きな子に告白をしたんだ…なんていうかさ…あんまり…告白とかした事がないから…なんて言ったらいいのか正直…わからなかった。でもさ、必死にさ…伝えたんだ。好きだって…単刀直入すぎたのはわかっている…けれども、その子が好きだったんだ。」と健治は、照れながら話してくれた。

「それで、どうしたの?」と私は、少し、図々しく聞き出した。

「片想いだった…ごめんなさい…それで、卒業を迎えた…呆気なかった中学の苦い思い出だったけれども、恋心で一心だった。その子は、部活に入っていた奴が好きだったみたいでさ…つい…見返したかった…それで…部活に入ったんだ…運動には自信があったから…サッカー部に無理にでも入ったんだ」と健治は、恥ずかしい顔をしながらも、甘酸っぱい恋の話を私に話してくれた。とても、嬉しくて仕方なかった。話してくれたのは、小学生以来だったからだ。

「それと、これを母さんに…確か…好きだったよね」と健治は、一束の桃色のカーネーションを私に笑顔でプレゼントをしてくれた。

「ありがとう…健治…カーネーションを…ありがとうね」と私は、ハンカチで涙を拭きながら、健治を思いっ切り抱き締めた。四年間分を抱きしめ続けだ。

健治は、少し、小さな声で「痛い」と言っていた。

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