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脳筋だもん  作者: 妖狐♂
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#39 夜襲

 気を失ったバラダーは悪夢を見ている。普段からバラダーは日常的によく悪夢にうなされるのだが、今見ている悪夢は特に異質だった。夢の中でバラダーの目の前に立つ悪魔は漆黒しっこくの闇。有象無象を寄せ集めた形なき形。バラダーは後ずさりしながら闇を打ち払おうと必死に腕を振るうが一向に消えないその闇は一歩、また一歩とバラダーに近づいてくる。


 『なんだコイツは。コイツは危険だ。見ろこの目を。どこまでも真っ黒な闇の目だ。』


 この世のものではない漆黒の闇。バラダーは心底恐怖した。幼少の頃から、ありとあらゆる苦痛と恐怖を経験してきたバラダーだが、一つだけ経験していなかった恐怖が今、目の前にあった。

 それは「死」への恐怖。自分が不死身だと信じ切っているバラダーが意識したことのなかった感情。


 『殺される。不死身のわしが殺さる。間違いない・・コイツは死神だ。』


 バラダーは苦し紛れに右手に渾身の力を込めて闇に向かって振り下ろした。バラダーのこぶしを舐めるようにして受け流しつつ、闇はバラダーのふところへ入る。すると懐へ入ったその闇の中心が金色こんじきに輝き始めた。そして金色の光の中心から今度は血の様に真っ赤な光が強く放たれバラダーの脇腹に突き刺さる。

 バラダーはこれまで味わったことのない骨の髄まで焼け焦げるような激痛を覚え、目を覚ます。


 「がああああっ!!」


 「あっ。髭のおじさん。気が付いた?」


 「なっ!?こっ小僧!?」


 バラダーはだんごの様な姿勢に丸められ、コンパクトに手足と体を縛られ、雄一に担ぎ上げられていた。

 ティア一行は目下バゴクリスの「けもの道」の道案内で沼地を進んでいる。


 「おい!わしのこの格好はなんだ!わしをどうする気だ!?」


 「ごめんなさい髭のおじさん。でも、こうでもしないとおじさんを運べなかったから。」


 ぷつぷつとひたい青筋を立て始めるバラダー。こんな足場の悪い沼地で喧嘩になっては相成らんとティアがすぐに間を取り持つ。


 「拘束するつもりは無かったわ。でも、一刻を争う事態だったのと、あなたを置き去りにはできないから仕方なくこうさせてもったわ。ご自身で歩きたいのなら縛っている紐をお切りしますよ。」 


 「ふん!わしのことなど放っておけば良いものを、また変な情を掛けおって。こんな紐ぐらい自分で切れるわ。」


 バラダーは憎まれ口を叩きながら体の筋肉を膨らませぶちぶちと紐を引き千切る。そうして自ら沼地に足を踏み入れ歩き始める。


 「で?お前ら何故沼地を進んでおるのだ?怖気づいて撤退するのではなかったのか?」


 「はぁ?あんたがスーコープ君をダメにしたから撤退できなくなったんだろうが!」


 バラダーのKY発言にムーンが厳しくののしる。


 「ぐうっ・・うっ。あれは・・。わしもあの時は頭にきていたと言うか・・。我を忘れたと言うか・・つい・・ぐぎぎっ。ちく・・しょう・・。」


 やらかした自分の過失の重大さに、歯を食いしばり青筋を立てつつもムーンの下卑た発言に逆らうことなく首を垂れるバラダー。その後、ティアから事のいきさつを聞き、バゴクリスの道案内で迷いの森の探索を続けていることを聞いたバラダーはあからさまに機嫌が良くなり目に力を取り戻した。

 皆を危険にさらしておいてご機嫌なバラダーの様子が面白くないムーン。


 「なにが不死身の将軍よ。ただの「根性なし」じゃない。」


 小さな声でぽつりと言ったがバラダーに聞こえていた。


 「何だと?犬畜生!まだこの将軍バラダーを侮辱する気か!」


 「あらやだ、聞こえちゃった?ふっ。雄一様に気絶させられた時、不死身だ最強だと豪語するあんたのステータスカードがどうなってたか教えてあげましょうか?」

 「999990000よ。雄一様はあなたに手加減して1万しかダメージを与えなかった。なのにあんたは意識を刈り取られた。黒龍アトラスが何度も耐えた攻撃をあんたは一度も耐えられなかった。その差を「根性」と言わずして何だと言うの?答えてみなさいよ。」


 「うぐっ!?きさまぁ、わしをここまでコケにしよって・・この場でその口を引き裂いてくれようか!!」


 もはや、ムーンとバラダーの関係は最悪の域に達していた。関係改善など求めても仕方がないが、状況が状況だけにもうこれ以上の小競り合いは無用だ。ララが強い口調で二人を叱責する。


 「ムーンちゃん、もうやめて。バラダー将軍もすぐに挑発に乗るのはやめてください。」


 ララの言葉に二人とも不本意ながら言い合いをやめる。


 「それに、バラダー将軍に放った雄一君のあの一撃はアトラスに打ち込んだ「それ」とはきっと・・別物。」


 微かにぽつりと零れたララの独り言。しかしそれは誰の耳にも届くことはなかった。

 重苦しい空気、険悪な雰囲気のまま無言で歩みを進める。いや、バゴクリスと雄一は楽しそうに「けもの道」について話しながら進んでいる。二人を包む空気は実に軽やかだ。


 昼を過ぎ、夕方を過ぎ、日没を迎えた頃、ようやく沼地を抜け出した。

 果たしてこれが正しい道かどうかは知れないが、特に魔物に襲われることもなく全員無事だ。少し開けた場所で遅めの夕食に近い昼食をとることになった。

 誰もが慣れぬ歩き辛い沼地で多くの体力を消耗した。雄一とバラダー以外皆随分焦燥感に包まれている。体力の少ないティアは特に辛そうだ。それでもメンバーのリーダーとしての務めを果たしていく。

 目の下に隈を作ろうと、足が震えようと、表情には一切出さず気丈に皆の健康状態を気遣い食事の準備をしていく。


 「猪肉はこれでおしまい。干し肉の他に非常用の缶詰もあるけど、探索を続けることになったし、思った以上に獲物が姿を現さないから、これからは少し食事制限をしようと思うけど異論はあるかしら。」


 ティアの提案に皆頷く。


 「そうね。それは仕方ないことだわ。」


 「わたくしは数日位食べなくても平気なので雄一様はわたくしの分もしっかり食べてください。」


 ムーンが自分の分を雄一に差し出す。すると雄一が首を横に振り食事をムーンに差し返す。


 「ありがとう。ムーン。でも大丈夫。ぼくにはこれがあるから。」


 雄一はそう言うとリュックから出した立方体の薄紙をびりびり破る。すると茶色いレンガが現れた。


 「じゃーん。ぼくの勉強の成果だよ。ララ姉ちゃんコレ適当に切って分けてよ。」


 「?・・・これなあに雄一君。」


 「えへへー。キャラメルだよ。甘くておいしいよ。食べてみて?」


 ララは雄一からバカでかいキャラメルを受け取ると2~3cm角に小さく切り分けた。巨大なキャラメルだったので、細かく切り分けたその数は50粒を数えた。ララは取り敢えず一粒ずつ皆に配った。

 皆「雄一謹製おにぎり」の一件もあるので警戒しながらキャラメルを受け取りしげしげと見つめている。ただ、何も知らないバラダーだけが雄一謹製キャラメルを躊躇なく口に放り投げた。皆がバラダーに注目する。

 目を閉じていたバラダーが一瞬パッと目を開けたが、すぐに瞑目し憮然とした表情のまま口を動かすバラダー。

 バラダーの感想を待つ間、皆の胸はドキドキしていた。


 「ふん。悪くないな。食後のデザートにすれば良かった・・。差し支えなければ、もう少しくれ。」


 「えっ!?まさかのデザート!?そしておかわりぃ!?」


 皆の予想を大きく裏切るバラダーの評価。果たして食べられる物かどうかと危惧きぐしていたハードルを雄一キャラメルは軽々と飛び越え、バラダーによりスゥイーツとして認められたのだった。

 だが、まだ安心はできない。脳筋バラダーが単純に「バカ舌」と言うオチも十分にあると皆思った。


 バラダーとにこやかな雄一以外の者は次に誰がこのキャラメルを口にするのか目で牽制し始めた。

 ティアとララとムーンの三人は目配せをして軽く頷くと、一斉にバゴクリスを見る。バゴクリスはギョッとし脂汗を額に滲ませ慌てて小刻みに首を振る。


 バゴクリスを捉える6つの目が徐々に怖くなる。ティアの口元は『は・や・く・・た・べ・ろ』と繰り返し動いている。

 ムーンを見れば明らかに不機嫌な表情を浮かべ、眉間の皺の数を意図的に増やしていっている。一本、また一本と。

 ララは瞳孔どうこうを開けた目をバゴクリスにしっかりと合わせたまま決して逸らさず、ゆっくりと、ただ、ゆっくりと頷き続けている。

 殺されるより恐ろしい重圧がバゴクリスに注がれる。苦笑いを返すのが精一杯だったバゴクリスは遂に観念し、口を半開きにしてキャラメルを口に入れた。


 「・・・・・!!」


 バゴクリスの虚ろだった目が輝く。


 「うっまー!!雄一様!雄一様!大変美味しゅうございます。・・・?おおお・・?こっこれは・・。何だか腹の底から力がみなぎるようです。」

 「この効果・・。ポーション(回復薬)などとは比較になりません。まさか料理の方も才能があるとは。このバゴクリス感服しました。」


 「わーい。褒められたー。」

 「ねーっ。美味しいよねーキャラメル。ガロプラさんと一緒に一生懸命作ったんだよ。美味しすぎて途中いっぱい味見しちゃったもん。」


 『なるほどそう言うことか。ガロプラが味付け担当、雄一が整形担当だったんだな。』


 そう思い安心したティアも一粒頬張る。口に入れるとトロリとほどけるキャラメル。甘すぎない、引き締まった上品な甘さが走った。蜂蜜の香りがその後を追いかけてくる。唾液が次々と溢れ出る。

 雄一キャラメルには複数の糖類の他に隠し味に使われていたナッツ類や塩等のミネラルも豊富に含まれていた。

 この二日間殆ど不眠不休で歩き続け、溜まっていた疲労が溶けるようだった。


 「おいしい・・・。なんだか温かい・・ポカポカする。」


 ティアの呟きにララもムーンも頷き返す。


 「ほんと。おいしいね。回復魔法とはまた違う効果があるみたい。」


 「わかったわ!このキャラメルには心と体の芯に届く回復効果があるんだ。さすが雄一様。私たちを助けるための勉強ってこういうことだったのですね。」


 大袈裟なムーンの言葉にティアとララは『それはナイと』と思いつつも、どこかで『本当にそうかもしれない』とも思う。それくらい不思議な回復力があり、心身ともに完全回復と言う抜群の効能を発揮した。


 夕食を終えた頃、日はとっぷりと落ち、辺りは暗闇に包まれた。再び出発しようとバラダーが皆に声を掛ける。


 「さて、腹ごなしも済んだし、休憩も取れた。バゴクリス案内を頼むぞ。」


 バラダーの言葉に顔をしかめるバゴクリス。


 「・・・申し訳ございません。・・・わたくし、夜目が効きません。」


 「むっ!貴様鳥目か?その顔そのままじゃないか。そんなことでは頭の方も鳥頭なんだろうな。3あるけば忘れるってっか?」


 「ねぇ、バゴクリスさん私が光魔法で照らしてもダメかなぁ。」


 バラダーの辛辣な言葉に一瞬悔しそうに表情が歪むバゴクリス。そこへすかさずララがバゴクリスに打開策を提案する。

 そしてララはレイピアを振りかざすし前方を照らし出した。サーチライトの様に強い光のトンネルが森に当たり一筋の道が現れる。

 暫く黙って道を見つめるバゴクリスだったが静かに首を振った。


 「すみません。ララ様。残念ですが、やはり見えません。」

 「雄一様はどうですか?日中、わたくしと共に行動し、随分「けもの道」の見分けが理解できるようになっていたかと思いますが。」


 バゴクリスの問い掛けに暫く雄一も光の道を眺める。


 「う~ん。・・見えるのは見えるんだけど。」

 「ん~。けもの道も見えるのは見えるんだけど・・。んー。けどぉー。」


 「見えるなら問題ないじゃないか!「けどけど」となんなんだ!?はっきり言え小僧。」


 釈然としない雄一の言葉に絡み始めるバラダー。


 「きっと行かない方がいいと思う。」


 「どう言ことだ?分かるように説明しろ。」


 「えっ?分かるように?・・うーん。うーん。・・あっ!分かった!えっとね、行っちゃいけないと思うから行かない方がいい。」


 「何処どこが分かるように変わったんだ!?同じじゃないか!」


 盛大にツッコミを入れるバラダーは更に雄一をいさかう。


 「そうか!小僧。暗い夜道に怖気づいたな?そんな様子じゃ夜トイレも一人で行けないのだろぅ?この臆病者の小便垂れめ!」


  雄一はバラダーの言葉を気にする様子は見せず、暫く「ぼーっ」とした後、バラダーに提案する。


 「んー。じゃあねぇ、ぼくが言う通りに先へ行ってみてくれる?」

 「これができるのは、きっと髭のおじさんだけだと思うし。」


 「むっ!わしにしか出来ぬと申すか。ふむ、分かった。指示を出してみろ。」


 バラダーにしかできない。と言う言葉にバラダーは、もはや自分が「髭のおじさん」と呼ばれたことに突っかかりもせず雄一の指示に従う。早々にバラダーの歩幅を把握した雄一は「右に十五歩」「真っ直ぐ三十歩」とバラダーを誘導する。


 「ふん!何もないではないか。おおーい!大丈夫だ!!お前らもわしについてこーい!!」


 とそう叫んだ瞬間、サーチライトに照らされたバラダーの大きな体躯が突然消える。


 「があぁぁぁぁ・・・」


 あっという間に小さくなるバラダーの叫び声。バラダーは落とし穴に落ちた。


 「ほらぁ、やっぱりぃ。なんか変だと思ったんだ。」


 雄一はうんうんと頷きながら腕を組み、眉を下げて溜息を着いている。


 「こ、これは、罠・・?まさか、こんな罠をモンスターが張ったっていうの?」


 ティアの額から汗が流れる。その呟きにララが答える。


 「どうやら相当高い知能があるようね。コチラが「けもの道」を利用して進んでいることに気付いて罠を仕掛けてきたんだわ。」

 「雄一君は観察力か単なる勘からかは分からないけど、この罠を「違和感」として見抜いていたのね。いずれにしても慎重に行動してよかったわね。」


 「雄一様。これがどうして、あの髭にしかできないことだったんですか?」


 結構危機的な状況下でムーンが雄一にのんびり尋ねる。


 「うん。あのね、体重の重たい人が落ちるような造りに見えたからだよ。みんなが歩いても大丈夫だったと思う。」


「「「あー。なるほど。」」」


 この場の誰もがバラダーを案じている様子はない。微塵もない。

 バラダー専用の落とし穴だったとは知らずに、バラダーが落とし穴から這い上がって穴から頭を出した。


 「おおーい!この落とし穴は危険だ!下は針の山だぞ。気を付けろ!!。」


 「そのまま刺されば良かったのに。それにしてもあの姿・・・哀れで滑稽ね。私、あんなのを正面から相手にしていたのかと思うと恥ずかしくなってきたわ。」


 「うん!ムーンちゃん!いいところに気付いた!」


 モンスターとの知恵比べに全力で負けるバラダーを見てムーンが呆れかえる。

 バラダーが落とし穴から這い出そうとした時だった。


 「髭のおじさーん!!危なーい!!」


 「!!」


 ドガガガガガガガ


 「ぐわぁぁぁぁ・・・」


 炎の弾丸が雨霰のようにバラダーに降り注ぎバラダーは爆炎に包まれ再び穴へと落ちた。

 弾丸を放ったのは森の木々に身を隠していたピンクイービル。

 その集団が姿を現した。今度の数はゆうに50を越え、全員武具防具に身を包んでいる。その内、10体はデカイービルだった。更に森の奥から3mを越える巨大なピンクイービルが現れた。

 この3mを超す巨大イービルこそが成体。いわばチビイービルは幼体。デカイービルは成体になったばかりの若者ひよっこだった。


 「低俗下等なイービル共よ!これより先へは通さん!」


 一際煌ひときわきらびやかな鎧をまとう巨大イービルが叫ぶ。すると一斉に他のピンクイービルたちが雄一たちに火炎砲弾を放ち始めた。


 「シールドウォール!!」


 横殴りの雨の如き大量の火炎砲弾をララは分厚い魔法障壁で見事に防ぎきる。それでもピンクイービルたちはお構いなしに次々と火炎砲弾を口から吐き出す。


 「ララ!このシールドは大丈夫?」


 「防御魔法に徹する分には問題ないけど、これだけ攻撃が激しいと、防御魔法と攻撃魔法の同時発動は無理そうだわ。」


 「じゃあ、遠距離攻撃魔法を使えるのは私だけね。よーし、ファイアーアロー!!」


 ティアが杖をかざすと炎の矢が次々と放たれた。しかし、火炎砲弾に悉く弾かれる。破壊力も物量的にも圧倒されている。


 「仕方がない!私が行く!」


 ムーンがシールドの外へと飛び出す。右へ左へ小刻みに動き、火炎砲弾を躱しつつ前進していく。しかし、当然進むほどに避けるのが厳しくなる。

 遂には躱しきれなくなり火炎砲弾がムーンを捉える。


 「ぐっ!」


 ムーンの表情が歪む。一進一退の膠着こうちゃく状態となった。いや、むしろ標的にされたようにムーンへの集中砲火が始まる。ムーンは可能な限り躱した。躱しきれない分は手で弾いた。弾ききれない分はそのままムーンに着弾する。ムーンは一歩、また一歩と後退を始めた。


 「くっそっ!うっとおしい!これじゃ影分身を使っても捌ききれない!」


 ビュン!


 「ウギャッ」


 ビュン!ビュン!


 「アギャッ」


 「ヘギャ」


 妙な音と共にピンクイービルが叫び声だけ残して吹き飛ばされていく。

 ムーンは結果的に自分が囮となってララが遠距離攻撃魔法を打ったのだと思い一瞬振り返る。しかし相変わらずピンクイービルの猛攻にシールドを張りっぱなしだ。


 『いったい何が!?』


 「ムーンをいじめるなー!!」


 シールドの外に出た雄一が吼える。雄一は地面に転がる石ころを拾ってはピンクイービルに向かって投げている。しかし、この石ころの威力が「投石」とは思えない程の凶悪ぶり。

 音速を越える速度で投げられた石ころはビーム光線のように青白い炎の槍となり、凄まじい破壊力でピンクイービルの体を貫き吹っ飛ばす。

 次々と木の下、森の奥へと吹き飛ばされ、瞬く間に数を減らしていくピンクイービルたち。

 雄一の投げる石ころは火炎砲弾に当たっても進路すら変えず、真っ直ぐピンクイービルを捉える。

 ピンクイービルたちは慌てた様子でターゲットを雄一一人に絞る。火炎砲弾が八方から一斉射撃で雄一を襲う。


 「「「雄一(君)(様)!!」」」


 雄一は石ころを脇に抱え飛び上がり砲弾を躱すと上空から石ころを投げ飛ばし八方に散らばるチビイービルたちに次々に当てていく。その精度、大リーグピッチャーなど足元にも及ばない。

 混乱気味に纏まりの無くなったチビイービルたちの火炎砲弾攻撃が緩む。それを反撃の機と捉えたティアが声を上げる。


 「ムーン!今よ!!ララ援護をよろしく!ファイアーアロー!」


 「うん。ブリザードアロー!」


 「さっきはよくもやってくれたなあ!おりやぁあぁぁ!!」


 ティアとララが遠距離攻撃魔法で援護する中ムーンが突撃し、チビイービルを次々と封殺していく。形勢は一気に逆転した。

 状況が不利になるや否やチビイービルたちは森に広がる闇の奥へと逃げていった。

チビイービル敗走を尻目に巨大イービルが前へ出る。デカイービルたちも一旦後退して巨大イービルの元へ集まり態勢を整える。


 「ムーンちゃん一旦戻ってきて!傷を回復するから。」


 追撃しようとしていたムーンだったがララの言葉に従い、自重して引き返す。雄一だけ一人先行して巨大なイービルたちの前に立っている。

 3mを超す巨大イービルが首を回しながら雄一に近づく。


挿絵(By みてみん)


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