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脳筋だもん  作者: 妖狐♂
33/169

#32 生き銭死に銭

「こんにちは」


「おや、おぼっちゃん。いらっしゃい」


「おいしそうな、におい。ここは何屋さんですか?」


「最高級フルーツを使った、スゥィーツのお店だよ? ケーキにパフェにクレープに、牡丹餅、お汁粉、ゼリーに羊羹。氷水だってあるんだよ?」


「じゃあ、これで買えるだけください」


「はっはっは。お小遣いで買えるような商品はうちにはな……なっ?!」


「はい、百万メタラ。ここで食べて行ってもいい?」


「ひゃ……百万……メタラ?」


◇◇◇◇◆◆◆◆


 どうしよう。雄一くんが一体どこへ行ったのか、まるで見当がつかないわ。

 遠くまでは行ってないと思うけど、広い街だし一軒一軒探していてはキリがない。


 どどどどどどど……。


 ん? あの土埃は一体……。

 コッチに近づいてきてるみたいだけど……。


「ラァ~ラアアアアァァァ!!」


「ムーンちゃん!」


 良かった。丁度いい所でムーンちゃんが来たわ。うふふ、犬型になって鬼の形相ね。


「私をほっぽって、よくも勝手に雄一様を連れ出したな! くたばれララ! アオ~ン」


「スロウ」


 ぶ、う、ん。


「お、の、れ、ラ、ラ……動、き、を、封、じ、た、な?」


「ごめんね、ムーンちゃん、聞いて? 私、雄一君とはぐれちゃって……」


「影分身!!」


 びゅん!


「うわっ、あぶなっ」


「ちいいっ!」


 あれ? 私の魔法解けちゃった? いや、これはムーンちゃんの特殊能力ね。

 身体能力を異常に上げて、とんでもないスピードを出してるんだ。


「ガルルッ。リンチにしてやる……」


 ドコドコドコドコドコ!


 凄いわ、ムーンちゃん。速度低下状態なのに、速すぎてまるで四人いるように見える。繰り出される一撃一撃も、とっても重そうで、破壊力ありそう……。


「ぐぬぬぬぬっ……。だっ、はあーっ。ちっきしょー! なんだこのバリアは……ぁ……」


「うふふ。アダマンシールド」


「ア、ダ、マ、ン?」


「最強硬度を誇る防御魔法よ? それより、影分身は限界みたいね」


「あ、お、ん……」


「掛けた魔法は解くわね。それから、抜け駆けしたことを謝るわ。私が悪かったです。深く反省してます。許して、ね? ムーンちゃん」


「きゅ~ん」


 頭を下げて、ちゃんと謝れば、ムーンちゃんはすぐに許してくれた。

 そして、これでようやく、雄一君が見つけられる。

 彼女の嗅覚が、私を彼の元へ連れて行ってくれるだろう。


◇◇◇◇◆◆◆◆


 ムーンちゃんについて行った先のお店から、雄一くんが出てきた。

 手に花束のようなクレープを、三つも持って、ご機嫌な様子だ。なにはともあれ、無事でよかった。


「あ~。ララ姉ちゃんにムーン」


「雄一君てば、どうしてこんなところに」


「ごめんなさい。お店にかっこいいトンボがいたんだよ。それで、追いかけてたら、いつの間にかココにいたの」


 トンボ……。うふふ、これじゃ行動の予想なんて無理ね。


「でもね? お陰でおいしいお菓子のお店、見つけたよ。ほら、このクレープはみんなへのお土産だよ?」


「わおん。なんとお優しい。ますます惚れてしまいましたわ。雄一様」


 どん!


 その時、雄一君が、ぱっつんぱっつんのシャツを着て、筋肉を剥き出すスキンヘッドのお兄さんに突き飛ばされちゃった。


「あっ……」


 ぼとり。


 あ~あ、雄一君の持っていたクレープが地面に落ちちゃった。

 なに? このガラの悪そうな三人は……。


「よ~よ~、ねえちゃんたち。かわいいねぇ~」


「俺たちと少し遊んでかない?」


 ぐしゃり。


 あ、クレープを革ジャンメタリックの鼻ピアスが踏んじゃった。明らかに、わざとだったよね。


「あ、あ……」


 雄一君、潰れたクレープを、必死にかき集めてる。何とか元に戻そうとしてるのね。

 でも、触れば触るほど崩れちゃってるわ。かわいそうに……雄一君……ん? 雄一君?


「ガルル……キサマら、よくも雄一様からのおこころざしを……」


「ちょっと待ってムーンちゃん。雄一君の様子がおかしい」


 ぞわり……ぞわぞわ。


「食べ物を……粗末にするやつは……許さない……」


 なに? これ。雄一君の全身から凄まじいオーラが……。これは魔力じゃない。妖気……、そう、これはまるで、得体のしれない妖気だわ。いずれにしても、このままじゃマズイ。


「ムーンちゃん、GO!」


「OK! ララちゃん」


 バキ! ベキ! ボコ!


 よし! ゴキブリ共の顔面は崩壊した。これで個人的な気分は晴れたわ。あとは私が、雄一君の手の届かない安全地帯へ……吹っ飛ばす。


「やああっ……あれ? さっきのお兄ちゃんたちは?」


「わおん。さっきの不届き者なら、鼻の穴を二倍に増やして……」


「今は、楽しく空中散歩してるわ。うふふ」


 ふう、どうにか雄一君が殺人を犯さずに済んだわね。


◇◇◇◇◆◆◆◆


 元居たお店に戻り、私とムーンちゃんは見た目重視の装備を買い揃えた。

 でも、雄一君は、僅かばかりのジャリ銭しか持っていなかった。


「えっ? スゥイーツに全部使って、三百メタラしか残ってないって?」


「あはは~。うん」


「お見事ですわんわん」


「でも、困ったわね。私たちも、そんなにお金、残ってないし」


 仕方がないので庶民の味方ファッションセンターに、お店を変える。

 私とムーンちゃんとでお金を出し合い、動きやすそうな半袖、短パンと、運動靴を揃えてあげた。

 雄一君自身は、残った三百メタラで、ビー玉を買い求めていた。

 ……彼には少し、金銭教育が必要ね。

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