表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脳筋だもん  作者: 妖狐♂
142/169

#139 馬鹿と鋏は使いよう 神の器2/4

◇チェダック視点◇


 俺にとって現実は、余りにも厳しく残酷だ。

 夢と希望を奪われ、生きる気力を失った。

 だから今日も一日、布団の中で過ごそう……。


「チェダックハカセ・タイヘンデス」


「う~っ。MKS、悪いが今日は休ませてくれ。FRSをオモチャ扱いされ、潰されたショックが余りにもでかいんだ」


「イジケテイル・バアイデハ・アリマセン……ヒサ・オクトリバ・ガ・ハカセノ・サイダンキヲ・バラバラニ・ブンカイ・シマシタ」


「なんだと?! この一晩でかっ」


「イイエ・ゴロウジンノアサハ・ハヤイ」


「は?」


「アサメシマエノ・モノノ・スウフンデ・ブンカイヲ・オエマシタ」


「あの怪物ジジイ、ぶっ殺してやる!」


 伝説織師ヒサ・オクトリバ。俺と同じ、神の手を持つと言われる男。

 そして、俺にとっては因縁のライバル

 あの大型裁断機を、数分で分解しただと? お漏らしジジイが、腐っても鯛と言う訳か。それとも……。


 ジジイを見つけた。ふてえ野郎だ。解体した部品を並べ、その中心に座ってやがる。


「ジジイ~! 往生せえや~っ!」


 ジジイと互いに目が合った。その次の瞬間だった。


 パンパン……パン!


「ぶほぉっ!」


 俺の顔面が、強烈に張られた。往復ビンタ。いや、一回多い。一.五往復ビンタだ。

 ジジイのできる動きじゃねえ……と言うか、なんで俺がぶたれにゃならん。まるで立場が逆だろが。

 ん? じじいの持っている物は……何だ。


「錆びの浮いた部品……? まさか、こいつメンテナンスを……」


 よく見れば、ジジイの周りにある部品は、磨き上げられ新品同様だ。

 もう、擦り減ったシャフトでさえも、ピカピカだ。

 再度組み直されたパーツからは、息吹を感じるほどだ。


「美しい……。み、見事過ぎて、言葉が見つからねえぜ……」


「青二才が……、道具は……、立派な……、家族じゃ……」


「なに? オクトリバ? あんた、正気を取り戻したのか!?」


「……きれ~い、きれ~い……ぎゃはは」


 だめか……。ただ、体に染みついた習慣が、口や体を動かせているのだろう。

 しかし、ボケても生涯現役ってか? 気に入らねえ。まるで三十年後の自分を見ているようだぜ。


「ネジネジ~、ぴかぴか~……ぎゃはは」


「折れたネジをも磨き上げるのか。まるで、不要なモノなど、何一つ無いとでも言いたげだな」


 元々、工房内にある全ての機械、道具類は俺の手によって生み出した。

 道具は、家族……か。それを、こんな扱いしてたんじゃ、二往復ビンタでも足りねえな……。


「このバネ、まだ働ける~、このクランク、まだ元気~、ぎゃはは」


「顔中、油と煤まみれにして、なんちゅう嬉しそうな顔を……」


 ヒサ・オクトリバ先生。正直、あんたの、こんな姿を見るのは、本意じゃなかった。

 でも、改めて認めるぜ。

 あんたは俺の、好敵ライバルだ。


「ちっ、ココに好きなだけいて、好きにやってろクソジジイ! テメーの死に面は、俺がキッチリ拝んでやるからよっ!」


「ぎゃはは~、これも、みんな。あれも、みんな。まだ働ける~。ぎゃはは~」


「ああ~っ、なにやってんだ俺は。嫁も取らずに、こんなジジイを引き入れて。ええい、もういい、飯だ飯だ! うっ、MKS……。何だ、その眼差しは。……目を妖しいピンク色に光らせるなっ。気持ちが悪い」


「ハカセ・ヒサノ・メンドウ・ミルノ?」


「ちがっ! お前も、あのジジイの技術力を見ただろ。俺はあいつを奴隷のようにこき使い、死ぬまで働かせるのさ。ギヒヒ……」


「トシヨリニ・イキガイヲ・アタエルハカセ……ヤサシイ」


「ばかっ。だから勘違いすんじゃねえ。あいつは、ああ見えて超有名な織師だ。利用価値はいくらでもある。……そうさ。きっと骨にだって付加価値が付くぞ。そうなりゃ労せずに大金持ちだ。グヘヘ……」


「ワタシモ・ハカセヲ・サイゴマデ・メンドウ・ミル」


「なに?」


「ハカセノ・ホネニモ・ソレダケノ・カチガ・アルカラ」


「だあーっ! 勝手にしろ! バカども!」


 どーなっとんじゃ、一体。あのクソガキと関わるようになって、バカばっかり集まってきやがる。


 ……まぁ俺も、その一人……だが……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ