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脳筋だもん  作者: 妖狐♂
141/169

#138 挫折 神の器シナリオ1/4

◇チェダック視点◇


「グヒヒ、グヒヒヒヒ……どうだ、MKS」


「サスガデス・ハカセ」


「大量のレアメタルを手に入れて一カ月。ついに俺は、神の器プロトタイプを完成させたぞ」


「ハカセ・メイショウ・ハ?」


「戦車型神器、FRS第一号だ」


「テンサイ・デス」


「わはは! 知ってた、知ってた」


 一カ月ほど前、俺は神に挑み、スライムと金属を融合させたMKPの製造を手掛けた。その時、俺の脳裏に閃光が走った。


 それは、FRPを超える、FRS構想。


 古来より伝わる伝統技術。繊維質×粘土質だ。

 日干しレンガしかり、鉄筋コンクリートしかり。粘土質と繊維質を融合すれば、その強度は飛躍的に向上する。その技術を、スライムと金属繊維で組み合わせると、どうなるか……。

 そう、剛柔の性質を併せ持つ、最強の新素材が生まれる。

 その素材で開発した神型兵器。それがFRS。

 金属繊維Fiber 強化Reinforced スライムSlime 通称、不死身の(F)ロボット(R)さん(S)だ。


 その強度は、炭素繊維系FRP素材の十万倍。核爆発でもなんのその。太陽上でも散歩ができる。このFRSの装甲を破れる現象など、地球上に存在しない。


「ギヒヒ……。驚くのは早いぞMKS。これは試作機。これからが本番なのだ。これからが本物の筋繊維……いや、金繊維による神器計画の始まりなのだ……ギヒヒヒヒ」


「チェダック博士。お客様です」


「なんだとメロフ。客だあ?」


「はい。神谷雄一様たちがお見えになりました」


「神谷雄一? 聞かん名前だな……。俺は忙しい。すぐさま追い返せ」


「えっ? まさか冗談でしょ博士。ここにある大量のレアメタルは、彼のお陰で手に入ったのですよ?」


 ふん。弟子のメロフは相変わらず気が利かん。あんなクソガキ、いちいち相手してられるか。それよりもFRSの試運転の準備をしよう。


「あはは~、こんにちは~」


 ちっ、メロフの野郎入れてやがるじゃないか。うげげ、苦手な美少女もいやがる。それに、乞食を咥えたドラゴンか……。ええい、今は無視だ、無視。


「あはは~。カッコイイ戦車だねぇ~」


 ケッ、早速FRSに目を付けやがったか。相変わらず良い勘してるぜ、このクソガキ。

 しかし、完全無欠の装甲で覆われたFRS。悪戯はもちろん、殴ろうが蹴ろうが、傷一つ付けられやしねえぜ。


「でもぉ~チェダックちゃんってば。まだこんなオモチャ作って、遊んでたのねぇ」


「なにっ!?」


 しまった。シカトをキメ込むつもりだったのに、つい反応してしまった。

 気が短いのは、俺の唯一の欠点だ。

 しかし、今の言葉、そのまま流す訳にはいかねえ。


「おいガキ。試作機とは言え、この神の器をオモチャ、と言ったか?」


「神の器? このオモチャが? あはは~、まっさかあ」


 くっそぉ~っ、このガキ。最後のチャンスをやったのに、俺の傑作を二度も玩具と言いやがった。


「くっくっく、口で言っても分からんか。よおし、いいだろう。今から、試運転をする。オモチャかどうか相手をしてから言ってみろよ」


「試運転? そんなの時間の無駄だよ」


「なに? 時間の無駄……?」


 スン……。


「!!?」


 風斬り音だけが耳に届いた。その、次の瞬間。最高傑作が目の前で二つに割れた。

 クソガキの振るった手には……ぺんぺん草……?

 まさかこんな雑草で、最強兵器FRSが斬られたと言うのか。ウ、ソ、だ、ろ。


 スパ……、スパ……、スパパ。


 FRSは、そのまま崩れ落ちることも許されず、なおも刻まれ宙を舞う。

 キラキラ光る金麟は、まるで桃源郷の花吹雪。そうだ、これは夢に違いない。

 だって俺の叶えた夢が、こうも簡単に砕かれるなど、ありえないのだから……。


「NO―――! ノウッ! ノウッ! もう、やめてくれぇ~っ」


 いや、違う。これは、現実。完璧と夢見ていたFRS構想こそ、夢幻だったのだ。畜生、涙が止まらねえ。

 この夢喰いバクめ……。


「うううっ……」


「やっぱり。一人じゃ無理だったんだね」


「うっせー、ちきしょう。俺ぁ、こんなイジメに負けないぞ。いつか強くなって、お前をイジメ返してやるんだ」


「あはは~、その調子だよ。チェダックちゃん。またおにぎり作ってあげるから。もう泣かないで、ね?」


「いるかっ、そんなもん。もう、お前なんかとは、二度と仲良くしてやんねえからな」


「あはは~、チェダックちゃん、友達だもん。明日には、仲直り。だよ? それじゃあ、ぼくもう帰るよ。またね」


「帰~えれ! 帰~えれ! それと、壊したオモチャ代は、お前の母ちゃんに言いつけて、弁償してもらうかんな」


「チェダック博士、いい加減にしてください。恩人に向かってそんな言葉……。逆にバチが当たりますよ? ねえ、皆さん? ……あれ?」


 ん? なんだ? 本当にもう行っちまいやがった。一体何しに来やがった。

 俺の傑作を貶し、破壊しに来ただけじゃねえか。悪魔め! 疫病神め! 二度とココへは来るな!


「おろろ~ん。うちへ、帰りちゃ~」


「げげっ?? なんだ、このジジイは」


 あのクソガキ、やるだけやった上に、乞食を一匹置いて帰りやがった。

 冗談じゃねえ。うちは老人ホームじゃねえぞ。……ん? このジジイ、どこかで見覚えが……。

 うわわわ、ジジイが勝手に機械をいじくりだした。


「危ねえジジイ! それは裁断機だ。死にてえのか!」


 シューッ……ガシャン!! プッシューッ……。


「ヒィィッ」


 間一髪ジジイを裁断機から引き剥がす。


「ヒィッ、ヒィッ」


「ふうっ、大丈夫か? ジジイ。危うくギロチンで、真っ二つになるところだったぜ?」


「おろろろ、ろ~ん」


 かたかたかた……。


 ジジイが震えている。そうか、裁断機が余程怖かったみてえだな。これに懲りてくれりゃあいいが……。


 ぶるぶる、もわ~っ。


「ぐおおっ! こんな所で、用を足すなっジジイ!」


「母ちゃ~ん。ちっちでた~」


「クソガキ雄一ぃっ! 今すぐ、ココへ戻ってこ~いっ!」


 俺は雄一から、夢と希望を奪われ、介護問題を押し付けられていた。

 

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