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脳筋だもん  作者: 妖狐♂
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#12 魔女VS騎士

「エクストラ・エクスプロージュン! ハイメガ・ライトニングアロー! ヘル・ダークネスレイ・マークⅡ! スーパーキングトリプルショック!インフィニティ・スリートイラプション!!」


 魔女が様々な魔法を次から次へと繰り出す。しかし、騎士の防御は鉄壁である。防ぐ・避ける・薙ぎ払う。如何なる属性の魔法も霧散させていく。


「だーっちくしょー! なんでどの魔法も通用しないんだ! エンドレス・メガパワーフレイム!!」


「いやいや、なかなかどうして。大した魔法使いだと思うよ。」


 魔女の放つ火炎の塊を、軽く剣で切り裂き答える騎士。


「きぃぃぃっ、皮肉? また皮肉ったの? ほんっとムカつく。ナニが「大した魔法使い」よ。わたしの大魔法を、簡単そうにあしらっておきながら!」


「ふふふ。いや、本心だってば。魔法のネーミングに至っては、恐らく世界最強。天下無双なり。」


「きいいぃぃっ!!」


 ヒステリーを起こし、地団太を踏み出す魔女。その様子に、騎士が少し防御姿勢を崩して、小さくため息を漏らす。


「ふうっ。大した魔法使いだと思っているのは本当だよ。これほど瞬時に、連続で、多彩な種類の魔法を出せる魔法使いはそうはいない。と言うか、全属性使えるよね? それは凄い素質。選ばれた一握りの逸材……。」


 騎士の、具体的理由を付けた誉め言葉。

 魔女の表情はほころび、不気味な顔は、不気味な笑顔へと変わった。


「ふん。そ、そう? なあんだ。あなたもちゃんと見るべきところは見てたのね。」

「いいわ、今までの非礼は許したげる。まぁ、あなたも、天才である私の連続魔法に手も足も出なかったようだけど、その高い防御能力は評価するわ。」


 高飛車な態度に戻った魔女を見て、肩を落とし大きく溜息をつく騎士。


「はぁ。お前、この迷宮で出会った相手は、単に弱点属性を突くことで倒してきただろう。」


「ギクリ!!」


「はあっ、図星か。そんな根性だから成長しないんだ。どんな宝石の原石も、磨かなければ光り輝くことはない。成長無き才能は人を堕落させると知れ、愚か者。」


 褒められたかと思うと、突然説教される魔女。


「なによ、なによ! なんなのよ! だいたい敵であるあんたに、そんなこと言われる筋合い無いわよ!」


 魔女が再び杖を騎士に向ける。騎士もまた剣を構える。


「そう……。言葉を掛ける相手を間違えていたか。ならばもう、十分だ。終わりにしよう。」


「偉そうに。それは、コッチのセリフだよ!」


「ただ最後に、一つだけお前に教えておいてやる。何故お前の魔法が私に通用しないか。」


「うっ、なんでだ?」


「お前の帽子が最っ高にダサいからだ。」


「死ねやぁ! くそ騎士ぃ! サエウム・ナイトメア!!」


 魔法使いから、全属性まぜこちゃのエネルギー砲が放たれた。


 ギュルギュルと唸るエネルギー弾が迫りくる中、騎士は、避けもせず真っ直ぐ突っ込む。


「きゃははっ。爆発と同時に、焼け死ね。氷と風の刃で切り裂かれろ。ついでに呪われて死んで行け!」


「それと……。」


 全属性魔法を剣に纏わせ「サエウム・ナイトメア」を十字に斬る。


シュパ! シュパ!


 騎士は、いとも簡単に魔法を霧散させると一閃。魔女を一刀に切り伏せた。


「がっ、はっ。ばかな……何故だ? 何故こうも簡単に、私の魔法が掻き消される。」


 どたり。


 膝から崩れ、仰向けに倒れる魔女。

 騎士が剣を納める音が、キンと小さく響く。


「それと、私も全属性の魔法が使えるからだ。」


「……不公平だわ。こんなの。」


 力量差があり過ぎた。剣術は元より、魔術だけ見ても剣士は魔女を凌駕していた。


「お前の敵は、お前の内にある。そして、それは私も同じこと……。」


「私が100の生贄を、正々堂々と倒してれば、あんたに勝てたとでも?」


「いや、それは、此処へ連れて来られる、前からのこと。」


「きゃはは。それは、無理よ。此処へ来る前の私は、何の才能もない、ただの女。いいえ、皆から避けられ、嫌われる、孤独な女……。」


 魔女は、痛みを感じないことに気付く。震える手で切り裂かれた傷に触れてみる。やはり致命傷を受けている。魔女は痛みを感じない理由に気付いていた。


「氷の魔法を剣に、纏わせて斬ったのね……。」


「せめて痛みに苦しむことなく逝け。」


「完敗だわ。あなたは、私の魔法ばかりか、あなたへの、憎しみも、恨みまで、全て、全て、霧散させるのね……。」


 そう呟くと、口元に笑みを残したまま、魔女は静かに目を閉じた。魔女の体を中心に、現れた魔法陣が眩く光り、魔女を消し去った。


「元は孤独な女……か。私の過去と比べるのは、少し滑稽かな。」


 騎士は、魔女の冥福を祈りつつ、踵を返した。

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