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脳筋だもん  作者: 妖狐♂
102/169

黎明編 #101 意思

 ケッツァコアトルは睡眠中必ずおねしょをする。・・だけにとどまらず脱糞までしてしまう。

 この墓場まで持っていきたい恥ずかしい秘密をムウに暴露されたケッツァコアトルは下顎をしゃくれさせられるだけしゃくれさせ喚き始めた。


 「ウソじゃ!ウソじゃ!ウソじゃ!ウソじゃあー!そんなのウソじゃー!!みなの者騙されるな!こやつはムウではない!偉大なるムウを語る不届き者のニセモノじゃー!!」


 「はぁ、なるほど・・。ララちゃんが秘密にしてあげた訳だ・・。」


 「ちがう!ちがう!あ!そう!もう治った!もう治ったのじゃ!それはもう昔のことなのじゃ!」


 「いやいや、見苦しいだけだからヘタに誤魔化すなケッツァコアトル。」


 嘘か誠かなどどうでもいい。脱糞癖の時点で手遅れなのに、必死で体裁を繕おうとするケッツァコアトル。


 「ママ・・う〇こたれ・・?」


 「なにぃ!?こら!モモカ!お前もう脱糞の意味を理解しているのか!?」


 「ツッコミ所を間違ってるよ・・お母さん?」


 ティアが「ぺん」とケッツァコアトルの肩を叩く。


 ララが緊急事態にも関わらず完全にムウのペースに乗せらる面々。

 

 『もっと言うなら・・。』


 「言うな!もっと言うなムウ!その口引き裂くぞ!妾とララに「根拠のない誹謗中傷」を繰り返す偽り者め!」


 『ケッツァコアトル。本来食事など不要無用のお前には、そもそも消化器官がない。食べた物は当然そのままストンと落ちる。詰まるところ、ぶどうを食べればグレープジュースが、りんごを食べればアップルジュースが尿意をほとんど感じずに排出されるのだ。』


 「じゃあ、一度に色んな果物を食べたらミックスジュースが出てくるってこと?」


 『うむ、いい反応だなティア。その通りだ。ケッツァコアトルが食べた物は、何も足されず、何も引かれず「素材そのまま」が液体と固体に分かれて出てくるのだ。香り豊かに・・。』


 「なんて無駄な神秘性・・。」


 「うああああ、もうやめてくれ!妾の生理現象をまるでドリンクメーカーのように・・・。これ以上根拠を示して辱めんでくれー!」


 悶絶するケッツァコアトル。体をくねらせ、モモカで顔を隠すようにして蹲ってしまった。


 『あはは。どうだ見てみろ!ティア、ララ、ムーン。ケッツァコアトルのこの無様な姿を。人は真実を語らない。これこそが真実だ。・・おっと、ララにはもう聞こえていなかったか。くくく・・。」


 「ムウ・・あんた。」


 ティアの眉間に幾本ものしわが立つ。


 「あんたは何の為に私たちに過去を見せたのか・・。」


 『ん?なんだ怒っているのか?ティア。おお、こわ~。』


 「・・「厄災」の正体を教えるため?・・それとも気に入らないララを陥れるため?・・」


 『くくく・・。それは自分で決めるんだろぉ?ティア・ディスケイニ枢機卿。」


 「ムウ・・。お前は過去も未来も全てを知り尽くし、世界をコントロールする者・・。」


 『??』


 パキーン・・。


 ティアから何か弾ける音が響いた。


 「凄惨な過去の連続を見て、正直どう処理していいか分からないことだらけだ。でも、はっきりと分かったことがある!」


 『ほう・・。お聞かせ願えるかね?』


 「大切な仲間を平気で傷つけるムウ!・・お前は・・敵だー!!」


 『ほう・・他の誰でもない世界が神と認めたこの私を。そして世界を救わんと人類を導き続けるこの私を言うに事欠いて敵とな・・。くくく・・・。そっちから真実を語れと言っておいて真実を語ればこの仕打ち・・。身に詰まる思いだよ。』


 「黙れ!ムウ!ララはお前の心の真実を問うたのだ!ララほどお前自信のことを真剣に考えている者などいないことに何故気が付かぬ!」』


 『・・・。』


 ティアの目にさらに力が滾る。


 「親身になってお前のことを思って問いかけたそのララの心をお前は心無い真実やいばで斬ったのだ!」


 ティアの体からは虹色に輝くオーラが滲み出ている。


 「もう一度言う!何度だって言う!ムウ!お前が真実の心で向き合わない限りお前は私の敵だ!」


 『・・・。』


 ティアのこれまでにない強い語気に一寸の沈黙が走る。


 『くくく・・さて・・そろそろ時間か・・。』


 「なに!ちょっと待て!ムウ!人の暗部を晒しておいて何が時間じゃ!訂正して詫びろ!さもなくば妾もお主を敵とみなすぞ!ムウウウッ!」


 ピカ――。


 ケッツァコアトルのやっすい敵認定を無視するように、モザイクの世界が真っ白い光に包まれる。


 「こっ、この光は、来た時と同じもの・・。戻るのか!?元の世界へ・・。」


 ティアは強い光に包まれて消えた。


 「ララちゃん頑張って!今、帰るからね?ね?ララちゃん!」


 ムーンは力なく横たわるララをひしと抱きかかえたまま、光に包まれ消えた。


 「ムウ!覚えてろよー!・・このっ・・このっ・・ひょうろくだまー!!」


 ケッツァコアトルはモモカを抱きながらムウに捨て台詞を吐いて光に包まれ消えた。


 『・・くくく、安心しろ。ララは大丈夫だよ?なんせ彼女には雄一君の加護が付いているからねぇ・・。』


 ムウのそんな言葉が時の光に包まれる皆の耳に、微かに聞こえた気がした。そしてその微かな声を更に小さくしてムウは言葉をつづけた。


 『ララ・・。こんな私なんかに心を砕いてくれてありがとう。嬉しかったよ・・。震える程に・・。』


 「ちくしょー!ちっくしょー!のろってやるー!のろってやるぞムウー!」


 だがしかし、その微かな声はケッツァコアトルの必死過ぎる恨み節によって完全に掻き消された。


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