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復讐の決心

フィリアに対し、魔眼を使用し、契約を施したレイムは……。


次の話で第一章を終わりとします。

その後、第二章開始までは、少し準備期間をいただくと思います。

どのくらいかかるかは未定です。更新をお待ちになっている方には申し訳ありませんが、ご了承下さい。

「お主、我の体に何をしたんじゃ!」


 朝から、いきなりの大声で僕はフィリアから叩き起こされる。


「ふぁ……フィリアか……?」


 寝ぼけまなこを擦りつつ、僕は彼女へと目を向ける。


「な、お主……! その前に眼鏡をつけぬか!」


 ああ、そうだった。

 これがないと魔眼がダダ漏れになるんだったな。


「それで、どうしたんだよ?」

「どうもこうもない! 何故か力が強くなって卵が割れないんじゃぞ!」


……よく分からないが、料理を作れなくて困ってるみたいだな。


「……そうか、なら僕が作るからフィリアはゆっくりしててくれ」

「え、あ、え? ああ、頼んだのじゃ……って、そうではないのじゃ!」


 見事なノリツッコミだな。


「じゃあなんだって言うんだよ? 御飯が食べたいんじゃないのか?」

「そ、それもあるが、そうではない! お主いつの間に我に強化を施したのじゃ!? これは魔眼の能力じゃろう?!」


 問われて、僕は昨日の出来事を思い出す。


 確か昨日は、魔眼のことを話してて……。

 その後は、言葉攻めに快楽攻めに……ん?


「……あれ? あれは夢じゃないのか?」


 いや、今考えれば、確かにフィリアにイロイロとやらかした覚えはあるのだが、何故あんなことをしたのかは、よく覚えていない。

 もしかしたら昨日見た夢の出来事ではないかと思っていたが、確かに妙にリアルだったしな……。


「ゆ、ゆ、ゆ、ゆゆゆゆ、夢じゃと! 我にあんなことをしておいて……!」

「あー……。何で僕はあんなことをやったんだろうな?」

「我に聞くでない!」


 そりゃごもっともな話だ。


「じゃあ、僕はあのスキルを使ったのか……」

「そうじゃの! 我は酷い目にあったのじゃぞ!」


 ぷっくりと頬を膨らませているフィリアの頬をつつく。


「ぐにゅ……や、やめんか!」


 やはり本気で怒っているわけではなさそうだ。


「昨日は悪かったな」

「え……?」


「何か上手く言えないんだけどな……昨日確かに僕の意思でフィリアに少し酷いことをしたけど、それだけじゃないっていうか……。自分の奥底に眠る感情が湧き起こったというか……」


 非常に言い訳がましく抽象的なことを言っている自覚はあるが、実際そうなのだから仕方がない。


 しかし、フィリアは以外に真面目に受け取ってくれたようで、腕を組んで何かを考え込んでいるようだ。


「……魔眼のスキルに引っ張られたのかもしれんな……」

「スキルに引っ張られる?」

「ああ、強力すぎるスキルは、精神の方に干渉し、その力を存分にふるおうとする傾向があると聞いたことがある」


 何か怖いんだが……。


 精神なんかに干渉されたら、それは最早僕とは言えないような気がする。


「そういえば、お主の両親が言っておったな……ライン活性化(アクティベート)は退廃の王たるスキルじゃと……」

「退廃の王……」


「もしかしたら国を滅ぼした王も、お主のように魔眼に引っ張られていたのかもしれんの」

「スキルを使うんじゃなくて、スキルに使われるなんて御免だな……」


「まあ、そういうスキルは感情のコントロールができていれば、ある程度抑えられるらしいからの。……いや、もしかしたら、お主の心が乱れたから抑え込めなくなったと考えるべきか……?」

「……なるほどな」


 眼鏡をクイッと上げて、定位置に戻す。


 あいつらのことで僕の心が乱れたのが原因か……。


 今思えば父親の僕に対するあの教訓……常に冷静であれとか、女性には優しくしろっていうのは、もしかしたらこの魔眼の力を少しでも抑える為だったのかもしれないな。


 いや、確証はないが、ほぼ間違いないと思う。


 僕だって昔からずっと、愛を盲目的に信じているような人間だったわけではない。

 小さな頃は親によく叱られていた覚えもあり、それこそ魔眼に引っ張られていたのかもしれない。


 だが、あの両親の教えを守り続けることによって、僕は僕になったんだろうな……。


ーーいや、感傷的になるな、僕はもう止まれない。


 あの頃の僕にはもう戻るつもりはないし、戻りたくもない。

 復讐の方法も考えなければならないし、やることはたくさんある。

 だけど今は……。


「まあ、とりあえず、御飯にするか?」

「……そうじゃな、我、朝食は目玉焼きとパンと牛乳と決めておるのじゃが……」

「そうか、それじゃあ御飯と焼き魚とお茶にしよう」

「何故我の意見を完全に無視するのじゃ! 魚も買っておらんわ!」


 おっと、魔眼に引っ張られたようだな……決して僕が、フィリアを苛めて楽しんでいるわけではないはずだ。


 だって――


「愛してるからな? フィリア」

「な、な、何を言っておるんじゃ……そ、そんなことで誤魔化されんのじゃからなー」


 フィリアは怒ったふりをしているが、声は弾んでいるし、表情もニヤケっぱなしで、体全体で嬉しさを示している。

 僕の方が誤魔化されないと言ってやりたいくらいだ。


「まあいいじゃないか、僕の慣習に合わせてくれたって。これから先、ずっと共にいるなら、今の内に慣れておくのも良いだろう?」

「……!? ま、まあ、そういうことなら……我慢してやるのじゃ!」


 すっかり機嫌を取り直し、鼻歌を歌いながら、スキップで廊下を行くフィリアの後を僕は追いかけた。






「それで、フィリアはどんなスキルに目覚めたか分かるか?」


 朝食を摂りながら、僕はフィリアに気になっていたことを聞いてみる。

 昨日契約をしたのだから、問題なくスキルは発現しているはずだが……。


「身体強化だけでなく、スキルももう発現させたのか?」

「ああ、もうフィリアにもスキルを感知できるはずだ」


 まあ、身体強化は、スキル発現の過程による副産物だがな。


 スキルを発現させるには、自身の魔眼の能力をある程度体に染み込ませ、その後に、V・Lに沿って直接自身の魔力を注がなければならない。

 身体能力強化は、僕の魔眼の能力が体によく馴染んでいる証拠だ。


 フィリアは眼鏡を整備していたときに、何度か魔眼を浴びていたおかげか、すぐに魔眼が体に馴染んだが、初めての者に同じことをすれば、まだ時間がかかるだろう。


 まあやるつもりはないが。


「何とも手の早いことじゃの」


 フィリアは昨日のことを思い出したのか、少し拗ねたように言った。


「ああ、とっても良かっただろ?」


 僕がニコリと笑顔でいうと、流石のフィリアも少し機嫌が悪くなったようだ。


「ふん! あちらの手も早ければ――」


 そこまで言ったところで、フィリアはハッとして口を抑える。


「……と、すまん、失言じゃったな……」


 勢いのままに口走ってしまったようで、彼女がバツの悪そうな顔を向けてくる。

 あまり気を使われ過ぎても辛いんだよな……。

 ここは多少フォローを入れておこう。


「まあ、でも結果的によかったじゃないか。V・Lがなくなれば、ライン活性化は使えないからな」


 僕の能力はV・Lを活性化させることで、スキルの発現と身体能力を強化ができること。

 つまりは真なる乙女(しょじょ)の者にしか能力は使えない。


「……ま、まあそうじゃが……」

「だから気にするなよ? 僕にはフィリアが必要なんだ」


 彼女は目を見開き、そしてすぐに嬉しそうに顔をほころばせる。


 ああ必要だ。

 必要に決まってるとも。



 彼女の存在は、今の俺にとっての全てなのだから。



 心も体も能力もスキルも……フィリアという存在を構成する全てが僕のモノであり、必要不可欠なのだ。


「心苦しく、そして、口惜しく思うが、僕の復讐の為にもフィリアの力が必要なんだ」


 彼女は少しだけ悲しそうな顔で小さくうつむいた。

 魔眼のことを聞いてからずっと考えていたが、やはりそれしかない。

 僕は戦う力を持っていない。

 だから、僕の力だけでは、復讐は絶対に果たせないだろう。


 あいつらに次会ったときは、必ず戦いになる。

 イカレ女(ジャンネ)は言うまでもないが、クソ女(ラーナ)の方も何か弊害があれば、躊躇せずに殺そうとしてくるだろう。

 だからこそ、僕の代わりに戦い、僕を守ってくれる存在が、間違いなく必要なのだ。


「だが、勘違いしないでくれ。僕は例え、ライン活性化が使えなかったとしても、お前に力がなかったとしても、絶対にフィリアが必要なんだ。復讐に付き合うのが嫌なら――」


 僕は机に置かれていたフィリアの手を掴み、強く握る。


「一緒にいるだけでいい……だめか?」


 フィリアはその温もりと僕の言葉にピクリと反応して、持っていたフォークをカランと落とした。

 そして、彼女は顔を上げ、まなじりに涙をためながら、僕を見上げる。


「だ、駄目なわけないじゃろ……ま、全く……我はてっきり……」

「……? てっきり、なんだ?」


 フィリアが顔を赤らめ、もじもじとしながら、遠慮がちに僕の質問に答える。


「復讐の為に……我に手を出さないつもりなのかと……」

「バカなことを言うな……そんなことは絶ッ対にあり得ない……!」



 ヤレるならとっくにヤッてるんだよ!



 ここはバカな勘違いをしたフィリアにお仕置きしてやるか……!


「そうか、そうか……フィリアはそんなに僕とヤリたかったのか……」

「ふぇ……! べ、別にそういうわけじゃ……」

「じゃあしたくないのか……僕はいつも思っているのに……」


 僕は残念そうに一つ溜息を吐く。


「わ、我だってヤリ……って! 何を言わせる気じゃ!」


 ふむ、気づいてしまったか……。


「全く……! お主のような鬼畜は、我がそばで見ておかんとダメじゃな! ……仕方ないから復讐もついでに手伝ってやるのじゃ!」


 小さく「元々離れる気はないしの……」と言ったのを僕は聞き逃さなかった。


「フフ……ありがとな、フィリア」


 全く、可愛い奴だよ、ホントにな……。

続きが気になる方は、応援よろしくお願いします。

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