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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

正答の来証

作者: 苦無

俺は19歳男無職。

高校卒業後に晴れて無職となった自分で言うのもなんだが残念な人だ。

別に好きで無職となったわけではない。

16歳から今までは作家として働いていたのだ。

ホラー・ミステリ作家として。

文章を書くというのは小学校から好きで、暇なときはよく妄想していた物語を書き連ねていた。

もちろん体を動かして遊ぶというのも好きであったのだが残念ながら人間関係がそれを許してくれなかった。


「あそこの子は片親なんだって…」

「父親が愛人作って逃げただとか…」

「あの子には近づいちゃだめよ…」


「カタオヤと話す気なんかねぇよ!」

「やめてっ近づかないで」

「ようこちゃん困ってるじゃないやめなさいよ!」


事実は拡大解釈され自分までも親の性質にみられることは多々あるものだ。

自分はそれほど頭がいいというわけではなかったので小中高と地元であり、友人も彼女もできず、教師からも奇異な目でみられる苦痛な日々であった。

ようやくその学校から離れ、作家としての自分で生きていこうとしたときである。


政府は思想・表現の自由を規制することを決めたのであった。


内容は至ってシンプル。

暴力的、残虐的な表現、犯罪行為に該当するような表現が描かれた創作物を禁止したのである。

まぁ法に触れる過激な性的表現も禁止されたようだがこれは自分には関係ない。

理由だって?今から説明してやんよ、俺は納得いかねえが。あいつらは俺たちとは思考回路が違うらしいからな。

実のところこの規制の前にも該当する犯罪行為はやや右肩上がりで増えてはいたのである。

ニュースでは暴力的な漫画やアニメのせいだとかゲーム脳のせいだとか報道されてはいた。

たしかに少年誌やゲームでは暴力表現が多い、というか勝負事はつきものなので多くの人の目に触れることは多いだろう。しかし本当なのだろうか?政府はこれを真実だと考えたらしい。

規制するとより犯罪がより増えるという一般市民の抗議と署名はどうやら届かなかった。

規制後は一般市民の予想通りたちまり急角度の右肩上がりとなった。

地元でも鍵を掛けずに家を出られたあの頃とは打って変わって治安が悪くなった。

まさかそんなたまたまアニメやゲームをしていたっていう犯罪者共のせいで俺にまでこんな迷惑この上ないことが起こるとは想像もしていなかった。

何しろ自分の唯一の夢、希望、仕事をできなくなってしまったのだ。

既に出版してある創作物は規制対象かどうか検討され、対象になってしまった場合は改変、できなければ絶版となる。

俺が今まで3年間で出版した5冊分はどれも改変不可能なほどな内容なのでこれ以降の収入はないだろう。

今ニート生活ができているのもこの収入があったおかげだがもうこれ以降は減っていくばかりだ。


「なんとかしないとなぁ…といっても文章書く以外の仕事なんてしたくねー…」

つぶやきながら俺はゲームをしている。パズルゲームだ。さすがにこういうものは規制されなかった。

ミステリを書くのに謎解きはつきものなのでよくやってるのだ。他にも持ってはいたのだが規制の対象になりそうなものは泣く泣く廃棄処分だ。捕まりたくはないからな。

とはいってもメインは殺人事件なので直接的なパズルなんてないのだが…


「事件の起きないミステリって書けんのかなぁ…」

そんなことを考えていたとき玄関のインターホンが鳴った。


「こんにちはー」

アポなし訪問は無視する。どうせ宗教勧誘かセールスだろう。

「どっちでもないですよー」

「うげっ!?」

いつの間にかそいつは俺の部屋に入ってきていた。

「こーんにちはー」

「おっおまっどうやって入ってきたんだよ!」

「まぁどうでもいいじゃないですかぁーとりあえず話をできるように落ち着いてくれませんか?」

「かっ金か!?命か!?どどどっどっちもないぞ!!!!!」

「命はあるでしょ…ww」

「俺はニートだからな…命なんて無いようなものさ…」

「そう!そのニート対策に関してお話しに参ったのです!」

「……すーはー…とりあえず強盗じゃないんだな?」

「もちろん!…というかそもそもそんな風に見えますかね?確かに変なカッコウかもしれませんがww」

そいつはさわやかな笑顔を振りまいている。


「ボクは政府直属のチョーサ機関ってやつです!」

「チョーサ?政府直属ねぇ…」

「端的にいうと、今回の新たな規制によって多くの失業者が出てしまいました!それと同時に犯罪者も増えてしまったわけですがその対策のためにボクは派遣されてきたというわけです!」

「まったく迷惑な話だ。あと語尾に!つけるのやめれ」

「ほら、説明口調になると語尾が上がっちゃうんですよ~てへ」

「で、その対策ってのはなんだ?俺は作家としてしか仕事しないつもりだぞ」

「ま~ま~そんなこと言わずに。ほらっこれ見てください」

そいつは人型の何かを取り出した。

「じゃ☆じゃ~ん☆かっくい~っでしょ~」

「ロボットか?」

「はんぶ~ん正解です!こいつはパワードスーツってやつなのです!」

「これを着ろと?」

「YES」

「NO THANK YOUだ」

「なんでですかー。強度はダイヤ並み、力は像並み、速さは時速20㎞、跳躍力は2m!全身武装で弱点は背部の着脱口くらいなものなんですよっ!魔力は50倍になります!」

「魔力なんてもともとねーから、あとなんで速さと跳躍力だけなんか微妙なんだよ」

「そんなこといわずに~ほらっ一回だけでいいからさ~」

「そんな大層なもんつけて何しろってんだよ」

「正義の味方ってやつです!犯罪が増えた今!これをつけて善良な一般市民を助けようっていう試みなんですよっ!」

「へぇ~正義の味方…ねぇ…」

別段悪役のほうが好きだとかそういうことはないがハッピーエンドは好きなほうである。

事実自分の書いてきたミステリもすべて謎が解けて犯人は見つかり被害者は報われる、というものだ。

ワンパターンだとか言われてる評価もあったがそれでも最初の書籍は売れたものだ。


「ど~です~着ませんか?着るだけでいいんですよ~?」

「俺以外にもこれを?」

「実はこの性能のものはあなただけなんです!最強ですよ!ほかの方は模造品なのでこれの1/100いや、0倍の性能です!」

「0倍じゃただのごっつい装甲じゃねーか」

「どうです~?オリジナルですよ~?男なら一度はロボットに憧れませんか~?」

「まぁロボットにはハマったことあるがなぁ…」

「でしょ?でしょ?」

「しかし正義の味方ってやつは少し考えざるを得ないな…おいそれと俺が逮捕していいもんでもないだろ」

「い~え、そのスーツを着て犯罪行為を行っている者を見つけた時は殺しちゃってください!」

「…ん?」

「殺しちゃってください!」

「…………。」

「だーかーらー殺しちゃっていいんですよ!何のためにカバ並みの力と全身武装がついてると思うんですか!」

どうやら俺はミステリを書き続けているうちにおかしくなってしまったようだ…。

少し休もう。

「あっちょっとっなんでベッドで寝ようとしてるんですかー」

こんなこと言うやつは妄想の中で十分だ。

「そいじゃー説明も終わったんで帰ります。これ置いてくんで絶対着てくださいねー」

意外とあっさりしていた。持って帰れよ邪魔くさい。


「zZZ…」


夢を見た…。今日のことについて考えていたせいだろうか…。

もし俺が犯罪者を裁けたら…たしかにあのスーツは強いだろう…しかし殺せというのはいささか野蛮すぎではないだろうか…

俺の父親も噂ではああ言われていたが母さんも結局は聞けなかった…もし本当だというならたしかめて償いをさせたい…

実際正義の味方とやらもやっていれば会えるのかもしれないしな…別に殺したいというわけではないが…

それよりまず今日来たあいつの言うことが本当なのだろうか…まぁあれを着れば本当なのか確かめられるか…


「あさか…」

「おっはよーございまーすますますー」

「…。」

「朝食作っときましたよーん」

「…。」

「ちょっとーなんでまた寝るんですかー朝ごはん冷めますよー…覚めてくださいww」

「…。」

「無視しないでくださいよwwボクのたった今思いついたボケをww」

「っはー…」

「あっ朝シャンですか?浴槽に沸かしときましたよww」

「朝から浴槽に入ったらのぼせるわ」

「ちぇっ」


シャワーあびたら一応ネットで調べてみるかな…

「早いねーカラスの行水ってやつ?」

「意外と美味そうだな…変なもん盛ってないだろうな」

「ギクゥ変なもんなんて入ってないですよぉー」

「?なぜカルピスがある。俺はお茶しか飲まないぞお前にやる」

「うっうぐぅっ…そうですかありがたく頂戴します…」

「わざわざ持参するほどカルピス好きなのか?」

「そっそうなんですよぉ~体にピースピースです」

「たしかに健康に気を遣っているような食事ではあるな」

「ふふふ~でしょでしょ何歳にみ・え・る?」

「うん、美味かった感謝するよごちそうさまでした」

「…わぁ~ありがとうございます!それじゃさっそく昨日のあれを着てくださいな」

「それとこれとは別だ、まだ考え中」

「ぐぬぬ。それじゃ食器片しますね~」

「俺が洗う。さすがに申し訳ないからな…コップにカルピス残ってんぞ」

「あっ…これは後で飲みますんで!ええ飲みますよ!」

「ってさっきの俺の分のやつじゃないかとっとと飲めよ」

「あっちょt…」

残されても面倒なので飲ませてしまった。数滴こぼしてしまったがすぐに拭けば問題ないだろう。


「あ…あぁあ…」

「どうした?好物ならいくらでも飲めるだろう。食器は洗っておくから居間でテレビでも見てろ」

「はい…そうしま…す」

最近は弁当ばかりだったから助かったな。これだけ豪華な朝食なんてホテルにいったときくらいだ。

うぅ…手が冷たい。


さてネットで調べてみるか…うーんなんて調べれば出るんだろうか

[パワー度スーツ]

くっ誤変換がうざいがGoogle先生は優秀だな…へぇー最近は介護用に特化してるんだな価格も昔に比べだいぶ下がってる。大量生産できるものなのか?っていかんいかんこれは関係なさそうだな。

[表現 規制 対策]

…こいつらはエロゲのことしか頭にないのか?

[失業者 対策 表現規制]

あてはまりそうなのはないな…。

しかしあいつやけにおとなしいな。今のうちにちょこっとあれを着てみるか。

…やっぱでかいな。身長2.5mくらいの巨人がちょうど着れそうなくらいだ。

って着方わからないじゃないかあいつに聞くのもちょっとあれだがそれとなく聞いてこよう。


「zZZ…ぐおーっ…」

居間のソファで爆睡している…。

仕方ない、無理やり着てみるか。弱点の背中からはいるんだったっけな。よいしょ…。

中はゆったりしてるないいスペースだあとは入り口をふさいで…。ふさいで………。


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