ありえないこととは何か
掲載日:2012/08/21
あるところに一人の少年がいた。
その少年はすべてに秀でていた。
武力。知略。容姿。それらすべてが嫉妬を超え畏怖の念を覚えさせるほどに。
その少年は『救う』ことができた。
その少年は『死ぬ』ことが無かった。
その少年は姿が変わらなかった。
その少年はひっそりと暮らしていた。
その少年は一人で暮らしていた。
ある時、少年は世界を「見て」みた。
混沌とした世界。さっそうと現れる英雄。
そして世界が複数あることに気付いた少年は、それらを「見て」いった。
しかしどれも似たような展開。
少年はため息を漏らした。せっかく新しく『楽しめる』ものがあるのに結果が変わらないものしかないことに。
ならば、と。少年は思い立った。
英雄を叩き潰して流れを変えれば面白くなるんじゃないか、と。
そうと決めれば話は早かった。
未練などなかったが小屋をポケットにしまい、傍目に見れば何も持っていない弱そうな姿の状態で、その少年は適当に『世界』の扉を開けた。
その眼には、嬉々としたそれでいて、この年齢特有の純粋さを宿していた。
少年の名は『キサラズ・エルリック』。のちに『外見と中身が伴わない、可愛げのないガキ』、『気まぐれで国ひとつ消す化け物』、『最果ての不老不死』等と呼ばれる、捻くれた考えで生きる少年である。




