ヴィント。
目が覚めたら青空しか見えなかった。 とても気持ちがいいな。寝ころんだまま、いつまでも何時までも眺めていたくなるような綺麗な空だ。
体を撫でていく風は草の臭いでいっぱいで、あんな事があった僕を癒やしてくれる。
ヨイショと声を漏らし、体を起こして周りを眺める。
小高い丘のこの場所は、まるで春のように草花が咲き、なんて言うのかな、あまりにも綺麗で泣きたくなる。
草花の隙間から疲れた小人がでてきて僕にたずねる。
「おやお久しぶりですねぇ、もうここにはこないのかと思いましたよ。
それにしても“アレ”は残念でしたねぇ私はあなたは悪く無いとは思っているのですが、なにせ村長が頑固者ですからねぇ……」
「いや、“アレ”は僕も悪かったんだ。まさかこんな事になるとも思わなかったしね。
ハハ、言い訳だよね」
「とんでもない。私も同じ意見ですよ。村長が分からず屋なだけですよ、深いところを勘違いして理解してしまった村長が悪いのです。
いや、それにしても私は好きなんですよ、“アレ”もう一度聞かせていただけないでしょうか?」
「まぁ……いいですよ。あ、いや、ごめんなさいね
ヨロコンで」
笑顔の小人は近くにあった小石に座り、軽く目をつぶった。
僕は背をシャンと伸ばして、ゆっくりと息を吸い込んだ。そして北風のように冷たく吐き出しながら、僕は言った。
太陽が空にあって月が斜めに見える。
初めての星は輝くのをやめた。
この絵はだれのものかしってるかい?
いいや、知らない。
風の中の緑の虫は泣きながらさまよい。
足の裏の小さな星は一人にしてくれと叫んでいる。
この音楽が何か知ってるかい?
いいや、知らない。
ガラスの雪に触れれば音もなく崩れさる。
時の針は指先に突き刺さる。
水が冷たくてお湯が暖かいしってるかい?
いいや、知らない。
炎はユラユラと歩き回り紫色のガスをだす。
光の中から顔をだす目は溜め息を流す。
この臭いがわかるかい?
いいや、知らない。
地を這う獣は自分の首を切り落とす。
罪の木から落ちた赤い果実。
この味がわかるかい?
いいや、知らない。
疲れた涙は大地を彷徨い、蒼い荒野は灰の密林。
輝かない中指の前で。
あなたは何を感じるの?
小人は、私は好きですよ。と言い残し消えた。
小人の疲れだけが小石の上に残ってる。
小人の疲れは僕に尋ねたんだ。貴方はだれですか?と。
僕は答える。いいや、知らない。と。
僕は空を眺める。
疲れは風に流される。
いいや、知らない。
何も知らない。
星が消えた理由も、この丘の場所も、大地の理由も、風の行方も、水の中にある炎も、干からびた太陽も、そして、好きなものも、嫌いなものも、探していたものも、僕が誰なのかも、疲れが風に流されたのかも。
何も、いいや、何も知らないのだ。
読んでいただきありがとうございます。
詩とは何か?という疑問から書き始めました。
いまだに詳しくはわかりません。
とにかく、読んでいただきありがとうございました。