畑
狼たちの遠吠えが荒野に響き渡る中、悠真はポケットを探った。
あの白い実――ルナが「サンジーバニー」と呼んだ薬草の実。
群れに与える前に、自分で少し残しておいたものだ。
悠真は実を一口かじった。
苦みが口に広がるが、飲み込むと、体に暖かな力が染み渡る。
最初は変化を感じなかったが、数分後、体の奥から活力が湧き上がってきた。
先ほど能力を連続使用した疲労が、嘘のように軽減している。
「これ……疲労がほとんどない。
能力を使っても、生命力の消耗が少ないみたいだ。
サンジーバニー、すごいな……これで食糧生産が楽になる」
悠真は興奮を抑え、群れの狼たちを見た。
「お前たちも腹減ってるだろ。
よし、食料を作ってやるよ」
悠真は能力を起動した。
「緑の守護者よ、種を賜れ。野菜の種を、たくさん」
掌に複数の種が現れ、地面に次々と埋めていく。
手を当て、念じる。
瞬く間に、広大な畑が広がった。
トマト、キャベツ、ジャガイモ、果物類――地球の豊かな野菜と果実が、鈴なりに実る。
サンジーバニーの効果で、疲労は最小限。
普段なら倒れそうな量の植物を、一気に育て上げた。
狼たちは目を輝かせ、畑に近づいた。
ルナが先頭に立ち、トマトの実を一口かじる。
むしゃむしゃと音を立て、汁を滴らせながら食べる。
他の狼たちも次々と果物や野菜にかぶりつき、美味しそうに頰張る。
尻尾を振り、満足げに唸る声が響く。
荒野で飢えていた一族が、初めての豊かな食事を楽しむ姿。
悠真は笑みを浮かべた。
「美味いか? もっと作ってやるよ」
食事が終わると、ルナが悠真に近づき、月影の実の植物を鼻で指した。
「恩人よ。我が一族をさらに強くせよ。
この実を、皆に」
悠真は頷き、能力で月影の実の植物をさらに育てた。
金色の果実を摘み、狼たちに一つずつ与える。
ルナが最初に食べ、他の狼たちも次々と。
体が光に包まれ、どんどん進化していく。
体がスリムになり、オーラが増し、毛並みが輝く。
爪と牙が鋭くなり、目が知的に光る。
群れ全体が、伝説の月狼の姿に変わっていった。
ルナのオーラが特に強く、一族のリーダーとしてさらに威厳を増す。
「我ら、強くなった……お主のおかげだ」
ルナの声に、群れの狼たちが遠吠えで応じる。
不毛の大地に、緑の畑と進化した狼の群れが広がった。




